旧約聖書の英雄サムソンの絵画12点。悪女デリラに騙され、力の源である髪を失う | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

旧約聖書の英雄サムソンの絵画12点。悪女デリラに騙され、力の源である髪を失う

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 サムソンは旧約聖書の「士師記」に登場する怪力の英雄です。
 ある日、イスラエルの民マノアの妻に神の御使いが現れ「これから貴女に特別な子が生まれるが、葡萄酒を飲まない、汚れた物を食べない、髪に剃刀を当てないという、三つの事を子に遵守させなさい」と言いました。こうして産まれたのがサムソンでした。彼は豪傑に成長し、ティムナに向かいました。途中、ライオンが現れますが瞬く間に倒してしまいます。彼は敵であるペリシテ人の館へ向かい、1000人を打ち殺します。
 やがて、サムソンはデリラという女性を愛すようになります。敵側はそれを知り、彼女にサムソンの力の秘密を探るようにけしかけます。彼は始めこそ話しませんでしたが、デリラがしつこく聞くと神の三つの約束を話してしまいます。デリラは敵側に密告し、彼が寝ている間に髪をすっかり剃り落としてしまいました。力を失ったサムソンは目を抉られ、牢で粉ひきをさせられました。
 ペリシテ人は異教の神殿へサムソンを連れだし、見世物にしました。神に祈ったサムソンは力を取り戻し、柱をへし折って神殿を倒壊させ、大勢のペリシテ人を道連れにしながら命を落としました。
 この物語も多くの画家の手によって描かれ、特にサムソンとデリラのシーンは人気がありました。波乱万丈な人生を歩んだサムソンの姿12点をご覧ください。

 

「ルカ・ジョルダーノ作  1695-96年」
勇ましくライオンを倒しているサムソン。
馬乗りになり、口を掴んで上下に引き裂こうとしています。

「Orazio Riminaldi 作  17世紀」
ペリシテ人1000人を殺しているサムソン。ロバの顎骨がその時の
武器だったとか。いくらなんでも超人すぎてベルセルク状態です。


「ジュリオ・チェーザレ・プロカッチーニ作    1625年」
ペリシテ人バトルパート2。人間が画面一杯にひしめき合っております。
中央の人物がサムソンでしょうか。しがみつかれまくっています。

「Pascal Blanchard 作   1886年」
妖艶な美女デリラにすっかり惚れ込んで、すやすやと眠っているサムソン。
美しい薔薇には棘がある。美女を簡単に信用しちゃいけませんよ。
デリラも悪女「ファム・ファタール」の一人と数えられます。

「Padovanino(Varotari Alessandro Leone) 作   17世紀」
ちょっとイケメンなサムソンですが、もうデリラの手に落ちています。
小姓の子がハサミを渡し、今にも髪をちょきっとしそうです。

「レンブラント・ファン・レイン作   1630年」
こちらもおじさんにハサミをもらっているデリラ。というか、デリラが
おばさんすぎやしませんか?サムソン、おば様趣味!?

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1609年」
サムソン絵画で有名な作品。デリラの膝の上ですやすやと子供の
ように眠っているサムソン、その頭には既に魔のハサミが・・・。

「アンソニー・ヴァン・ダイク作  17世紀」
彼はルーベンスのお弟子さんになります。丸刈りになってしまったサムソンが
デリラに助けを求めるような視線を送るものの、いってらっしゃいとばかり。
ペリシテ人たちにひっ捕らえられてしまいました。

「グエルチーノ(ジョヴァンニ・フランチェスコ・バルビエーリ)作  1619年」
無駄な抵抗を試みるサムソン。躍動感ある作品の中、
手で顔を押されている兵士の一人の表情が冷静で、個人的に気になる。

「ソロモン・ジョゼフ・ソロモン作   1887年」
ダブルソロモンで間違えた訳ではなく、本当にこういった名前のよう。
その後サムソンは目を潰され、牢屋で粉ひきの仕事をさせられます。

「ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ作   18世紀」
盲目になってペリシテ人の見世物になったサムソンは、
神殿内の柱を折って敵を巻き添えにして命を落とします。
最期の火事場の馬鹿力がよく表されている作品。

「Giovanni Benedetto Castiglione 作  17世紀」
神殿がガラガラと音を立てて、今にも崩壊してきそうです。
サムソンの赤い服と手前の少年の青い服の対比が目につきます。

 サムソンもキリストと同じく、神に約束された無原罪の御宿りとして生を受けたものの、その生き方は正反対と思えるものでした。キリストが静ならサムソンは動。前者は青で後者は赤のイメージがあります。
 豪傑として敵を1000人倒しても、結局美女に騙されてしまう。ユディトの話もそうでしたけれど、旧約聖書の男性は警戒心が薄いというか、心が純粋というか・・・。
 最期の雄姿は格好いいと思いますよ!

→ ユディトについて詳しく知りたい方はこちら

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