The O Antiphons as Medieval Carols O Root of Jesse -

 キリストの系統樹と言われる、エッサイの樹。
 旧約聖書、新約聖書共に言及されており、ダヴィデ王の父親であるエッサイから、最上のキリストにいたる系統樹を表現し、「イエスこそダヴィデの系統から生まれると予言された救い主である」という事を強調する為の画題となっています。イタリアよりも北方地域にてよく見られるテーマです。

 エッサイが根の部分を果たし、そこからダヴィデ、ソロモンをはじめとする旧約聖書の王達が幹や枝におり、最上部には聖母マリアに抱かれた幼子イエスの姿が描かれています。エッサイからキリストの間には約43世代いるのですが、流石にそこまでは加えられないので12人の王であったり、ダヴィデ&ソロモンのみであったりします。横側に預言者や、当時の教会の関係者が描かれている事もあります。
 では、血筋を巡るエッサイの樹の絵画12点をご覧ください。

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「作者不詳 彩色写本の挿絵 1200年」
寝ているエッサイを一番下にして、ダヴィデ、ソロモン、
年代が飛んで聖母マリア、頂点がイエス・キリストとなります。
横側は預言者であったり天使であったり。
AnonymousTree of Jesse illumination 1200

「フランスの図書館所蔵の写本挿絵より」
樹の形がなわとびとかブランコみたいですね。預言者達の立つ
建物みたいな枠も合わさり、なんだか素敵なアトラクションを
みているかのよう。鳩も垂直ですし・・・w
Arbre de Jessé Manuscrit 340 Bibliothèque municipale de Douai

「フランスのシトー修道院が製作?写本 1130年頃」
こちらは身体から樹は生えておらず、三位一体を構成している
かのようなエッサイの樹。ライオンに襲われているのはダニエル。
右の炎にまみれた天使は誰だろう?黙示録でも起こったのかな・・・。
Unknown Miniaturist French active 1130s at Citeaux

「作者不詳  12世紀」
エッサイの顔がすこやかで、なんだか和みますw
これは象徴的な表現ですね。・・・みんな鳩になっちゃった!
Tree of Jesse, 12th

「ドイツの写本より  1200年頃」
これはエッサイから生えているというより、樹の上に彼が
乗っている感じですね。くるくると回る樹の中に王たちと
聖母子像がいます。葉っぱがおしゃれ。
Saksalainen illuminaatio 1200-luvulta. Kuva

「英語で書かれた詩篇の写本より 12世紀」
ん?エッサイの・・・樹が生えているところ・・・?
ん?右側の王様、角生えてない・・・?
ツッコまないでおきましょうw
12th  English psalter

「ロンドンとブリュージュで製作したとされる写本  1401-5年頃」
お腹に木が生えちゃって困っている感じのエッサイ。
幹に乗っている皆さんが小人みたいで可愛らしいです。
The O Antiphons as Medieval Carols O Root of Jesse

「ハンス・ホルバイン(親)作  1501年」
立派な椅子に座ったエッサイのお腹から幹がにょきり。
葉っぱから王様がにょっきり。こちらは旧約の王ばかりですが、
ホルバインは連作で作品を描いています。
HANS HOLBEIN THE ELDER Tree of Jesse, 1501

「Girolamo Genga 作 1467-1551年」
みっちりぎっちりしているエッサイの樹。
12人の王はダビデ、ソロモン、レハブアム、アビヤ、アサ、
ヨシャファト、ヨラム、ウジヤ、ヨタム、アハズ、ヒゼキヤ、
マナセとのこと。お、覚えられない・・・!
Girolamo Genga

「Absolon Stumme 作 1499年」
左にいる緑服の人物は、推測になりますがエッサイの樹の言及を
した預言者イザヤなのかな、と思います。
お腹から金色の花のような樹がにょっきりです。
Absolon Stumme 1499

「作者不詳  1500年頃」
とっても細かいエッサイの樹。両脇に預言者、女性たちは
聖女だと思われます。とっても大所帯な絵画ですね^^;
ANONYMOUS THE TREE OF JESSE 1500

「ヘールトヘン・トット・シント・ヤンスもしくは
ヤン・モスタールトの追随者作 1500年頃」
色彩煌めく宮廷な雰囲気のエッサイの樹ですね。12名の王と
2名の預言者、マグダラ教会の修道女が描かれています。
幹の部分が電信柱に見えるのは私だけだろうか・・・。
Geertgen tot Sint Jans or Attributed to Jan Mostaert 1500

 血統の重要視は古代からあり、古代エジプトやギリシア、ゲルマンでも考えられていました。王は「神の血を引いている」と宣言し、己の血筋の正当性を主張しました。ユダヤ教でもユダヤ人のみが救われるという選民意識があり、血統に依存しています。中世や近世、近代など、どこの時代においても王族は世襲に固執し、血を絶やさないよう苦心しました。現代でも血統を重んじるその思想は、連綿と受け継がれています。

 厳密に言ってしまえば、ダヴィデの血筋はイエスの義父である聖ヨセフとされており、無原罪の御宿りで聖母マリアから生まれたキリストは、ヨセフの血を継いでいません。キリストの血筋はマリアの家系と神のみ繋がるのです。それなのにエッサイの樹によってダヴィデの系列を主張するのは、やはり血筋を重要視する古代からの思想が関連していると言えるでしょう。(ちゃんとした血筋を持つヨセフが描かれないのは、なんともやりきれませんが・・・^^;)人の上位に立つ者としては、由緒正しい血筋でなければならない、という思想は争いや王、差別が生まれた時点で存在していたのではないでしょうか。
 
 エッサイの樹のテーマは絵画のみならず、建築やタペストリー、ステンドグラスなど、様々な媒体にて取り上げられています。フランスのシャルトル大聖堂、イングランドのヨーク大聖堂やカンタベリー大聖堂など非常に数多くの教会にステンドグラスがあり、このテーマは当時の人たちにとって、それだけ大事なものだったかなと思いました。


 
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