隠者の絵画13点。俗世から離れ、洞窟や廃墟で祈りを捧げ瞑想を行う世捨て人の姿 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

隠者の絵画13点。俗世から離れ、洞窟や廃墟で祈りを捧げ瞑想を行う世捨て人の姿

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 隠者は世俗との関係を一切断って生活する人の事を指します。
 キリスト教で一番始めに隠者となった人物はテーベのパウロとされ、「初代隠者聖パウロ」と呼ばれています。使徒の聖パウロとは別の人物となります。キリスト教に根差した隠者たちは多くの場合、砂漠や森、洞窟、建物の中に住んでいました。そのような隠遁場所は「隠者の庵(いおり)」と呼ばれ、そこで祈りや懺悔を行って神への信仰を深めたり、神学を勉強して思想を深めたり、聖書の翻訳などを行っていました。
 修道院で飲食や会合して、付近のあばら家で最低限の暮らしをしていた隠者もいたそうですし、貴族の領地にある装飾用の建物に住んでいた隠者もいたそうです。隠者の知恵を求めて訪ねてくる来訪者は多くいたようで、隠居といえども厭世的な孤独とは無縁な人がほとんどだったようです。沢山弟子をとって大賑わいの隠者もいたとか。
 では、隠者に関する絵画13点をご覧ください。

 

「二コラ・プッサン作  1637-38年」
初代隠者である聖パウロ。彼はエジプトのテーベで生まれ、
ローマ皇帝のキリスト教迫害から逃れ、砂漠の洞穴で隠者と
しての生活を行いました。

「グエルチーノ作  1591-1666年」
裸同然の姿で神への祈りを捧げ続ける聖パウロ。
食事の心配はいりません。カラスが彼の元へ毎日パンを運んで
来てくれたそうです。カラスいい子ですね^^

「lorenzo garbieri 作  1580-1654年」
聖パウロが113歳になった時、一人の訪問客が訪れます。
彼は聖アントニウス(90歳)でした。聖アントニウスは修道生活の
父と呼ばれており、悪魔の誘惑を跳ね除けた聖人として有名です。

「ディエゴ・ベラスケス作  1599-1660年」
聖パウロと聖アントニウスの元へパンを届けるカラスさん。
カラスは内心で「えっ!なんか違う爺さんがいる!パン一個しか
ないんだけど!?」と焦ったのかも・・・しれませんw

「マッティア・プレティ作  1613-99年」
こちらも聖パウロの元へパンを届けるカラスの絵画。
右下をよーく見ると、聖アントニウスがさり気なくいます。

「ホセ・デ・リベーラ作  1591-1652年」
またまた聖パウロさんの作品。頭蓋骨を一心に見つめており、
命の儚さやこの世の無常さを感じているようですね。
隠者の傍にはしばしば頭蓋骨が描かれます。

「ヒエロニムス・ボス作  1495-1505年」
隠者三名を描いた三連祭壇画。左から聖アントニウス、
聖ヒエロニムス、聖アエギディウスです。アントニウスさんは
怪物さんに虐められているようですね^^;

「Jan Adriaensz van Staveren 作  1650-68年」
こちらは特定の名を持たない隠者さんが、廃墟にて祈っている
作品です。中世から近代にかけて、修道院が隠者をサポート
しました。食事や集会などは修道院で行い、後は静かな場所で
一人隠者として暮らすのです。

「ヘラルド・ドウ作  1664年」
十字架を手に持ち、神へ祈りを捧げる隠者。
机には砂時計が置かれ、人生は有限であると語っています。

「ヘラルト・ドウ作  1670年」
ヘラルドさん二枚目。6年後の作品。木が生える廃墟の中で
十字架を持つ隠者というテーマは同様ですが、本やランプ、
頭蓋骨など小物が増えていますね。

「フェデリコ・ベンコヴィク作  1667-1753年」
頭蓋骨を手に持ち、メメント・モリ(死を想え)について瞑想する
隠者。孤独での瞑想の時間は、自己や世界を深く考え、悟りを
開くのに重要となるのです。

