聖母マリアの死の絵画12点。キリストの母は永遠の眠りについて天国へ昇っていく | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

聖母マリアの死の絵画12点。キリストの母は永遠の眠りについて天国へ昇っていく

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 キリスト正教会によると、マリアは晩年をエルサレムで過ごしたとされています。彼女は己の死が近いことを悟って近辺の整理をし、その訪れを待ちました。すると、ばらばらに旅をしていた12使徒全員が家を訪ね、悲しんで口々に別れを惜しみました。マリアは最期に使徒達に会えたことに安心して平穏の眠りにつき、墓の中に入ります。三日後に使徒たちが墓を訪れてみると、マリアの身体はそこにはなく、昇天したということが分かりました。
 伝説では以上のような内容なのですが、聖母マリアの消息はキリストの磔刑以降分かっておりません。享年も50~70歳とまちまちとなっており不明です。マリアの死は「眠りにつく」と表現され、英語では「The Falling Asleep of the Virgin」などとも言われます。三日後の復活の後、天へと召されていくマリアの場面を「聖母の被昇天」と呼び、天国にいるキリストと神によって冠を受けている場面を「聖母戴冠」と呼びます。
 今回は眠りにつくマリアの絵画12点をご覧下さい。

 

パドヴァの礼拝堂の祭壇画   1484年」
使徒達が見守る中、マリアは静かに目を閉じています。
見守る人を数えてみたら13名いました。増えた!?絵画の依頼者が
入り込んでいるのでしょうか。左右のどちらかが怪しいです・・・。

「ゲラルド・スタルニーナ作   1404年」
マリアの眠りに息子キリストが天使を引き連れて降臨しています。
キリストが抱いている赤ちゃんはマリアの魂です。霊的に言ったら
マリアはまだ幼子なんですかね。この絵画の使徒はちゃんと12名でした。

「チェコのコシャートキにある絵画」
眠りゆくマリアの元に、王冠を被ったキリストがやってきます。
その手には幼子というより小人のようなマリアの魂。使徒の後ろ三人
くらいがおまけ状態になっていますね。前方の信仰者さんもミニマム
すぎてちょっとホラーです・・・。

「作者不明  中世絵画」
聖書を手に、ソファーにもたれかかるようにして眠っているマリア。
少し熟女かな?と思われる作品もありますが、若い女性のままの
容姿の作品が圧倒的に多いです。一番右端の使徒がそっぽを
向いていますが、一体何をやっているのでしょうか・・・?

「フラ・アンジェリコ作  1395‐1455年」
そっと棺に入れられるマリア。明らかに12名以上いますね。
きっと他の聖人たちも駆けつけてきたのでしょう。
天国では息子と天使達がマリアの昇天を待っているようです。

「マルティン・ショーンガウアー作  1470年」
現実的な目線のマリアの眠り。使徒ヨハネと思われる人物が飲み物を
飲ませようとさせています。最初数えたら11名だったけど、よーく見たら
ちゃんと12名いました。頭だけちょこんと描かれている・・・。

「スペイン出身の画家  16-17世紀」
こちらショーンガウアーの作品に影響を受けたのでしょうか。
双方はとてもよく似た構図をしています。あっ、頭だけだった人がこちら
では顔が出ていますね。可哀想だと思ったのかもしれません。

「ヒューホー・ファン・デル・フース作  1472–80年」
北方ルネサンスの作品。キリストと天使が上空から迎えに来ています。
マリアを象徴する色は、天の真実を意味する青なので、大半の作品が
青い着衣を纏っています。使徒達の表情は個性的なものが多いですね。

「ヒューホー・ファン・デル・フースの追随者作  1500年頃」
フースの系統を引く作品ですが、こちらは天からの迎えを描かず、
現実な目線で描いていますね。使徒達のほとんどは悲しみに沈んでいる
ようです。左隅の二人は何をやっているのでしょう。鈴のようなものは
葬儀に使われるのでしょうかね?

「Martinez Francisco 作  1715-57年」
まだ少女のように見えるうら若きマリア。そっと棺の中に入れられようと
しています。この使徒は何回数えても11名しかいなかった・・・。

「ミケランジェロ・カラヴァッジオ作  1605年」
腕を広げて眠っているマリアに、悲しむ使徒たち。手前で嘆いている
女性はマグダラのマリアでしょうか。彼女を加える作品は珍しいですね。

「カルロ・サラチェーニの工房作  17世紀」
眠るマリアを中央に配置し、12使徒は周囲で驚いたり嘆いたり
現実逃避をしようとしています。しかし、右側の赤い衣服の者が
微笑んでいるように見えるのは気のせいでしょうか・・・?

 永遠の眠りについたマリアは三日後にキリストによって天国へといざなわれ、神の御前へ進み出て戴冠されます。こうして彼女は永遠の喜びを得たのでした。
 一神教のキリスト教ですが、聖母マリアの崇拝は古くから行われていました。カトリック教ではマリア崇拝は認められており、厳しい神より彼女に祈りを捧げようとする民衆がみられました。しかし、16世紀にドイツで興ったプロテスタント派は聖書の内容を重視し、マリアや聖人崇拝を一切認めませんでした。マリア崇拝は異教が混ざり込んだ概念であり、彼女はあくまでもキリストを産んだ母親であり人間である、と考えたのです。なので、マリアの死後に起こる、被昇天と戴冠は否定しています。
 キリスト教と言っても様々な宗派があるので、マリアの立場や物語は一概に言えず難しいですね。

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    フラ・アンジェリコは「天使のような修道士」という意味で、あだ名なのです。
    信仰深い彼はまさに天使のようであったとか…。
    固定電話もスマホもない時代で、布教活動をしている十二使徒が全員集まってマリアの死を看取れたのは凄いことのように思えます。
    まさに神のお導きがあったのかもしれませんね。
    地上では十二使徒が見送り、天上では息子と天使と神が出迎える。
    マリアの死はまさに祝福された平和な死ですね。

  2. 季節風 より:

    こんばんは。
    「フラ・アンジェリコ」は美しい名前ですね。
    弟子たちとの別れを待ってくれている天国のキリスと天使。
    一方で現実的目線での室内のマリア様と弟子たちだけの別れの場面も好きです。息子の弟子たちが遠くから
    集まってくれたことはマリアも嬉しかったと思います。

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