聖ステファノは新約聖書に登場する聖人です。キリスト教徒で最初に殉教した者と考えられています。
キリストが昇天して数年が経った頃、ギリシャ語を話すユダヤ人とヘブライ語を話すユダヤ人の間でいさかいが起きました。ギリシャ語を話す者は、教会からの配当が充分に受けられないから不平等だというのです。そこで、教会側はキリスト教の代表者である12使徒以外に、7名を選抜して配当を補佐する役目を与えました。その7名の中にステファノは入っていました。
しかし、ある日ステファノはキリスト教を憎んでいる人々に「あいつは神殿を破壊しようとしている」と濡れ衣を着せられてしまいました。裁判に掛けられたステファノは人々に対して「ユダヤ人は今も昔も大きな過ちを犯している。救世主の命を奪い、神を裏切っている」とはっきりと述べました。それに対してユダヤ人たちは大いに怒り、彼を石打ちの刑で殺してしまいました。ステファノは「罪を彼等に負わせないでください」と言いながら殉教したと伝えられています。
聖ステファノの絵画14点をご覧ください。
「作者不詳 中世挿絵」
人々がこぶしくらいの石を全力で投げ付けています。服の裾で石を
いっぱい集めていますね。背後の三名の男性が気になります・・・。
ステファノを応援する側でしょうか?
「作者不詳 中世挿絵(?)」
石打ちに賛同した中に、後に聖使徒パウロとなるサウロも
含まれていました。パウロはキリスト教を迫害する者でしたが、
改心して宗教発展の基礎を作ったと言われています。
「ジョルジョ・ヴァザーリ作 1560年」
中世のように小石を投げ付けるのではなく、男たちが巨大な石を
振り下ろそうとしています。しかし、ステファノは微笑んでいて、自らの
運命を享受しているかのようです。男の肉体がマニエリスムを思わせます。
「ジョルジョ・ヴァザーリ作 1569‐71年」
ヴァザーリ二作品目。こちらのステファノは迎えに来たキリストと神を
見上げています。二枚とも右隅の男性が意味ありげにステファノを
指さしているのが気になります。読者の方によると、皆の衣を
預かるサウロであるそう。確かに足元に布が置いてありますね。
「ピエトロ・ダ・コルトーナ作 1596-1669年」
こちらのステファノはもう殴られた後のようで、こめかみから血を流しています。
天使が殉教の象徴である棕櫚(シュロ)と勝利の象徴である月桂樹を
授けています。ステファノの名前はギリシャ語で「冠」という意味があります。
「ヤコポ・バッサーノ&ティツィアーノ・ヴェッチェリオ作 16世紀」
石だらけの中、聖ステファノは飛んでくる凶器に対して目をつむっています。
背後には群衆がひしめき合い、天上では三位一体状態で神とキリストと
天使(ミカエル?)が迎えに来ています。
「ピーテル・パウル・ルーベンス作 1616‐17年」
ムキムキの男がキックしながら岩を打ちつけようとしています。中に
黒人の方もいます。顔色の悪いステファノは冠を授けようとする
天使達を見上げています。
「Giacomo Cavedoni 作 1577‐1660年」
殉教して天へと昇っていく聖ステファノ。石は彼のアトリビュートとなり、
聖ステファノということを示すアイテムとなります。
→ アトリビュートについて知りたい方はこちら
「フランチェスコ・フランチャ作 1575年」
手を合わせて祈っている者の足元には石がごろごろ。
この石があるから「この者は聖ステファノだな」という事が分かるのです。
「ジャン・フーケ作 1454年」
聖ステファノが持つ聖書の上に、立派な鉱石のような石が置かれています。
手前の人は画家のパトロンである Etienne Chevalier さん。
彼の守護聖人がステファノなのでしょう。守ってくれている感満載です。
「ルカ・シニョレッリ作 1445‐1523年」
石が当たって流血した状態で、聖人画となっています。
彼の胸の刺繍の絵をよく見ると、石で人を殴ろうとしているシーンだと
いう事が分かります。殉教場面が描かれているのでしょうか。
「ジョット・ディ・ボンドーネ作 1320-25年」
頭の上に二つの・・・・・・。石?たんこぶ?
「カルロ・クリヴェッリ作 1476年」
頭と肩の上に・・・三つの・・・石?
聖ステファノや背景の描写は美しいのですが、石がおまんじゅうに
見えてしまう悲劇。特に一番上が色が茶色で、なおさら・・・。
聖ステファノの殉教の絵画は劇的で、勢いのある作品が多かったのですが、肖像画(聖人画)となると画家によって凶器の石が足元だったり、膝の上だったり、聖書の上だったり、頭の上だったりと様々で興味深いです。キリスト教最初の殉教者で人気のある聖人なのに、頭に丸い石をくっつけても大丈夫なんでしょうか。ヴェローナの聖ペテロも凶器の鉈を頭にぐさっと刺した状態で描かれるので、凶器を頭にくっつけちゃう発想は凄いなぁと思います。その方がダイレクトに伝わるんですかね・・・。
【 コメント 】
>> 季節風様へ
こんばんは^^
石を持っていたり、足元に転がっていたりするならいいのですが、接着剤で頭にくっつけたかのようになっているのは可哀想ですよね^^;
中世の宗教美術の起こりが、文盲の民衆の方にも信仰が分かりやすいよう挿絵を描いたとの事なので、見栄えよりも分かりやすさを重視した結果なのかもしれません。
シニョレッリさんの作品は、石が当たった直後に時間が止まったかのような、攻撃の激しさの中の静寂感というような神秘的な雰囲気を感じますね。
若いステファノを天井から救いに来る場面がどれも感動的です。名前が冠と言う意味なのも美男だから似合います。聖人になってからの肖像画が石が頭に付けられているのは分かりやすいけど気の毒な気がします。「ルカ・シニョレッリ作 1445‐1523年」は死んだときのままみたいな迫力があります。
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは。
教えていただきありがとうございます!
彼はサウロだったんですね。
外衣を預かる役をしていたとは知りませんでした。確かに布が足元に置いてありますね。
記事を変更いたしました^^
指さしている若者は、みんなの外套を預かっている改宗前のサウロでしょう。
https://wol.jw.org/ja/wol/b/r7/lp-j/Rbi8/J/1985/44/7#s=58&study=discover