ユダの接吻の絵画13選。キリスト教における裏切者の親愛のキスは、背徳の合図 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ユダの接吻の絵画13選。キリスト教における裏切者の親愛のキスは、背徳の合図

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 ユダの接吻は、新約聖書においてユダがイエス・キリストを売る為に行った行為の場面です。
 最後の晩餐の翌日、キリストはゲッセマネの園にいました。三名の使徒と共にいると、なにやら足音が聞こえてきます。明かりと武器を持った、ユダヤ祭司長の兵士一団が現れたのです。その先頭にいたのはイスカリオテのユダで、彼は「先生!」と言いながらキリストに接吻をしました。、「誰がキリストか分かるように、接吻をしろ」と祭司長から言われていた為です。ユダは銀貨30枚を受け取り、キリストを売ったのです。
 敵の一団は神の子を捕らえようと集まってきます。それを阻止しようと、弟子のペトロが剣を振り上げて、男の耳を切り落としました。しかし、キリストは「ペトロ、やめなさい。剣は滅びの道を歩む。これは預言された通りなのだ。私は行こう」と言って、敵の成すがままにされました。こうしてキリストは捕らえられたのです。
 親愛のジェスチャーである接吻が背徳の合図となる。裏切りの象徴ともいえる行為、ユダの接吻の絵画13点をご覧ください。キリストの表情にも注目です。

 

「作者不詳  12世紀」
ユダの接吻とペトロの攻撃阻止の、ダブル構造。
中世の絵画の多くは皆無表情です。ユダの身体がしんなりしている・・・。

「Virgin Peribleptos 教会の壁画   1295年」
ユダに抱きつかれ右の男に鷲掴みにされ、不服そうなキリスト。
横顔の男たちが一昔前の漫画のように見えて、いい味を出しています。

「ジョット・デ・ボンドーネ作  1304‐6年」
一番有名なユダの接吻の絵画。画家によって頬にキスしたり、
正面からキスしたり・・・。一体どっちだったんでしょうか?
→ ジョットについて詳しく知りたい方はこちら

「ディルク・ボウツ作  1485年」
おじさんの接吻を耐えているかのようなキリスト。
男に襲い掛かるペトロは他の絵画にも大体いるので、探してみてください。
→ ディルク・ボウツについて詳しく知りたい方はこちら

「コーネリス・エンゲルブレシェッツ作   16世紀前半」
無表情を一切崩さないキリストに、頬をすり寄せるかのようなユダ。
左の武装した方々がめっちゃ立派に見えます。鎧格好良すぎる!

「グイド・レーニ作(?)  17世紀前半」
暗闇の中、無表情のキリストをユダががっつりと抱き寄せています。
キリストの頭が扁平に見えるのは私だけ?

「ルカ・ジョルダーノ作  17世紀後半‐18世紀前半」
ユダの表情がキスしようというより、脅迫する気満々に見える!
耳元で「お前は捕まんだよ、ああん?なんか言ってみろよ、んー?」と
恐い言葉を囁いていそうです。背後でペトロが殺人鬼と化している・・・。

「カラヴァッジョ作  1601年頃」
キリストが顔を背けて、ユダの接吻を拒んでいます。
酒飲んで強引にキスを迫るおじさんを、女子が嫌がっている図に見えるような・・・。

「Gerard Douffet 作  17世紀」
ユダヤの兵士たちが飛び掛かって来て、ユダは小悪党的ににやりと笑い、
キリストは諦めの表情。二人の表情が個人的に好きかも。

「アンヌの時祷書より  1503‐8年」
表情こそ嫌悪を出していませんが、上目遣いの目が虚ろです。
キスされながらペトロに「剣はやめなさい」とたしなめ、
男の傷を癒そうとしています。絵の色遣いが素敵。

「アリ・シェフェール作   19世紀前半」
全力拒否反応の死んだ魚の目がナイス!
内心「うげー、嫌だげ―!」と思ってそうです。

「ルドヴィコ・カラッチ作   1600年頃」
セクシーすぎですキリスト。ユダの手の位置もなんか気になるし、
テーマが危うい方向へ変わっているような・・・。こんな主題でしたっけ?

「felice torelli の追随者作  18世紀」
キリストが嬉しそう!ていうかキリストから誘って見えます!
ユダが夢見心地の表情を・・・。主題まったく違いますって!

 捕らえられたキリストは裁判にかけられ、十字架に張り付けにされて処刑されます。ユダは自ら行った罪の意識に耐え切れずに貰った銀貨を神殿に投げ込み、首つり自殺を図り
ました。裏切者の代名詞ともなっているユダですが、キリストがはじめから予言しているように、わざと裏切者となった節があります。昔読んだ本で「これは仕組まれたことで、キリストの死と復活を達成させる為に、ユダは自ら汚れ役である裏切者を買って出た。ユダは真のキリスト教徒である」といった説が書かれていました。私はなるほどと思い、それからユダを悪者に感じなくなりました。
 真実の程は分かりませんが、キリストを売る為に接吻をしたのは事実です。頬なのか、口なのかはともかくとして・・・。

→ 最後の晩餐について知りたい方はこちら
→ イスカリオテのユダについての絵画を見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    ジョットの作品は半平面的でありながら、奥行きさと構図のまとまりを感じますよね。
    はした金の為に売ったのか、嫉妬ゆえに売ったのか、愛の裏返しの憎悪か、もしくはキリスト復活の為の布石なのか…。
    どうしてユダがそのように行動したのかは様々な説がありますよね。
    キリスト教圏は自ら命を絶つ事を快く思っていませんからね…。
    もしかしたらユダの行為からそのような印象になったのかもしれません。
    仰られるように、自らの贖罪の為に全力で布教に励んだ方が彼は救われたように私も思います。

  2. 季節風 より:

    こんばんは。
    ジョット・デ・ボンドーネ作 の松明と棒のようなものと全体の色合いが緊迫の瞬間を感じます。
    ユダは損な役回りだと思います。まさかキリストが処刑されるとも思っていなかったのかもしれません。直ぐに自殺してしまったことをキリストは御怒りではないかと思います。心から謝罪し布教をやっていれば後世の評価は少し良くなっていたかもです。

  3. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    はじめまして。
    訪問して下さりありがとうございます^^
    キャッチフレーズに痺れていただけるなんて嬉しいです!
    はい。私が考えました。
    タイトルの字数をだいたい統一する為に、毎回どうしようかなーと考えています。

  4. 美術を愛する人 より:

    はじめまして
    ユダの接吻で検索したらたどりつきました
    裏切り者の親愛のキスは背徳の合図
    ってキャッチフレーズに痺れました!
    これはブログの執筆者さまが考えられたのですか?

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