使徒トマスの疑いの絵画15点。キリストの復活が信じられず、傷口に指を入れてしまう | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

使徒トマスの疑いの絵画15点。キリストの復活が信じられず、傷口に指を入れてしまう

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 「疑い深いトマス」という主題は、本当にキリストが復活したかどうかを疑った使徒トマスが、手や脇腹の傷を見て触ったことで信用した物語です。
 ゴルゴダの丘にて磔刑されて三日後、キリストは墓石の中より復活を果たしました。マグダラのマリアや女性たち、二人の弟子が死んだはずの救世主を目撃します。その話は使徒達にも伝わり、考えていると突然彼等の中央にキリストが出現し、「君たちに平和があるように」と言いました。使徒たちは非常に驚き、幽霊を見たと思いました。そんな使徒達に対し、キリストは「手足を触ってみなさい」と伝えてから皆の前で焼き魚を食べてみせたので、彼等はやっと信じました。しかし、その場には使徒トマスは不在でした。

 トマスは皆から「主は復活なさった!」という話を聞いてもなかなか信じようとしませんでした。「私は手に釘の後を見てそこに指で触れ、脇の傷にこの手を入れてみなければ信じられない」と頑なに宣言したのです。その八日後。トマスを含めた使徒の元にキリストが再登場します。以前と同じことを言い、キリストは疑い深いトマスを呼びます。そして手を差し出して「この傷をよく見て触れてみなさい」と言い、「さぁ、私の脇腹に手を入れてみるのです」と言ったのです。トマスは恐る恐るそれらを行い、復活を心から信用しました。キリストはトマスに「貴方は私を見て信じましたが、私を見たことがなく信じる者は幸いなのです」と伝えたそうです。
 キリストの脇腹にそーっと指を入れる使徒トマスの絵画、15点をご覧ください。

 

「マルティン・ショーンガウアーとその工房作  1448-91年」
キリストが持つ旗は「復活の旗」と言い、死に打ち勝って復活したキリスト
を象徴しています。トマスの手首を持ち、脇腹の傷へといざなっています。
立膝をし、二本指で触れるトマスの表情は敬虔に満ちていますね。

「ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ作  1308-11年」
キリスト、斬新な服のめくり方をしていますね!
上着とスカートは繋がっていないのか、はたまた切ってしまったのか・・・。
トマスがそっと触る中、他の使徒達が心配そうに見つめています。

「チーマ・ダ・コネリアーノ作  1504-05年」
青空が映える神殿の中で行われているトマスの疑い。右の聖人は
聖マグヌス(本名オークニー伯マグヌス・エーレンドソン)であり、11世紀
後半頃に北欧で活躍した方です。時代が全く異なるので、おそらく
聖堂の名前か、依頼者の守護聖人に関わっているのでしょう。

「Ludovico Mazzolino 作  1480-1528年」
フランドル系の風景の中、腕を広げて「さぁ、傷口に手を入れよ!」と
言っています。トマスは遠慮なくずぼっと二本の指を入れていますね・・・。
なかなか個性的な作品です。

「ルカ・シニョレッリ作  1450-1523年」
若いイケメンっぽいトマスが、服の裂け目から覗いた傷口に指を
入れようとしています。傷口の描写もそうですが、金髪のキリストって
珍しいような気がします・・・。

「フランチェスコ・サルヴィアーティ作   1543年」
なんか宗教画にも関わらず、肌色が多い作品です。
こちらもイケメン気味のトマスですね。トマスは髭の生えたおじさんで
描かれることが多いのでレアです。キリストが自分の腰布を踏んでいる
のが気になる。歩いたらほどけますよ・・・。

「カラヴァッジオ作  1601年」
最も有名なトマスの疑いの作品。バロック調の暗い背景の中、
皆が傷口を凝視しています。これにより、一点に視点が集中した
緊張性が生まれるのです。

「レンブラント・ファン・レイン作  1606-69年」
レンブラントは引き気味の構図で描いていますね。左わき腹を指し、
手を入れなさいと言っています。画家によって左右が異なるのが
気になるところ。聖書によっては単に「脇腹を刺された」とあったり「心臓を
刺された」とあったり・・・。心臓が左右逆転しているって、まさか・・・!?

「ヘラルト・ファン・ホントホルスト作  1592-1656年」
セピア系の色合いの中、トマスは二本指で傷口に触れています。
神秘的な作品ですが、キリストのおへそが凄く気になる・・・。

「ベンジャミン・ウエスト作  1790年」
この作者は新古典主義の画家で、アメリカで生まれ、イタリアへ
引っ越して様々な画風に触れたそうです。個人的にはルーベンスの
影響が見て取れるような・・・。この作品、結構好きです。

「Leendert van der Cooghen 作   1654年」
キリストのお肉が少したるんでいるように見えるのは私だけ?
左側の使徒はおじいさんばかりの中、右側でのぞき込んでいる少年が
使徒なのか、誰なのかちょっと気になりますね・・・。

「ヘンドリック・テル・ブルッヘン作   1622年」
痛がって見えるキリスト。傷口をつんつんされたら痛いですよね・・・。
一人一人の表情が個性的で、見つめているとじわじわ来ます。

「カール・ハインリッヒ・ブロッホ作   1881年」
傷口に触れたトマスは本物だと認識し、「我が主よ!」とひれ伏します。
そんな彼にキリストは「触ってから信じるのではなく、見ずに信じる者の
方が幸いだぞ」と諭すのです。

「ジョン・バレンタイン・ハイト作  1758年」
そこ、脇腹!?
人々の表情も気になる所ですが、それよりもキリストの足首を掴んでいる
女性(マグダラのマリア?)が怖すぎる!貞子化しておりますよ!

「マッティア・プレティ作  1656-60年」
大きく両腕を広げて、凄いポーズで「我の脇腹の傷に触れよ!」と
アピールしているキリスト。トマスは「ほ、本物かも!」と隣の人に
確認をしているように見えます。この個性的な構図をどうやって思い
付いて描こうと思ったのか、経緯を知りたいですね・・・。

 キリストは使徒トマスに「私の手の傷口を見て、指で触れよ。そして脇腹の傷に手を入れよ」と言いました。それに対し、前者の「手の傷に触れる」という絵画は一枚もなく(私の詮索力において)、後者のシーンを画家たちは描き、手ではなく指を1~2本入れる場面としました。
 ていうか、手を全部入れたらシュールすぎますよね・・・。絵画で表わすなら、やはり指でそっと入れる方が劇的に感じるような気がします。(ジョン・バレンタイン・ハイトさんの作品が、指四本を突っ込んでいるように見えますが・・・)

→ キリストの復活についての絵画を見たい方はこちら

 

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