ペガサスの絵画13点。メデューサより産まれ、英雄を乗せて大空を飛翔する天馬 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ペガサスの絵画13点。メデューサより産まれ、英雄を乗せて大空を飛翔する天馬

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 ペガサス(ペガソス)はギリシャ神話に登場する幻獣で、翼を持った天駆ける天馬です。
 ペガサスは海神ポセイドンとメデューサの間より生まれたとされています。一説によると、ポセイドンとメデューサはアテネの神殿で情事を行った為にアテネの怒りを受け、メデューサは醜い怪物に変えられてしまいました。その後、英雄ペルセウスによってメデューサは首を斬り落とされ、その首の流血からペガサスとクリュサオル(黄金の剣を持つ怪物)が生じました。産まれ落ちたペガサスは天に登り、ゼウスのもとで雷鳴を運ぶという使命を与えられたとされています。

 また、ペガサスは英雄ベレロポンの愛馬になったという伝説があります。ペガサスを得ようとベレロポンはペイレネの泉で苦戦しますが、夢の中でアテネから黄金のくつわを授けられ、それを使ってペガサスを手懐けることに成功します。(ポセイドンからペガサスを貰ったという説もあります) こうしてベレロポンはペガサスに乗り、キマイラを倒したり、アマゾンを討伐したりして武勲を立てました。

 これで有頂天になったベレロポンは「俺はオリュンポスの一員になれるのでは!」と天へ昇っていこうとしました。「奢るな人間!」と怒ったゼウスは虻を放し、虻がペガサスのお尻をちくっと刺した為、驚いたペガサスはベレロポンを振り落としてしまいました。墜落してしまったベレロポンは足が不自由になり、一人寂しく荒野をさまよって生涯を終えたとされています。(そのまま絶命したという説もあります)
 ユニコーンに並んで有名な幻獣である、ペガサスの絵画13点をご覧ください。

 

「赤絵のペガサス  紀元前510年頃」
立派な翼を持ち、にやりとニヒルな表情をしたペガサス。
現代の私達では背中辺りから翼が生えていると考えますが、
この作品では前足の辺りから生えていますね。

「ポンペイの壁画  1世紀頃」
ペガサスを手懐ける為に女神アテネから授けられし黄金のくつわ。
ベレロポンは「えいっ」とばかりにペガサスに装着しています。

「テオドール・ファン・テュルデン作  1606-69年」
私達が想像するペガサスそのままと言った感じですね。
ペレロボンではなくアテネ様直々に黄金のくつわと付けようと
しています。右の少年が完全ガードで面白いですw
この作者さんはルーベンスの元で共同作業をしたとされています。

「ヨハン・ボックホルスト作  1604-68年」
上腕二頭筋が凄いアテネ様が、力づくで黄金のくつわをはめようと
奮闘中。隣でヘルメスがフォローしています。
上記の作品と非常によく似た構成ですが異なる画家の作品です。
彼もルーベンスの影響を受けたとされています。

「紀元前4世紀頃の作品」 (画像元)
ペガサスを手に入れたベレロポンは怪物キマイラを見事やっつけて
のけます。神話ではライオンの頭と山羊の胴体、毒蛇の尻尾を持つ
とされています。これはライオンの頭・・・なのかな?

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1635年」
巨匠ルーベンスもベレロポンの勇姿を下書きに残しています。
複合怪物というよりも、ほぼライオン100%に見えてしまうような・・・。

「アレクサンドル・アンドレイェヴィチ・イワノフ作  1806-58年」
数々の武勲を立てたベレロポンは、始めは彼を殺そうと企んでいた
リュキア王イオバテスより認められ、娘を差し出されます。
背後にはアテネ様がおり、絶好調だったベレロポンはあらぬことを
考えてしまったのでした。

「ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ作  1696-1770年」(画像元)
奢る心が芽生えたベレロポンは「神々の一員になれるかも!?」と
ペガサスを使ってオリュンポスに登ろうとしました。しかし、
待ち受けていたのは破滅。ペガサスから落馬し、彼は不自由で
惨めな一生を送る羽目になったのでした。

「アンドレア・マンテーニャ作  1496-7年」
オリュンポス山と思われる場所に神々が楽しそうに暮らしています。
頂上にはヴィーナスとマルス、左側にヘパイストスとアポロンと
アルテミス、右側にヘルメスとペガサスがいますね。
ゼウスの使いの仕事を行っているペガサスは彼の同僚ですねw

「ピエール・ミニャール作  1679年」
一方、こちらは英雄ペルセウス。美女アンドロメダを救出する
瞬間ですが・・・傍らにはペガサスがいます。あれ?ペガサスは
メデューサの首から生まれて天へ飛びたっていったはず・・・。


「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1577-1640年」
神話によると、ペルセウスはヘルメスから翼のサンダルを授けられ、
ペガサスはいないはずです。けれど、ベレロポンとの混合による
ものか、絵画の体裁によるものか、ペガサスが描かれる作品は
かなりあります。このペガサスはぶち柄で可愛いですね^^

「ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ作  1730年」
アンドロメダを乗せてびゅーんです。天空から神々が舞い降り、
彼等を祝福してくれています。サンダルだとアンドロメダを背負う
羽目になるので、確かにこのような劇的な場面は描けませんね^^;

