死の天使は死に瀕した人々の前に現われ、魂を天へ導く役目を担った存在です。
死神とよく似た存在で、両者は同一視されている部分もありますが、死神は死を擬人化したもので、死の天使は神の御使いとしての魂の導き手です。天使にはそういった側面もあり、有名な天使のミカエルやガブリエルも死の天使としての役割を担っています。死の天使は19世紀のラファエル前派、フランス絵画あたりでよく描かれました。美しい作品9点を見ていきましょう。
「イーヴリン・ド・モーガン作 1881年」
ラファエル前派の巨匠が描いた、有名な死の天使。
黒い翼と鎌を持った天使が、穏やかに迎えに来ました。
「オラース・ヴェルネ作 1851年」
様相の見えない黒い天使が女性を迎えに来ましたが、女性は天を
指して満足そう。天使が聖なる存在ということが伺えます。
「ウィリアム・アドルフ・ブグロー作 19世紀」
亡くなった女性を二人の天使が大事そうに運んでいます。
こぼれ落ちて行く花は、生命の損失を象徴しているのでしょうか。
「ウィリアム・アドルフ・ブグロー作 19世紀」
びゅーんと躍動感あふれる作品。白布で包み、上記の女性のように
天へ運んでゆくのでしょう。
「ジョージ・フレデリック・ワッツ作 1870年」
老いも若きも騎士も女性も全て、死の天使の懐に委ねられています。
「ジョージ・フレデリック・ワッツ作 19世紀」
亡くなった赤子を黒い翼で覆う天使の顔は、どこか悲しそうです。
「Marianne Stokes作 19世紀後半~20世紀前半」
いかめしい天使がカンテラを持ち、付いてくるよう命じています。
少女は怯えて自らの死を悟っています。
「エリュー・ヴェッダー作 1885年から1900年頃」
東洋系の天使が死の盃によって女性を死へ招いています。
作者が東洋の作品を好んでいた為、エキゾチックな天使に。
「イーヴリン・ド・モーガン作 1890年」
モーガンで始まりモーガンで終わる。亡くなった人の魂を、死の天使は
大事そうに抱え、導こうとしています。
象徴的に見れば、死神は中世ルネサンスの残酷な死、死の天使は近代の穏やかな死(戦争を除く)をイメージしているように思えます。中世ルネサンスではペストや戦争が横行し、死者が大量に出ていました。その為、死は無慈悲で小麦の穂のように乱暴に命を刈っていく者として、死の擬人化としての死神が生まれました。死の天使の概念が生まれた時代は判然としませんが、死が人にとって無慈悲でも穏やかなもの、家族に看取られて悲しむことができる死として認識した時に、死の天使が生まれたのではないでしょうか。19世紀に作品が集中しているのも、なんとなく頷けます。
【 コメント 】
最後の『死の天使』は、第一次世界大戦で亡くなった青年兵士たちを悼んで描かれた作品で、背景の警告は塹壕を表しているとされています。赤黒い谷底に無数の青年の遺体が折り重なっているのは、西部戦線などの凄惨な戦場の象徴なのでしょう。
>> 季節風様へ
こんばんは^^
若く元気そうな少女でも突然死は訪れる。
お迎えがいつ来るのかは誰も予期できないし、逃れられない。
せめて恐怖の死ではなく、お迎えの死が天使で、天上へと召されていって欲しいという願いが込められているようにも感じますね。
モーガンの最初の作品とMarianne Stokes作の少女は
元気そうですがお迎えが来てます。逃げてほしいです。
ですが美形で優しそうな死の天使が多くて安堵します。
最後のモーガンの天使さんは毎日忙しそうです。