十字架を背負うキリストの絵画14点。重さに苦しむ救世主と凶悪な態度を示す民衆 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

十字架を背負うキリストの絵画14点。重さに苦しむ救世主と凶悪な態度を示す民衆

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 新約聖書の終盤において、イエス・キリストはユダヤ教の者とローマ人に捕まり、裁判の後に死刑を宣告されます。そして、自らが磔となる重い十字架を背負い、丘を登ることになるのです。
 丘はゴルゴダの丘と呼ばれ、「しゃらこうべの地」という意味があります。キリストはローマ人の慣習のため、丘の頂上を目指して巨大な十字架を背負いながらよろよろと歩きます。キリストが登っている間に多くの民衆が集まり、横について行きました。キリストを助けたいと切望している者も中にはいましたが、民衆の殆どは野次馬や通りすがり、彼を嘲り馬鹿にするために集まっていました。そのような境遇でもキリストは数少ない信仰者に対し「私の為に泣かず、自分たちの心配をしなさい」と伝えます。
 彼はなおも十字架を背負い続けましたが、遂に耐え切れずに倒れ込んでしまいます。兵士は起き上がるよう怒鳴り散らしたものの、キリストは立ち上がれなかったので、シモンという男に手伝わせました。行列の中に罪人二人も加えられて彼等はゆっくりと登っていき、やっとのことでゴルゴダの丘へ到着したのです。
 このエピソードは人々の原罪を背負うキリストを象徴する物語として、多くの画家によって描かれました。十字架を運ぶ(担う)キリストの絵画13点をご覧下さい。

 

「Hans Maler の追随者作  1500-15年」
悲惨さを伝える為、絵画には多くのキリストを虐げる者達が描かれて
います。キック感と手の曲がり方が凶悪な感じです…。背後には
信仰者とシモンがおり、そっと十字架を支えています。

「Master Thomas de Coloswar 作 1427年」
兵士に「さっさと歩け!」と怒られ、困り顔のキリスト。身動きができない
程のぎゅうぎゅう詰めに見えます。ていうか、足元のシモンさんがミニマム!

「Giovanni Battista Naldini 作 1566年」
ショールを持った女性は伝承で登場する聖ヴェロニカで、
血に汚れたキリストの顔を拭いた聖女とされています。衛兵の肉体が
ムキムキで、ミケランジェロ的過ぎる・・・。
→ 聖ヴェロニカの絵画を見たい方はこちら

「中世絵画 作者不詳  1420-25年」
何とも言えない遠近感を醸し出す作品。キリストの持つ十字架が一枚板
に見えますが、多分T字型タイプのものだと思います。
背後で聖ヴェロニカさんらしき女性が口説かれているような気がする・・・。

「Jean Poyer 作  1500年頃」
こちらの絵画もT字型の十字架を描いています。見慣れたラテン十字
ではなく、T型が採用された時代も一時期あったそうです。
この者達はキリストを虐めず、無関心な人ばかり。それも寂しいような。

「マティアス・グリューネヴァルト作  1470‐1528年」
この時代の頃から、キリストを虐げる者の顔をカリカチュア(誇張や滑稽さ
を施した人物画のこと)として描く者が現れます。顎がつき出た凶悪そう
な男たちがキリストをひたすら虐めています。

「ヒエロニムス・ボスの追随者作  1510‐35年」
この作品が顕著で、目をつむって耐えるキリストを男たちが顔面を使って
攻撃しているように感じます。この絵画に習い、多くの画家がドアップの
カリカチュアが入った十字架を担うキリストを描きました。

「Jan van Hemessen 作  1500‐66年」
キリストは鑑賞者へ真剣な眼差しを向けていますが、背後の男たちが
ふざけまくっています。べろべろ~や鼻に指を突っ込むとか、500年前の
外国でも馬鹿にするポーズは似たような感じですね・・・。

「ピーテル・ブリューゲル(父)  1564年」
一見大人数がいる風景画ですが、真ん中をよーく見てみましょう。
十字架を持つキリストがおります。ブリューゲルはこういった突飛で
斬新なアイデアの作品をよく描きました。
→ ブリューゲル(父)の絵画をもっと見たい方はこちら

「ヤーコブ・ヨルダーンス作  1593-1678年」
キリストの顔が灰色になっておりますが、この絵画は彼を賤しめる
怪物のような顔の者はおらず、金持連中や衛兵、右の野次馬も
普通の表情で描かれています。味方も多めです。

「ニコラス・トゥルニエ年  1590‐1638年」
バロックに入って来ると、丘ではなく建物の内部で演劇のワンシーンを
描いているような作品も見受けられるようになってきます。実際に
ポーズをとってもらって描いたといったような感じですね。

「エル・グレコ作  1577-87年」
物語ではなく、キリストを象徴する道具として、肖像画的に十字架を
持つ絵もあります。エル・グレコのこの作品は全人類の罪の贖い、
救済の意味として、十字架が描かれているように感じます。

「Bernardino Luini 作   1482‐1532年」
また、肖像画風にキリストの苦悩の姿を描いた作品は
「悲しみの人(Man of Sorrows)」と呼ばれています。基本、キリストを苦しめた
荊冠や釘、十字架や、手や脇腹の傷跡が描かれることが多いです。

「Andrea del Brescianino 作  1587‐1625年」
悲しみの人にしては、な、なんかセクシー・・・。
全然十字架が重そうに見えませんね・・・。

 キリストが運んだ十字架の重さは、一説では300ポンド(136kg)とされています。(参考HP)
 ウエイトリフティングのスナッチ競技では、男子56kg級の世界記録が139kg(2017年4月現在参考HP)とされているので、キリストは世界記録並みの重さの十字架を背負ってゴルゴダの丘に登ったことになります。そんな重さなら、耐えきれなくて倒れてしまいますよね…。リフティング選手は相当鍛えてその重さのバーベルを持ち上げているのに、肉体派でもないキリストが途中まで一人で136kgを運んだのは奇跡のパワーなんでしょうか。

 

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