キリストの十字架降下の絵画13点。救世主の死に嘆き悲しむ二人のマリアと信者達 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

キリストの十字架降下の絵画13点。救世主の死に嘆き悲しむ二人のマリアと信者達

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 キリストの十字架降下は、磔刑されたキリストを降ろし、悲しんでいる主題の事を指します。
 アリマタヤの町にヨセフという人がいました。彼はキリストの遺体を引き取らせて欲しい、とローマ帝国の総督ピラトに頼んだのです。その他の正しい人達もキリストの為に駆けつけました。ヨセフがキリストを十字架から下ろすと、聖母マリアは我が子の身体を愛おしそうに抱きました。遺体には没薬と香料が塗られ、布に包まれて、ヨセフが自分用に作っていた墓に葬られました。その三日後に、キリストは復活を果たすのでした。
 この主題はキリストの磔刑に引き続き、画家に人気で多くの作品が残されています。十字架降下の絵画13点をご覧ください。

 

「中世の時祷書の挿絵より」
アリマタヤのヨセフが梯子を使い、キリストを十字架から降ろして
います。マリアは息子の手を取り、悲しんでいますね。右端には
さり気なく天使さんのお姿もみえます。

「ジョヴァンニ・ディ・パオロ作  1426年」
キリストの色が・・・。たとえ亡くなっているとしても、この色は・・・。
中世の作品は構図や遠近感を無視しており、しばしばサイズが
変な小人さんが出没する時があります。メインが見えなくなる事への
配慮なのでしょうかね?

「ロベルト・カンピン作  1448-65年」
三連祭壇画の中央には十字架降下が描かれ、両脇には二人の
罪人と祭壇画の依頼者らしき人物&守護聖人が描き込まれています。

「Master of the Saint Bartholomew Altarpiece 作  1500-5年」
装飾と十字架降下が一体化になったかのような美しい作品。
足元にある頭蓋骨はアダムの頭蓋骨を表しているようで、
メメント・モリ(死を想え)という意味ではなく、キリストがアダムとイブの
原罪を贖ったという意味が込められているようです。

「ラファエロ・サンツィオ作  1507年」
彼方にあるゴルゴダの丘には十字架が立っており、キリストは皆の
力によって墓まで運ばれて来たようです。画面中央にいるのが
マグダラのマリアであり、右端にいる青い衣服の女性が聖母マリア。
この二人は殆どの場合描き込まれております。

「ヤコポ・ダ・ポントルモ作  1494-1557年」
マニエリスムの画家らしく、身体をねじった複雑な姿でキリストを
担いでいます。構図や人体の向きなどが独特ですね。
キリストを持つ二人の視線が、画面外へ向いているのも意味ありげです。

「アーニョロ・ブロンズィーノ作  1540-45年
青の色彩が際立つ作品です。彼もマニエリスム期の作品で、天使や
人々が大変な格好をしていますね。それにしてもキリストを支える人
(ヨセフさん?)の首が折れてませんか・・・?

「カラヴァッジョ作  1602-3年」
バロックの巨匠カラヴァッジョは背景を黒にすることで、劇中の一コマ
のような作品を生み出しています。人体の表現、構成、色彩感覚
どれをとっても素晴らしい作品ですね。

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1612-14年」
ルーベンスの十字架降下といえば、フランダースの犬のネロを
思い出しますね。ネロが見たのは祭壇画で、この作品が中央部に
当たります。白と赤のコントラストが鮮やかで、臨場感が感じられます。

「フェデリコ・バロッチ作  1535-1612年」
服や髪のたなびき方から、かなりの風が吹いている感じを受けますね。
風の音や男性達の掛け声、女性達の悲鳴が聞こえてくるようです。

「シャルル・ルブラン作  1619-90年」
十字架降下的には珍しく、馬に乗ったピラトさんが登場しております。
上記の作品たちは手動でキリストを降ろしていましたが、この絵画
ではロープを使っているようですね。マリアさんは既に気絶状態。

「Jean-Baptiste Jouvenet 作   1697年」
足元では白い布がスタンバイされ、キリストは没薬や香料が塗られ、
布に包まれてお墓へと行ったのでした。この布は「聖骸布」と呼ばれ、
キリストの全身が浮かび上がったとされています。

