Sidney Hall  Orion 1825 -

 オリオンはボイオティア地方に住む巨人の狩人です。背の高い偉丈夫で、一説によるとポセイドンとミノス王の娘エウリュアレーの間に生まれたとされています。
 彼は恋多き男で、シーデーやメロペーという美女を愛しましたが、シーデーはヘラによって殺され、メロペーは彼の愛を拒否してしまいます。メロペーの父親によって目を抉られ、盲目となったオリオンは、暁の女神エオスと太陽神ヘリオスの力を借りて目を癒します。それからエオスや、プレイアデス七姉妹に恋をしたそう。恋多すぎですね…!

 その後、彼は女神アルテミスと恋に落ちることになります。二人はクレタ島で暮らし、結婚も考えるほどでした。しかし、それに激怒したのは彼女の兄アポロン。「妹は純潔を守らねばならん。こんなどこの馬の骨とも分からん、乱暴な男は言語道断だ!」と、オリオンの元に毒サソリを放ったのです。サソリに驚き、オリオンは海へと逃げました。それを確認したアポロンはアルテミスにこう言いました。「妹よ。いくら達人の君でも、あの遠くに光るあれは射れまい」と。「そんなことは容易いわ!」と、兄の挑発に乗ってしまった彼女は、オリオン目掛けて射ってしまったのでした。こうしてオリオンは恋人の手にかかり、命を落としたのでした。

 死体が浜に上がり、自分のやったことを悟ったアルテミスは、たいそう嘆き悲しみました。名医アスクレピオスに蘇生して欲しいと頼み込みますが、冥界王ハデスに反対されてしまいます。アルテミスは「ならばせめてオリオンを空に上げてください。私が夜空を走る時、彼に会えるように」とゼウスに頼み込みました。ゼウスはこれを聞き入れ、オリオンは星座となったとされています。
 では、オリオンにまつわる絵画11点をご覧ください。


PR
 

「二コラ・プッサン作 1658年」
オイノピオン王によって盲目にされてしまったオリオン。
ケダリオンという者を肩に乗せ、彼は太陽神ヘリオスのに導きに
より、オケアノスへと到着します。そこの太陽を見た時、
オリオンの盲目は治ったのでした。
Poussin Paysage avec Orion aveugle cherchant le soleil  1658

「ローマの工房の画家作  17世紀」
盲目となった巨人オリオンが彷徨うの図。足元の家を見ると、
彼がかなり巨大であることが分かりますね。ワイルドイケメン
であれば、何名もの女性との恋に巨大すぎる背丈も関係ない…!?
ROMAN SCHOOL EARLY 17th The Giant Orion

「ヨハン・ハインリヒ・ティシュバイン作 1762年」
女神アルテミスといちゃつくオリオン。巨人が関係なくなり、
イケメン美青年になっておりますね。この関係が気に入らない
兄アポロンは策略を練り、オリオンは命を落とします。
Diana and Orion  Johann Heinrich Tischbein's 1762

「ダニエル・シーター作 1685年」
アルテミスの矢で息絶えたオリオン。彼女は名医アスクレピオスに
蘇生を頼みますが、冥界王ハデスに拒否されてしまいます。
あられもない姿で倒れているオリオン…。
Daniel Seiter  Diana by the Corpse of Orion (1685)

「ギイ=ニコル・ブルネ作 18世紀」
オリオンの死と題された作品。首に立った矢と、足元の矢筒で
表現しています。ただただ、美青年のお身体が描きたかった
だけに感じますね…^^;
Nicolas Guy Brenet Death of Orion 18th

「作者不詳 18世紀の挿絵」
望遠鏡を使ってオリオン座を見上げる天使さん。
この星々の形を見て、オリオンの人格や物語を想像した
昔の人のイマジネーションに脱帽です。
Orion constellation, 18th

「作者不詳  15世紀の挿絵」
中世のオリオン座。巨人の狩人というより中世の騎士ですね^^;
剣二振りと個性的な盾を装備して、はいポーズ!
Orion Constellation 15th  photograph

「作者不詳 1482年の挿絵」
こちらはルネサンス時代の挿絵。手持ちが棍棒になったものの、
やっぱり騎士ですね。15世紀に神話がどのように伝えられていた
のかが気になります。くるくる巻き髪がセクシーです。
Orion constellation 1482

 「ヨハネス・ヘヴェリウスの書籍の挿絵 1687年」
中世の騎士は脱出できましたが、ギリシアの戦士という感じに
なりましたね。棍棒と盾、剣はやはり所持しています。
colorized extract of Johannes Hevelius' Uranographia 1687

「作者不詳  1825年の挿絵」
現代の私達が想像するような姿になりました。こうして見ると、
棍棒と獅子の皮がヘラクレスと似通っているような。
ヘラクレスはゼウスの子で、オリオンはポセイドンの子で
生い立ちは違えども、謀略で死を迎える部分も共通点がありますね。
Sidney Hall  Orion 1825

「イスラムの彩色写本の挿絵より 13世紀」
おりおーん!!!???
13th Islamic manuscript illustration  constellation of Orion

 最後の中世イスラムのオリオンのインパクト、半端ないですねww
 アポロンの奸計によって命を落としてしまったオリオンですが、サソリによって殺されたという説もあります。一説によると、巨人でかなり強いオリオンは力を自慢するようになり、「俺が地上のあらゆる獣を狩りつくしてやるぜ!」などと豪語していました。それを不満に思っていた女神(ゼウスの妻ヘラであったり、大地の女神ガイアだったりします)は、彼にサソリを放ちます。サソリの毒にやられ、オリオンはあっけなく命を落としてしまうのでした。
 オリオン座は冬、さそり座は夏の星座。双方は決して同時に出ません。サソリが姿を現す時、オリオンはもう二度と毒にやられぬよう、そそくさと地平線の奥へと逃げていくのでしたー…。
 どちらの説だったとしても、なんというか格好がつかない死に方ですね…^^;どんまい、オリオン。


PR