お酒を飲む修道士の絵画13点。開発や醸造をこなす、お酒を嗜む聖なる者たち | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

お酒を飲む修道士の絵画13点。開発や醸造をこなす、お酒を嗜む聖なる者たち

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 修道士とお酒。節制を重んじ神に仕える彼等に、酔いをもたらすお酒は不釣り合いだと感じる人もいるかもしれません。しかし、修道士とお酒は切っても切れない関係にあります。
 中世ヨーロッパの時代、生水を飲むとコレラやペスト菌に感染する恐れがあり危険でした。その為、ビールやワインを飲むことを推奨したのが修道院の者達で、薬草などを混ぜて薬として飲んだり、栄養豊富な水分補給の手段として飲まれていました。
 また、ワインはキリストの血の象徴であることから、神聖視されていました。そう言った現実的と宗教的な理由があって修道士は好んでお酒を飲み、彼等だけではなく、その時代の人々はお酒を日常的に飲んでいたのです。(現代に比べると薄めのものであったようです)

 一般の人々は日々の生きる糧を得るのに精一杯でしたが、修道士たちは祈りや労働の時間はあるものの、勉学に励む時間がありました。当時、読み書きなどの知識を有していたのが聖職者や権力者であり、修道院はお酒の開発や醸造などを担っていたのです。ビールにホップを用いたのも修道士であるそうで、ビール界の革命を起こした存在であるとも言えますね。
 画家の中でも修道士=お酒というイメージは強かったようで、美味しそうにお酒を飲む修道士たちの作品が数多く残されています。これらの絵画は純粋なる「お酒って最高!」という賞賛か、「堕落者」というレッテルの意味なのか…。色々とありそうですね。
 では、お酒を飲む修道士の絵画13点をご覧ください!

 

「大英図書館の写本挿絵より  13世紀後半」
ワインの味見をしている修道士。鍵を持っているので、管理人
でしょうか。表情のせいで、こっそり盗み飲みしているように
みえちゃいますね^^;全部飲み干しそう…。

「Gaetano Bellei 作  1857-1922年」
物凄い朗らかな笑顔でお酒を抱きしめる修道士。
彼も鍵を持っているので、醸造の責任者なのでしょうか。
丸い体格も合わさり、お酒ばっかり飲んでても許してしまいそう。

「カール・グスタフ・ヘルクヴィスト作 1884年」
牡蠣を肴にして、くいーっとお酒を飲む修道士のおじいさん。
「ぷはー!だからお酒はやめられないな~!」という至福の
声が聞こえてきそうですね。

「Eduard von Grützner 作 1846-1925年」
年代物のアンティークなポット(?)を手に持ち、パンとお肉と
共にお酒を嗜む修道士。高齢な方が多いので、お酒も人間も
熟成された方が良いというメッセージ?(適当に言いましたw)

「Eduard von Grützner 作 1846-1925年」
パンとチーズ、お野菜とジョッキに入ったお酒。健康診断を
受けたら、絶対にひっかかりそうな体格をしていますね^^;
恰幅が良くなっても、飲食はやめられないようです。

「Eduard von Grützner 作 1846-1925年」
胸に手を当て、くいと一口。
五臓六腑に染みわたる~…。という感じでしょうか。
彼の表情が至福の時間を物語っていますね。

「Eduard von Grützner 作 1846-1925年」
先程から同じ画家さんばかり紹介しています^^;
彼は修道士の風俗画を好んで描いていたようです。修道士と
ワインを描く姿勢に、悪意や皮肉は感じられないので、
このテーマに並々ならぬ興味や好感があったのでしょうかね。

「ハーマン・カーン作 1839-1912年」
やってしまった修道士さん。
「あちゃー…どうしようかな。怒られるかな」という
放心と心の動揺がこちらまで届きそうですね^^;
瓶って本当に割りそうで怖いですよね…。私もやりかねん。

「ヨーゼフ・ワグナー・ホーエンベルク作 1870-1938年」
お酒を目線の高さにかざして、色の美しさを確かめる
シチュエーションは割とみられますね。滑らかな筆致で
色彩や質感が見事な作品です。こんな場所ならお酒を
飲んでみたくなっちゃいます。

「Antonio Casanova Y Estorach 作 1886年」
「ほら、あんたも飲めよ!遠慮せずに。ほらほら!」
と、めちゃくちゃ勧めているように見える修道院さん。
美味しくできたのが嬉しくて、みんなに振舞いまくっている
と考えると、なんだか微笑ましいですね^^

「Pompeo Massani 作 1850-1920年」
表情が険しいおじいさんだってお酒をたしなみます。
醸造や商品開発を担っていた修道院。味にこだわり、究極の
お酒を追求する頑固修道士だっていたはずです。
このお酒はOKが出たのかしら…?