「ニコラス・トゥルニエ作  17世紀」
布に包まれようとしているキリスト。暗闇の中から浮かび上がる人々は、
静謐な雰囲気を漂わせていますね。現代において「トリノの聖骸布」
と呼ばれる品は残っており、実際にキリストを包んだ布とされています。
真意の程は分かりませんが・・・。

 磔刑や十字架降下の絵画を見てみると、手のひらに釘が打たれているものばかりです。手のひらに釘を打って磔にすると、体重が支えきれずに指の間が裂けてしまうので、最近では手首に釘を打たれたのではないかと言われています。しかし十字架の足元をよーく見てみると、台座が付けられている絵画があります。(キリストの磔刑の記事を見てみてください)
 もし台座があるなら、手のひらに釘が打ちつけられていても矛盾はないことになります。色々と調べてみると、そもそもキリストは釘で打ちつけられたのではなく縄で縛られたのではないか、という説もあるようです。ローマ時代の磔刑は釘だけではなく、縄も用いられたそうです。
 今となっては真相は闇の中。どんな磔刑図でも間違いではなく、信仰のこもった素晴らしい作品だと思います。(無理にまとめましたw)

→ キリストの磔刑についての絵画を見たい方はこちら
→ キリストの復活についての絵画を見たい方はこちら
→ 聖ヴェロニカについての絵画を見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    「パトラッシュ…僕は疲れたよ。もう眠いんだ…」とネロがルーベンスの絵画の前で天使に連れられ、天へと昇っていく場面をやたら覚えています。
    後はほぼ覚えていない…。
    大工房を指揮して大量の作品を手掛け、構図製作と素早い作業、ボリューム感ある圧倒的肉体の質感を描くルーベンスの再来!とネロに対して言うのは、確かに敷居が高いかもしれません。
    というか、ネロがルーベンス風の油彩を描くのに違和感があるようなw
    題名が「フランダースの犬」なのであれですが、ネロの儚い穏やかな雰囲気だったら、イタリア画家フラ・アンジェリコの作風の方が似合うような気がします。
    もしネロが大人になれたとしたらメキメキ頭角を現し、あんな凄いボリューミーな肉体を描くのかしら…。
    うーん、それはそれで怖いような^^;

  2. 季節風 より:

    十字架降下の場面は悲痛だけどホッとします。ヨハネさんはさすがに愛弟子です。
    フランダースの犬の日本のアニメ版では最後に近い場面で絵画界の偉いさんがやってきて「ネロはルーベンスの再来だから無料で絵の学校に行けるようになった」と言ったので
    、ネロに冷たかった人達が反省してネロを探すとこ覚えがあります。でも言ったら悪いですが「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1612-14年」を観たら・・・ネロにそんな途方もない重圧をかけたらそれもそれで可哀想だったのではと思います。

  3. 管理人:扉園 より:

     >> 僕はなんだか疲れたよ…様へ
    こんばんは^^
    十字架降下の作品を検索している際、ルーベンスの作品が沢山出てきて、こんなに描いていたんだ~と感心しました。
    ルーベンスは本当に多産の画家ですよね。
    当時の教会では、特別な日にしか祭壇画は公開されていないようで、ネロはクリスマスの日にルーベンスの絵画を観ています。(日本で言うと秘仏みたいな感じでしょうか)
    貧しくて身寄りもなかったネロにとって、アントワープ大聖堂は最期のチャンスだったのかなぁと思います。
    ルーベンスの十字架降下の作品が教会のあちこちにあるのに、ネロが観られない環境にあったのは皮肉なことだなぁ…と感じてしまいます(T_T)
    いやいや、結局は絵画が観れたから良かったよね。ネロ!
    なんだか眠いんだよ…パトラッシュ…。

  4. 僕はなんだか疲れたよ… より:

    ルーベンスの十字架降下…
    ……………………あんなに見たがってたネロに、今さらこんなこと言うのは酷やと思いますが………
    十字架降下はルーベンスが好んで描いた主題だそうで、実はあの街のあちこちの教会にルーベンスの十字架降下が飾られていんだそうです………
    つまり、あの教会だけじゃなかったんだよ………どこでも観れたんだよ………
    いやいや、一番観たかった絵が観たいよね!!観られて良かったよね。ネロ!!

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