「フランソワ・マリウス・グラネ作  1831年」
読書をする隠者という題名。かなり本から距離があるので、
もしかしたら老眼・・・なのかしら?
うたた寝しているわけじゃないよね?←失礼すぎるw

「カール・シュピッツヴェーク作  1808-85年」
この隠者さんの方が寝てましたw 居眠りする隠者という作品。
地平線が続く青い海。暖かい木漏れ日。そよそよとそよぐ風。
こんな素敵なところで読書していたら、誰だって眠くなりますね^^

 古代から現代に至るまで、隠者は「知恵を持ち、人々に忠告を与える賢者の老人」というイメージを持っています。聖パウロは(おそらく)壮年の時から隠者となっているのに、描かれる絵画は老人ばかり。若くして隠者になった者もいたと思われるのに、絵画は老人が殆どです。キリストの復活を見た聖女マグダラのマリアはその後、隠者となっていますが、隠者=若い女性というイメージはほぼありませんよね。
 それはやはり、隠者=悟りを開いた者というイメージがあるからではないでしょうか。タロットの愚者にもあるように、若者は向こう見ずで好奇心旺盛、どんな困難があろうか立ち向かうという「動」としてのイメージを持っています。対する老人は思慮深く慎重、家で思考するという「静」のイメージを持っています。その先入観はいつの時代に出来たかは分かりませんが、大昔の思想が今でも受け継がれていると思うと、なんだか素敵ですよね^^

→ 聖アントニウスの誘惑についての絵画を見たい方はこちら
→ 聖ヒエロニムスについての絵画を見たい方はこちら

 

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【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 電車で寝るより気持ちいいだろうな~様へ
    あわわ、自分で自分の映画を作ったわけではないんですね。
    画家で言えば、偉大な画家が絵画を描いている姿を想像して追随者の人が描いた絵画…って感じでしょうか。(また画家視点^^;)
    ダブルアンソニーさんw
    これも何かの縁あっての事なのかもしれませんね。

  2. 電車で寝るより気持ちいいだろうな〜 より:

    あ、『ヒッチコック』はヒッチコック作品ではないですよ。かの巨匠の映画製作を残されたエピソードを元に再現した劇映画、といったところでしょうか。ことときすでに、ヒッチコックは亡くなっています。
    ちなみに、アンソニー・ホプキンスという俳優さんがヒッチコックを演じてます。
    そして、『サイコ』の主演男優はアンソニー・パーキンス。ややこしい(笑)
    パーキンスを演じた俳優さんは忘れてしまいましたが、かなり特徴をとらえていて(はにかみ具合とか特に)感動しました。

  3. 管理人:扉園 より:

     >> 電車で寝るより気持ちいいだろうな~様へ
    こんばんは^^
    「居眠りする坊主」…。
    電車や講義の時に居眠りしていた私としては、親近感が沸く落書きですねw
    もしかしたら「監督から引退して隠居したものの、指示を仰ぎたい若手から原本が送られて来て、読んでいる内に居眠りしてしまったサスペンス映画の巨匠」……かもしれません。(題名が長すぎるw)
    自然溢れる場所で読書や日向ぼっこするのって憧れます。
    でも、蚊が襲ってこないか、日焼けはしないかなど、現実的な思考になってしまう私ですw
    そんな映画があるんですね。
    自分の映画製作を映画にしてしまうなんて、まるで絵画を描く自分を描く画家な感じのような…。

  4. 電車で寝るより気持ちいいだろうな〜 より:

    フラゴナールの『読書する女』を模写する過程で、『居眠りする坊主』というラクガキをしてしまった私ですw
    しかし、この隠者さん……『次回作の原作本を読んでいる最中に居眠りするサスペンス映画の巨匠』と改題したほうが受けるのではないか……。←ぇ
    居眠りは関係ないですが、ヒッチコック監督作品『サイコ』製作の舞台裏を描いた映画『ヒッチコック』を思い出してしまいましたw

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