「作者不詳 19世紀」
赤ワインを嗜むひげの修道院さん。
この方は神への祈りを捧げるように、静かにお酒と向き合って
いるようです。匠の雰囲気がします。

「Elliott Daingerfield 作 1880年」
若者だってお酒を飲んじゃいます。お酒は20歳から。という
考えが定着している現代日本。昔の西洋は文献の記述こそ
ないのものの、幼少の時からお酒を飲んでいたと思われます。

 文章は色々と書きましたが、私はお酒をほぼ飲まないんです…。
 学生時代にカクテルを一杯飲んだくらいで止め、酔っぱらった経験がありません。なので、自分がお酒に強いのか弱いのか、酔ったらどうなるのか未知数です。一度、経験として飲んでみようかなと思っていても、なかなか一歩が踏み出せません^^;修道士の皆様が美味しそうにお酒を飲んでいますし、神話や民話を読んでもよくお酒が出てきますし、西洋はお酒ありきの歴史ですよね。

 少し飲むと血流が促進されて身体にも良いと言いますし、今ではフルーツのお酒などかわった種類もあるので、まったりしたい時に飲んでみたいですね。ただ、飲み過ぎないように気を付けましょう。酒は飲んでも吞まれるな、ですね…。

【 コメント 】

  1. オバタケイコ より:

    「薔薇の名前」読んだんですね!
    私は映画の方を観ました。もう、20年以上も前だと思います。ショーン・コネリーがカッコ良くて、内容もとても面白く、すごく印象に残っています。

  2. 管理人:扉園 より:

    >> オバタケイコ様へ
    神に仕える修道士は、どこか厭世的で小説「薔薇の名前」のように、笑いについて否定的なイメージがあります。
    ですが、この修道士さん達は人間味があって、見ているこちらまで笑顔になりそうですよね^^
    地域や時代によるのかもしれませんが、こんな修道士さんだったらお友達になりたいです。
    食後の一杯。いいですね~^^
    私もちょっとずつ嗜んでいきます!

  3. オバタケイコ より:

    テーマがテーマだけに、修道士たちの表情がどれもいいですね。
    Eduard von Grützner さん、絵が上手いですね!表情の描き分けが素晴らしい。気持ちが伝わって来ます。
    Antonio Casanova Y Estorach 作の修道士さん、大好き💖『 いただきますっ!』とグラス受け取って一緒に飲みたいです。
    私はお酒に弱い体質ですが、ワインが好きで、夕食後、毎晩安い赤ワインを一杯いただいています。扉園さんもチャレンジしてみてね。

  4. 管理人:扉園 より:

     >> 季節風様へ
    修道士全般というより、醸造庫の管理人としての鍵ですね^^
    私も思いました…。作品を見る限り質素を美徳とするはずなのに、豪華な生活に見えますよね。
    絵画なので揶揄する部分も含まれている可能性がありますが、そういった修道士もいたのかもしれません。

  5. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    ヨーロッパと言っても広範囲な為、山の上流に住む者や施設の充実した場は新鮮な水を飲めていたかもしれませんが、一部の者であったと思います。
    古代ローマの技術は帝国の崩壊と共に失われ、新たな水道建設がはじまったのは12世紀頃という記述がありました。
    都市部では資金源が乏しく、不衛生であった為、生水は飲めたものではなかったと思います。
    中世では水の運び人がいたそうで、汲んだ時が新鮮だったとしても、販売時の水はいつのものであるか分かったものではありません。
    川の下流の方で汲んだ水は衛生上良くないものであったようで、運び人が汲んだ水もそこから汲んだものであれば、生水を飲んだら命の危険もありえます。
    ビールやワインなどのアルコールは消毒として大事であったと思います。
    また、肉や魚も新鮮とはいえず、腐りかけのものを食していたとされているので、食あたりを起さないよう、そちらの方の消毒としてもアルコールを飲んでいたのではないでしょうか。
    よく上流階級ではワインが飲まれ、労働者はビールを飲まれていたそうです。
    私は、嗜好性の高い現代のコーヒーよりも、頻繁に飲まれていたと考えています。
    (日本の水と西洋の水は、軟水硬水と水質が違う為、現代でも西洋の水を飲むと私達はお腹を壊してしまいます…)
    こちらをご参考にしてみてください。
    https://crd.ndl.go.jp/reference/modules/d3ndlcrdentry/index.php?page=ref_view&id=1000270350

  6. 季節風 より:

    鍵は聖ペテロを連想させますが修道士も鍵がトレードマークですか。
    牡蠣に檸檬を絞って豪華なお食事の修道士もいるんですね。

  7. 美術を愛する人 より:

    欧州は近代まで水質が悪くて生水が飲めず、代わりにワインを飲んでいたというイメージがありましたが、調べてみてもよくわかりません。
    古代ローマにはりっぱな水道がありましたし、井戸水やろ過装置もあったそうです。喉がかわいたら普通に水を飲んでいたのでしょう(産業革命後は水質汚染がひどくてコレラの大流行とかあったそうですが)。
    中世欧州におけるワインは現代で言えばコーヒーくらい頻繁に飲まれていたということでしょうか。

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