世界の救世主という主題のキリストの肖像画14選。ダ・ヴィンチも描いた宗教モチーフ | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

世界の救世主という主題のキリストの肖像画14選。ダ・ヴィンチも描いた宗教モチーフ

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 「Salvator Mundi (サルヴァトール・ムンディ)」は世界の救世主という意味のラテン語で、右手は祝福の印、左手は世界を象徴する球体を持ったキリストを描いた宗教的な主題を指します。このテーマは特に北方ルネサンスの者達に人気があり、ルネサンスの時代に盛んに描かれました。かの有名な画家レオナルド・ダ・ヴィンチもこのモチーフを描いており、後年に追随者を生み出しました。
 Salvator Mundi の作品、14点をご覧ください。

 

「カルロ・クリヴェッリ(工房?)作  1470年」
Salvator Mundi の構成は基本、左手はゆるーくピースをしたかのような、
祝福の印を結び、右手はキリスト教世界を象徴する十字架が付いた
球体を持っています。
→ カルロ・クリヴェッリの作品をもっと見たい方はこちら

「フランドル絵画   16世紀」
ちょっと頬がふっくらして見えるキリスト。球体の中には断崖や海、
船が描かれています。情景を描き込む場合は、世界の終末的な
雰囲気が出ているものが多いです。

「Antonello da Messina 作  15世紀」
後頭部の後光が特徴的なキリスト。球体のサイズやデザインは
クリヴェッリの作品に似ていますね。

「エル・グレコ作  1600年」
有名な画家エル・グレコもこの主題を描いています。
耳が出ているキリストは余りおらず、珍しいなぁと思いました。
地球そのものにそっと手を置いているように見えます。

「フランドル絵画作   1537-45年」
球体が地球儀や地図のような感じです。画家によって下から支えるタイプ
と、上から持つタイプがあり、国によって違うのかな?と思いましたが、
そうではないようです。画家の判断によるものなのですかね。

「クエンティン・マサイス作   1466–1530年」
このキリストの目線はどこにあるのだろう・・・。
目が死んだ魚状態になっていて、少し不気味に見えてしまいます。
金の装飾や、球体の内部の景色の描き込みは精密で、美しいです。

「ティツィアーノ作  1570年」
ティツィアーノのキリストは顔を少し斜めにしていて、手の位置も
上気味にあり、他の作品より動きがあるように感じます。

「ヨース・ファン・クレーフェの工房作  1540年」
背景のグラデーションとこちらを一心に見つめるキリストの顔が合わさり、
なんだか独特な雰囲気を醸し出しています。

「Andrea Previtali 作  1519年」
全体的にふくよかで、とっても人が良さそうに見えるキリスト。
救世主というより、気軽に相談ができる隣人のような存在に感じます。

「アンソニー・ヴァン・ダイク作  1650‐1700年」
ルーベンスの弟子ヴァン・ダイクは短髪で流れるようなキリストを
描いています。目線は絵画によって様々ですが、このキリストは
天の神へと目を向けているように見えます。

「レオナルド・ダ・ヴィンチ作  1500年頃」
失われた絵画だと思われていましたが、発見されて復元され、2011年に
ロンドンのナショナルギャラリーに展示されたダ・ヴィンチの真作。
2013年にはロシアのディーラーに1億2750万ドルで売られてしまったとか。
う、売っても良かったんですかね…。(追記)2017年に510億円という
美術界の最高値で売られました。け、桁が違う・・・|д゚)

「レオナルド・ダ・ヴィンチの追随者作  16世紀頃」
ダ・ヴィンチの作品は何名もの追随者を生み出しました。
容姿や身体、服装、手の位置など非常によく似ていますが、絵画の
技術はダ・ヴィンチの方が勝っているなぁと感じてしまいます。

「レオナルド・ダ・ヴィンチの追随者作  16世紀頃」
こちらもダ・ヴィンチの追随者とされていました。切れ長で美化された
感じのキリスト。ダ・ヴィンチというより、デューラーが描く作品のように
見えるのは私だけ?目付きとかヒゲとか髪形とか・・・。
Salvator-Mundi Leonardo da Vinci

「フランドルの画家  1750‐75年頃」
この作品もダ・ヴィンチの追随者とされていましたが、何処らへんかは
謎です。このキリストの祝福の印は、他とちょっと違いますね。球体の
中に内包されている宇宙が綺麗です。目力のこもった素敵な作品です。


 今回「Salvator Mundi (サルヴァトール・ムンディ)」という絵画主題を調べ、恥ずかしながら始めてサルヴァトールは救世主という意味だということを知りました。なので、画家のサルヴァトール・ローザやサルバドール・ダリの名前もそういう意味だったんですね。ちょっとずつ読み方が違うのは国の違いのようです。
 救世主という名を与えられた二人ですが、ローザはルネサンスを排して暗闇の風景画を描き、ダリはシュールレアリスムで無意識を顕現しようとしました。時代や国は違えども、彼等は美術界の既成概念を壊し、新しい改革をしようとしていたのです。サルヴァトールという名前は、波乱を巻き起こす名かもしれないですね(笑)

→ サルヴァトール・ローザについて知りたい方はこちら

 

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