ユディトは旧約聖書の「ユディト記」に登場するユダヤ人女性で、国の為に敵陣へ潜り込み、騙して信頼を得ることで将軍の首を斬り落としたことで知られています。
アッシリアの王ネブカドネザルは、将軍ホロフェルネスをユダヤの町ベトリアという町へ派遣しました。 ホロフェルネスは軍勢を率いてやって来て、町を包囲してしまいました。人々は絶望に打ちひしがれましたが、ユディトが現れ、一つの作戦を立てます。それはユディトが美しく着飾ってホロフェルネスの元へ赴くというものでした。ユディトは敵将軍に近寄り、まんまと敵陣に入ることができました。四日間経つとホロフェルネスの警戒も解け、ユディトを酒宴へ招きます。彼は飲みまくって泥酔し、眠り込んでしまいました。その隙を見計らい、ユディトは短剣でホロフェルネスの首を斬り落としました。彼女は侍女を連れて首を町へ持ち帰り、出来事を報告しました。ユダヤ人達は歓喜し、アッシリア軍を打ち負かしました。
物語を読めばジャンヌ・ダルクのような女性の英雄のようにも思えますが、ルネサンス以降の画家たちの中には、危険な妖艶さで男をたぶらかし、破滅させるようなユディト像を描いた者もいました。ホロフェルネスの首を斬る様々なユディトをお楽しみください。一部閲覧注意です。
「フェーデ・ガリツィア作 16世紀後半」
侍女が持つ盆に乗った首の髪を、むんずと掴むユディト。
これが私の使命である、といった感じの勇敢な姿。
「ヴィンチェンツォ・カテーナ作 16世紀」
ティツィアーノの影響を受けた画家。
肖像画でよくある「これは私が狩った獲物」といった感じ。
「アルテミジア・ジェンティレスキ作 17世紀前半」
男まさりでかっこいいユディト。剣を担ぐ姿がさまになっています。
「cristofano allori 作 17世紀前半」
垂れ目で蠱惑的な容姿のユディト。絵の鑑賞者に向かって
私が首を斬ったのよ、と自慢しているよう。
「ジョルジョーネ作 1504年」
可憐な姿に油断すると・・・。首ちょんぱにされて足蹴にされます。
踏み付け方が鬼畜ですね、ユディトさん・・・。
「ニュルンベルク年代記 木版画 1493年」
剣の先に突き刺す手法にウケました。ホロフェルネスの表情がシュール。
「Trophime Bigot 作 1640年」
バロックの暗闇主義の作品。真夜中に浮かび上がる殺人の光景。
侍女が腕を押さえ、斬首は速やかに行われています。
「ミケランジェロ・カラヴァッジョ作 16世紀後半」
ユディトの中でも有名な作品。嫌悪を催しながら首を斬るユディト。
カラヴァッジョの作品は斬首や生首が描かれたものが多いです。
「アルテミジア・ジェンティレスキ作 17世紀」
女流画家であるジェンティレスキ。彼女の描くユディトは勇敢で
たくましい姿のように思えます。血の吹き出し方がグロい・・・。
ユディトは男を騙して殺したので悪女として考えられる時もあり、同じく蠱惑的な踊りでヨハネを殺したサロメと類似視されております。ルーカス・クラーナハはユディトとサロメを瓜二つに描いているし、本やサイトを見ていると二人がこんがらがっているものがあります。二人は男を破滅させるファム・ファタール(運命の女)とみなされています。
【 コメント 】
毎回だがデッサン狂いきになる。ひざがああなら足の角度そうはならんやろっていう
>> 美術を愛する人様へ
人体構造のデッサンを勉強した方だと気になるところが多そうですね。
絵画にもよりますが、私は変なところは味に感じてしまいます^^;
毎回だがデッサン狂いきになる。ひざがああなら足の角度そうはならんやろっていう
>> 美術を愛する人様へ
これらの作品テーマは数多く存在し、記事によっては有名な作品よりも、あえてそこまで知られていない作品を優先して掲載しております。
あと、個人的な時代の好みが反映されており、直感的に作品を選んでいる節もあるので、近世の作品が比較的少なめな傾向にあります。
申し訳ありませんが、ご理解くださいませ…(> <)
何でクリムトが居ないんですか~~?!
>> 季節風様へ
こんばんは^^
抵抗するホロフェルネスの腕を抑えたり、首を持ったり。
侍女もなかなかの強者です。
ユディトも魔性の女とみなされる時もありますが、彼女は女性の武器と武勇を組み合わせて祖国を守った女傑ですよね。
こんばんは。
「フェーデ・ガリツィア作 16世紀後半」の真珠の首飾りが大変美しいです。老女が片手で生首を持つとは力持ちです。
ユディトは祖国の為に汚れ役を引き受けたんですね。