ペトロの否認の絵画13点。鶏の鳴く前に私はキリストの仲間ではないと三度宣言する | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ペトロの否認の絵画13点。鶏の鳴く前に私はキリストの仲間ではないと三度宣言する

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 ペトロ(ペテロ)の否認は、キリストがユダヤ側に捕まった際に、女中の「貴方も仲間だろう」という言葉に対し、ペトロが三度「違う」と宣言してしまった事件のことです。
 最後の晩餐の時、キリストは十二使徒のペトロに対して「貴方は鶏が鳴く前に、三度私の事を知らないというだろう」と告げ、ペトロは「そんな事はありえません!」と返します。その翌日、裏切者のユダが銀貨30枚でユダヤの祭司長たちにキリストを売り渡してしまいます。ペトロはキリストを守ろうと応戦しますが失敗。使徒たちは事件に怯え、その場から逃げ去ってしまいました。
 その後、責任を感じたペトロはキリストが捕らえられている屋敷に忍び込み、様子をうかがおうとしました。しかし女中の一人に見つかり、「あなた、イエスと一緒にいたでしょ」と言われるとペトロは「違う。分からない」と否定します。ペトロが三回否定した時、甲高い声で鶏が鳴いたのです。かつてキリストに言われたことを思い出し、「その通りだった!」とペトロは号泣するのでした。
 否認のシーンはバロック期の画家達に人気があり、暗闇の中で「違う」というペトロが沢山存在します。では、ペトロの否認の絵画13点をご覧ください。

 

「ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ作 1308-11年」
中世時代のペトロの否認。人だかりに混じるペトロに、
「あんたナザレのイエスと一緒にいるのを見たよ」と言う女中の
言葉を否定しています。「はい」と言ったら周囲からリンチされ
殺されるかもしれないのだから、否定したくなるのも頷けます・・・。

「カラヴァッジョ作  1610年」
女中が「この人グルよ」と衛兵に告げ、ペトロは必死に弁解を
しているようです。この作品は画家が亡くなる年に描かれました。
この作品が火付け役となった為か、このテーマはバロック期の
画家に数多く描かれることとなります。

「ヘラルト・ファン・ホントホルスト作  1618-20年」
テネブリスム(暗黒主義)の雰囲気全開の、暗闇に浮かび上がる
人々。ぼんやりと浮かび上がる女中やペトロの姿が、緊張感
溢れる劇的な空気を生み出しています。「わ、私は知らない」と
言う彼の心臓の激しい鼓動が聞こえてきそうです。

「ヘラルト・ファン・ホントホルスト作  1622-24年」
ホントホルストさん二枚目。最初の作品よりも人物の構成が
カラヴァッジョに似せている風に見えます。ぐわしっと襟首を
女中に捕まれたペトロの心境やいかに・・・。

「Gerard Seghers 1623年」
暗闇の中カードゲームをしている人々の輪にさり気なく入っていた
ペトロ。舞台がユダヤの屋敷ではなく、当時のフランドルの酒場と
いった風情ですね。「違う!」と必死に弁護中です。

「Gerard Seghers の追随者作  1628年」
この作品のペトロは心を一旦落ち着かせ、「わ、私は違いますよ・・・」
と平静を装った風に答えているようです。女中が直に蝋燭を
持っているような。熱くないのかな?(他の作品もそうしていました)

「ニコラス・トゥルニエ作  1625年」
サイコロゲームに興じている人々に混じるペトロ。これはもう聖書の
純粋な物語というよりも、「わ、私は博打に興味はない!」と
言いつつも気になるお爺さんという、皮肉が含まれているような
いないような。負の誘惑を断ち切るのは容易ではありませんね・・・。(違

「Theodoor Rombouts 作  1597-1637年」
またもやカードゲームの場に混じるペトロさん。「私は知りません!
違いますって!」と少し開き直ってしまっているかのような・・・。

「アダム・デ・コスター作  1586-1643年」
ペトロに向けた槍が鋭すぎる作品。
手を掴む衛兵も剣を握っており、抜刀する気満々です。怖い。

「レンブラント・ファン・レイン作  1660年」
レンブラントもこのテーマを描いています。白い衣をまとったペトロは
諭すように「私は本当に知らないんだ。信じてくれ」と言っている
ようですね。画家によってペトロや周囲の対応も様々です。

「カレル・デュジャルダン作  1622-78年」
テネブリスムではなく、オランダ黄金時代の息吹を感じさせる、
色彩豊かな作品。女中の鋭い目力に負けてしまわないよう、
ペトロも懸命に目力で応戦しています。

「Nikolaas Verkolje とNikolaus Knüpfer の追随者作 18世紀頃」
二人の作者が描いた作品。生きた時代が20年ほど違うので、
加筆されたものなのかなぁと思います。ユダヤの宮殿のような
舞台で、女中がペトロを問い詰めています。その様子を衛兵達は
楽しそうに眺めていますね。

「Jan van der Venne 作  1631-51年」
キリストの仲間である事を三度否認してしまったペトロは、「先生の
予言の通りになってしまった・・・!」と号泣します。否認の後に
鶏が鳴いたので、鶏がペトロのアトリビュートとなっています。
(天国の鍵を持つという逸話がある為、鍵もアトリビュートです)

 記事に紹介する絵画を検索している時、ぱっと見て「いいな。掲載したいな」と思った絵画の作者や年号を調べているのですが、今回は見事に真っ暗い画面ばかりの作品となってしまいましたね^^;
 他の時代のペテロの否認もあったと思われますが、目立つ作品はバロック期ばかりのものでした。それはこの主題がバロックで流行していたのだと考えても差し支えがないと思います。カラヴァッジョの作品に影響されたのもあると思いますが、現代の芸術が時事に関連した作品の方が取り立たされやすい事を踏まえると、ペトロの否認の物語に通ずるような事件が頻繁に起こっていたのかもしれませんね。
 否認したい事件とはいかなるものだったのでしょうか。って、当時の西洋では色々ありそうですね・・・^^;

→ テネブリスム(暗黒主義)についての絵画を見たい方はこちら
→ アトリビュートについての絵画を見たい方はこちら
→ ユダの接吻についての絵画を見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    ありがとうございます!!

  2. 美術を愛する人 より:

    おもしろい!!!

  3. 管理人:扉園 より:

    >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    ファンになってくださりありがとうございます!
    様々なテーマの作品をご紹介できるよう、これからも頑張ります。
    「やってしまった…」と後悔してさめざめ泣いている場面は、やはり心を打ちますよね。気にしないでおじいちゃん!と励ましてあげたくなります。
    ロンギヌスの槍はまだですね。
    この槍はキリストが磔刑された後、生死を確認する為にローマ兵のロンギヌスが脇腹を刺したとされている槍で、大切な聖遺物の一つとなっています。
    ロンギヌスは後に改心し聖人になっています。
    だからこそこの槍を模して犯行に及んだとしたら、悲しい事件ですよね…。
    ロンギヌスが槍でキリストを刺す作品、彼がアトリビュートとして槍を持つ作品がありますので、特集を作らせていただきますね。
    お時間かかりますので、のんびりとお待ちください^^

  4. 季節風 より:

    偶然こちらのサイトを見つけて以来の大ファンです。「ロンギヌスの槍」は既出でしょうか。もしそうでないなら取り上げていただきたいです。いまネットで騒がれていて初めて知った言葉ですがキリスト教に深い関係があるそうですね。
    最後の絵が一番ペトロが可哀想になってきます。鍵と鶏が淋しくて効果的。

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