キリスト「悲しみの人」の絵画14選。罪を背負って苦しみ血を流した救世主の肖像画 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

キリスト「悲しみの人」の絵画14選。罪を背負って苦しみ血を流した救世主の肖像画

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 「悲しみの人(Man of Sorrows)」はキリストを表現する作品の中において、苦しみ悲しんでいるキリストの肖像的な宗教画のことを指します。基本、胸の傷と手の釘の傷を見せた姿で描かれ、時には茨冠を被ったり、十字架や棺桶、拷問具などがあったり、天使が共に描かれたりします。悲しみの人の作品の萌芽は8世紀頃のビザンチンのモザイク画より始まったとされ、13世紀頃に西洋に普及し、特にフランドル地方に多く見られました。これらの作品を観る事で、敬虔な信者の方はキリストに深い敬愛と祈りのイメージを覚えるのです。
 神秘的であり酷くもある「悲しみの人」の絵画14点をご覧ください。

 

「スペイン出身の画家作  15世紀頃」
磔刑する時に用いられた十字架、手と胸の傷、入れられた棺桶を
キリストの象徴として描き込んでいます。キリストは目から血を流し
ながら、鑑賞者に訴えかけています。

「アルザス地方の画家作  15世紀頃」
悲し気に座り込むキリストの足元には髑髏があり、背後には拷問や
磔刑で使われた道具が描かれています。フランス、イタリア地方では
目を伏せたキリストの姿が比較的多いです。

「Michele Giambono 作 1430年」
キリストは静かに目を閉じ、私達に自らの傷跡を見せています。
背後にはミニチュアな信仰者(?)さんがいます。額縁の装飾がとても
きめ細やかで美しいですね。

「フレマールの親方の弟子(?)  1430年」
キリストの苦難に対し、天使二人が非常に悲しんでいます。
あくまでも図像や象徴を大切にしている為、遠近感や配置などは
重視していないことが感じられます。

「ルーカス・クラナッハ(父)作  1515年」
一方、ドイツやフランドル地方で描かれたキリストは鑑賞者に語りかける
ように前を見据えているものが多いです。クラナッハ画のキリストは
じっとこちらを凝視しています。少し身体がぷにぷにに見えるような・・・。

「ルーカス・クラナッハ作  1472‐1553年」
拷問具を持ち、傷だらけの全身を見せて曇った目で
こちらを見るキリスト。信仰者の方はこの絵画を毎日眺め、
信仰心や祈りを深めていたことでしょう。
Lucas Cranach the elder

「アルブレヒト・デューラー作  1493年」
デューラーの悲しみの人は洞窟のようで、まるで棺桶の中である
かのような構成になっています。キリストは悲しげというより、孤独で
寂しげのように感じます。金色の背景は鳥や文様が描かれています。

「ディルク・ボウツの追随者作  15世紀」
ボウツは絵画で初めて頭に茨冠を描いた画家とされています。ボウツの
影響は国じゅうに広まり、彼の作品とよく似たものが描かれました。
フランドル周辺では肖像画的なタイプも好まれて作られました。

「ディルク・ボウツの追随者作   1460–1549年」
目を充血させ、頭から血を流しながら涙を流すキリスト。茨冠の質感も
痛々しくてリアルです。手の描写もとても巧みなのですが、どうして
こんなに可愛らしいサイズの手になってしまったのでしょう・・・。

「ヤン・モスタールト作  1475-1555年」
縛られた手を交差させ、拷問具を持って涙を流すキリスト。作者によって
茨冠の描き方が違うので興味深いです。この作者の茨冠は編み込まれ、
葉が付いています。磔刑前という設定なのか、手の傷跡がありませんね。

「ヤン・モスタールト作  1475-1555年」
同じ作者ですが、作品がレベルアップしているのが分かります。首元には
揶揄する言葉が書かれ、拷問具はもっと痛そうになりました。なんだか
現代の作と言っても通じそうな感じがします。背景の赤と黒のコントラストが
際立ち、個人的に好きな作品です。

「Colijn de Coter 作  1500年」
この画家の茨冠は葉っぱが立っています。状況としてはモスタールトの
絵と同じでしょうか。背景のカーテンと窓外の建物の描写が緻密です。
画家が奥行き感を表現したかったことが伝わります。

「ドメニコ・ギルランダイオ作  1490年」
この画家はキリストを血まみれにするのには抵抗があったのでしょうか。
他の作品に比べ、過度な表現を押さえてとても綺麗に「悲しみの人」を
描いています。巻き毛の髪がさらさらロングです。

「ジョアン・ガスコ作   1515-25年」
迫真性を出す為、この画家は過度にやってしまいましたね。
真っ赤に充血した目、色の悪い唇が恐いです・・・。首の傷跡も
ひっかき傷というより、強くこすられたような感じでより一層痛そうです。

 中世・ルネサンス時代の主流は宗教画で、本格的に風俗画が出てきたのは16世紀、風景画が出てたのは17世紀のことです。画家は仕事として絵筆を走らせ、依頼された聖画を描きました。王族や貴族の住まいに聖画を置くのは当然なので、その分注文が舞い込むことになります。「悲しみの人」はキリスト像において人気のある主題で、非常にたくさんの作品が残っております。
 イエス・キリストは絵画史上、最も多く描かれた人物といっても過言ではないように感じます。

 

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