エクソシスト(悪魔祓い)の絵画11選。映画にもなった、悪魔に憑かれた人を助ける者 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

エクソシスト(悪魔祓い)の絵画11選。映画にもなった、悪魔に憑かれた人を助ける者

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 エクソシストはカトリック派のキリスト教の用語で、高位な存在の力を借り、悪霊や悪魔を人体から追い出す者のことを指します。
 「悪魔祓い」という行為やそれを行う者は古代より世界中で行われてきましたが、250年頃のローマ時代におけるキリスト教の初期段階からエクソシストという役職はみられました。カトリック教において司祭がエクソシストに任命されることが多く、厳密に決められた方法にのっとって、悪魔祓いの儀式は行われます。中世ルネサンスは迷信や悪魔(悪霊)が深く信じられていた時代で、疫病や戦争で死亡率も高かったことから、精神を錯乱させてしまう者が多数いたと思います。エクソシストたちはそういった者の心を癒す傍ら、神の御力を借りて身体に宿った悪魔を退治していたのです。
 悪魔祓いを行うエクソシストの絵画、11点をご覧ください。

 

「フランスの写本挿絵  1220-70年」
悪魔に憑りつかれた人間は狂気に陥ったり、凶行に及んだりします。
そういった者を助けるのがエクソシストです。この中世挿絵では
大量の悪魔が人間にくっつきまくっています。

「ドイツと思われる写本の挿絵  12世紀」
聖者が女性の手を握り、祈りを唱えると口から悪魔が出ていっています。

「場所不明の写本挿絵  1333-40年」
内容はシリアスなのだと思いますが、中世の作品はどうしても面白く
見えてしまいます。一番右の180度首が曲がった感じが個人的にツボ。

「フランスの写本挿絵   1412-16年」
宗教の始祖キリストも悪魔祓いを行っています。
浮浪者のように見える者から、悪魔が逃げて行っています。

「作者不明  16世紀」
聖ベネディクトは若い頃に苦行を行い、50歳のころに異教徒を改宗させて
教会を建てました。あらゆる誘惑に打ち勝ったベネディクトの姿が刻まれた
メダイは、悪魔祓いに効力があるとされ、後年重宝されました。
絵画は悪魔の誘惑を耐え、苦行を行っている場面だと思います。

「スピネッロ・アレティーノ作  1350-1410年」
こちらも聖ベネディクトの作品。修道士たちは悪魔を捕らえ、退治している
ように見えます。悪魔は人に憑りついていたというより、教会で悪事を
働いていたように見えますが、そういった悪魔を追い払う儀式も
エクソシズムの中に入ります。

「場所、年代不明の写本挿絵」
女性から出た悪魔は、顔を踏んで逃げ出そうとしています。右側には
王のような人物が見えますので、被害者は王族か貴族なのでしょうか。

「作者不詳  16世紀」
エクソシストは神への御言葉、十字架、聖水、聖書、聖人の姿が
刻まれたアイテムなど、あらゆるものを駆使して悪魔を払います。
この絵画では大変な事件があったようで、左側では男女と犬が
倒れています。その傍らには斧が・・・。

「作者、年代不明  16‐17世紀?」
ローマ教皇ピウス五世が悪魔祓いを行っている場面。
女性は大きく口を開け、半狂乱に陥っています。

Foto: Fr. Lawrence, O.P.


「フランシスコ・デ・ゴヤ作  1746‐1828年」
暗黒の絵画を描くゴヤも悪魔祓いを描いています。聖人の十字架から
放たれた光は被害者に注がれていますが、怪物たちは一向に逃げる
気配はなく、相手は強敵ということがうかがい知れます。

「C. Penoso 作 1878年」
エクソシストが聖書を唱えると、被害者は苦しみだします。悪魔は
不可視のものなので、被害者から発せられる言葉と行動で判断する
しかありません。右で頭を抱える男性が事態の深刻さを物語っています。

 エクソシストというと有名映画をどうしても思い出し、凶悪な悪魔との激しい戦いをイメージしてしまいます。現在でも、オカルトチックなテレビ番組で悪魔祓いが取り上げられている時があります。
 しかし、本来のエクソシストは悪魔祓い兼セラピストといった感じで、心に闇を抱いてしまった人や重病で苦しんでいる人の悩みを親身に聞き、傍に寄り添ってあげるという役目を担っています。確かにエクソシスト=悪魔祓いという形式も間違いではありませんが、それよりも彼等は信心深い神父であり、苦しみ悩んでいる人々の心の拠り所なのです。有名なエクソシストであるカンディド神父は「ここへ来られる方の97%は病気なので、話を聞いて医者へ行っていただいています」と言っています。残りの3%は・・・やっぱり悪魔がいるんですかね。

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    やはり悩みがあって心が弱って来ると、幻覚や幻聴が起こることもあるので、「悪魔に憑かれているのかも」と心配してエクソシストに相談してしまう方もいるのでしょうね。
    教会は罪や悩みを打ち明けて心を安らかにする場でもあるので、悪魔のせいではないと分かっていたとしても、神父さんに話を聞いて欲しくて行った方もいるのかもしれません。
    エクソシスト=オカルトみたいな印象を抱きがちですが、神父さんは親身になって適切な判断を下し、人々を守っておりますね。

  2. 季節風 より:

    カンディド神父「ここへ来られる方の97%は病気なので、話を聞いて医者へ行っていただいています」という言葉はそれこそ怖いです。その97パーセントの人々の病名を神父はおっしゃってなくても、お察しということでしょう。

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