「フレデリック・レイトン作  1830-96年」
メデューサの生首を下げ、白馬のペガサスに乗るペルセウス。
馬に乗って登場というのは、英雄像として最もふさわしいの
かもしれません。

 恥ずかしながら、最近までベレロポンという英雄を知らず、ペルセウスはペガサスに乗ってアンドロメダを助けていると勘違いしていました^^; 過去のペルセウスの記事に何も知らずに書いていました。すみません・・・。神話をよく読むとペルセウスは翼のサンダルを履いていて、ペガサスは乗っていなかったのですね。(もしかしたら諸説あるのかもしれませんが・・・)

 画家がペルセウスをペガサスに乗せた理由として、メデューサをペルセウスが倒してペガサスが生まれたこと、ペルセウスとベレロポンの神話が少し似ていること、英雄像として乗馬が適していること、アテネとヘルメスが関与していること、あと、名前が似ている事があげられそうです。「pegasus」と「perseus」。ぱっと見ただけでは分からず、めっちゃ混合しました(笑)
 もしかしたらこの混合が原因で、ベレロポンの影が薄くなってしまったのかもしれませんね。天に近付きすぎて破滅したイカロスのようなベレロポンをこの際に知って下されば幸いです。

→ アンドロメダを助けるペルセウスについての絵画を見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> 飛翔天馬様へ
    レイナートさんの作品、綺麗ですね^^
    空駆けるペガサスも良いですが、オーロラを背景にしたユニコーンも美しい…。
    なんと、今年1月~3月まで様々な会場で特別展があるんですね!
    機会があれば行ってみたいです。

  2. 飛翔天馬 より:

    カークレイナートのガーディアンオブスカイを見てください。感動しますよ。

  3. 管理人:扉園 より:

     >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    彼はこの物語にしか登場していないと思います。
    ギリシア神話の人名って「~ス」というイメージが強く、ベレロポンってギリシアっぽくないように感じます。
    個性的な名前なので、覚えやすいといえばそうですが^^;
    完璧に立場を英雄ペルセウスにとられたような気がしますね。
    メデューサやペガサスにも完敗し、少し可哀想です…。

  4. 季節風 より:

    ベレロポンさんて日本での知名度がないようです。星の名前にもなっていないような。
    メデューサなどは見た目が日本でも知られています。イカロスやペガサスは日本でもビッグネームです。馬のペガサスが主のベレロポンよりはるかにビッグネーム。

  5. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    大空を駆ける優美な有翼の白馬…。ときめかざるを得ないですよね!
    乗馬の絵も上手く描けないのに、翼の生えた馬に人をちゃんと乗せるのは私も至難の業です…。
    画家も翼を描くときに「位置がムズイ!」と苦労したのかもしれません^^;
    馬は古典的な絵画だと「英雄を立派に見せる為の手段」となる場合もありますが、馬のフォルムの美しさは多くの画家を魅了していますよね。
    ペガサスはゼウスの使いになったとしても、きっと世界を飛び廻って自由を満喫しているはず!
    草をもしゃもしゃ美味しそうに食べるペガサスを想像したら心がほのぼのしました^^

  6. 管理人:扉園 より:

     >> 人が乗ったら羽ばたきにくそうな構造……^^;様へ
    こんばんは^^
    ルーベンスと同じような人は案外多いですよねw
    弟子で学んだとしても師匠の画風を受け継がない弟子もいる中、ヴァン・ダイクもヨルダーンスも「影響を受けました!」というのが感じられますし、それだけルーベンスの画風は物凄いオーラがあったのかもしれません。
    絵画も映画もペルセウス=ペガサス状態だったのでそう思い込んでいたのですが、ネットにも、今持っているギリシャ神話の書籍を読んでも、アンドロメダの場面にペガサスがいたとは書いてなくて。
    本当ですよね。ペガサスを入れるならクリュサオルも入れてあげなくちゃ!
    黄金の剣なら怪物も一撃でっ!←w
    人が乗ると足が翼が引っかかって「痛い!」ってなるのかしらw
    あの翼だと自分を飛ばすのが精一杯で「人間を乗せる余力はない!」と疲れてしまう可能性も…w

  7. 美術を愛する人 より:

    映画でも絵画でも、馬見るとテンション上がります。ペガサスはロマンの極みです。
    子供のころよく落書き帳に描いていましたが、人を乗せると足が翼に当たる問題で、いつも馬単体になっていました。
    こうしてプロの絵を見ると、翼の位置が悪かったんだなと今さら気づきました。
    とはいえ、やっぱりペガサスに人は乗らないでいてほしい。気楽に空を駆けて、行きたい所に行って、おいしい草を自由にもしゃもしゃ食べていてほしいと、個人的にはそう思うのです。

  8. 人が乗ったら羽ばたきにくそうな構造…… ^^; より:

    ファン・テュルデンさんの絵、ルーベンスっぽいと思ったら、彼もルーベンスと同じような人なんですね。(語弊のある言い方w
    ペルセウスがペガソスに乗って……というのは元の神話じゃなかったんですかね。メドゥーサとペガソスが描かれるのにクリューサーオールだけ未登場とは、仲間はずれも甚だしい。←ぇ
    ペガソスが暴れるっていうの……そもそも人が乗るのに適さない構造(羽根のつき方)が原因なのでは…… ^^;

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