モノクロ画「グリザイユ」の絵画 12選。立体的で硬質的な美しさがあり、まるで彫刻 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

モノクロ画「グリザイユ」の絵画 12選。立体的で硬質的な美しさがあり、まるで彫刻

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 グリザイユはモノクロやセピアで描かれた、単色の絵画のことを指します。
 絵画を描く際は白黒で明暗を白黒で表現してからカラーを乗せていきますが、グリザイユはモノクロ段階で止めた作品となります。グリザイユは主に、祭壇画の扉絵(閉じられた部分)や、小物、レリーフに描かれました。立体的で、硬めな雰囲気があるので彫像の代用として描かれたり、当時絵具は高く、画家の製作時間も限られていた為、手早く描ける作品として描かれていました。もちろん、芸術的立場からもグリザイユは描かれました。
 グリザイユの作品12点をお楽しみください。

 

「ニコロ・デッラバーテ作   1540-50年」
支持体に下書きを描いてから灰かセピアの色を乗せ、
それから白でハイライトを入れていきます。

「Mabuse 作  1512年」
明暗を10段階に分け、画面の明暗バランスを見ながら
徐々に暗いトーンの色を塗り重ねていきます。
モノクロができたら本来ならカラーに入るのですが、
グリザイユはこの時点で完成です。
 1512 Mabuse

「ハンス・メムリンク作  1484年」
祭壇画はイーゼンハイムの祭壇画など、絵画と彫像を合わせて
制作されるものがありますが、グリザイユは彫像の模造として描かれました。

「フーゴー・ファン・デル・グース作  15世紀」
彫像を作るよりも、画家にグリザイユを描いてもらう方が
安価で手間も少ない為、また、画家にとってもカラーで描くよりも
簡単な為、祭壇画の扉絵のグリザイユが普及することになりました。

「ヤン・ファン・エイク作  1435年」
彫像に見せかける為、台座から像が出ているように見える、
影を描き込むなどのだまし絵的な工夫がしてあります。

「ヒエロニムス・ボス作  1504-08年」
利便性だけではなく、美学的にグリザイユを用いる場合も勿論ありました。
硬質的なモノトーンさは鑑賞者に古典的な雰囲気や、時間的静寂を与えます。

「マティアス・グリューネヴァルト作  1508-11年」
レリーフなどの装飾的なものもグリザイユがよく使われました。
葉やひだの細かい表現が見事です。

「ピーテル・ブリューゲル(父)作  1565年」
現代でも絵画を描く手段としてグリザイユは用いられています。
明暗を決めてしまえば、後は色を乗せていくのみです。(カラーの作業も大変ですが)

「Jacques Laudin 二世 (?) 作   17世紀」
杖や葉の部分のみが、茶で塗られているのが分かります。
グリザイユは少しだけ色が付くこともあります。どこまで塗るのかは作者の好み。

「Pierre Reymond 作  16世紀」
グリザイユで描かれたヘラクレス。ヒュドラと思われる怪物がきもかわいい。

「フランスの作者   16世紀」
レリーフや人物描写が細かく描かれ、まばゆい金属光沢が
グリザイユによって表現されています。上品さがよく現れています。

「フランスの作者  17世紀」
この謎のダンスの少年が気になったので紹介。全6枚の作品だそうです。
何とも言えないオーラが醸し出されています・・・。

 ヒエロニムス・ボスの傑作「快楽の園」の扉絵、「世界の創造」部分もグリザイユで描かれております。私的な話になるのですが、以前通っていた大学の絵画研の教授に「あれは時間がなかったから、グリザイユにしたんじゃないの?」と言われ、全力否定したい気持になりました。あれは美学目的でグリザイユにしたんだと信じたい!だって、モノトーンから開いて極彩色になった方が、感動が増しますし!神様が創造途中だから、白黒世界でも不思議はないはずでしょう!(ぇ
 皆様、作品がグリザイユで描いてあるからと言って、どうか「手抜き」とか「節約」とか思わないでください。グリザイユには、グリザイユの魅力があるのですから!

→ <画像元のサイトはこちら(英語)>

「ヒエロニムス・ボス作 快楽の園 扉絵(部分)」

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