十二使徒 聖アンデレの絵画13点。布教に励み、X字型の十字架に架けられた聖人 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

十二使徒 聖アンデレの絵画13点。布教に励み、X字型の十字架に架けられた聖人

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 聖アンデレは新約聖書に登場し、十二使徒のうちの一人です。
 「マルコによる福音書」によると、ガラリヤで兄弟のペトロ、ヨハネとヤコブと共に漁をしていたところ、キリストが現れて教えを説いた途端に、不漁続きだった網に大量の魚がかかりました。彼等が驚いてひれ伏すと、キリストは「魚じゃなくて人を採る漁師になろう。ついて来なさい!」と声をかけ、四人は弟子となったそうです。また、わずかな食糧を持ってきた少年をアンデレが連れて来た際、キリストが奇跡を起こし、その少しの量で5000人分もの飢えた信徒のお腹を満たすことができました。

 キリストの昇天後、アンデレは黒海沿岸あたりで積極的に布教を行っておりましたが、ギリシャでローマ総督アイゲアテスに捕まって投獄され、処刑されることになりました。十字架の刑となった時、アンデレは「イエス様と同じでは恐れ多いので、斜めにしてください」と願い出た為、X字型の十字架に磔にされて殉教したとされています。十字架に磔にされて息絶える二日間の間に、二万人もの人に信仰を説いたという伝説もあります。
 他の使徒より影は薄いけれど、真面目に頑張る聖アンデレの絵画13点をご覧ください。

 

「ルカ・ジョルダーノ作  1632–1705年」
兄弟ペトロと一緒にガラリヤで漁に励んでいたアンデレ。
ある日キリストが現れ、「人を採る漁師にならないかい?
私について来なさい」とスカウトします。

「カラヴァッジョ作  1571-1610年」
湖も船も魚もなく、暗い背景でキリストが「来なよ」と誘っています。
(最初キリストが女性に見えました・・・^^;)
この作品、模造品だと思われて雑にされていたところ、2006年に
本物だと分かり、100億円以上の価値があるとされたそうです。

「アルトゥス・ウォルフォルト作  1596-1641年」
聖書と思われる本を熟読しているアンデレさん。
兄弟や他の十二使徒の個性に埋もれて裏方に回る中、
静かに真面目に布教に取り組んでいます。

「カルロ・ドルチ & Pierre Castoni 作  17-18世紀」
彼の一番の見せ場(?)は、何と言ってもX字型の十字架に磔に
される場面。アンデレの作品のほとんどはこのシーンです。
キリストと同じ形では恐れ多いから、斜めにしてくれと願い出る
謙虚さは凄いですね。

「グレゴリオ・デ・フェラーリ作  1647-1726年」
X字型十字架にしがみ付いているアンデレの元に現れる天使。
手には殉教の象徴である棕櫚、勝利の象徴である花輪を持って
います。足元には彼の教えを聞いた二万人の人々がいるようです。

「シャルル・ルブラン作 1646-47年」
頭上にいるのはローマ総督アイゲアテスかな?アンデレは総督の
妻の不治の病を治し、妻はキリスト教に改宗したものの、夫の
権利を認めないようになった為、怒った総督がアンデレを処刑
することにしたそうです。これは総督の逆恨みですな・・・。

「マッティア・プレティ作  1613-99年」
磔にされながら二万人に教えを説いているアンデレに、
天から沢山お迎えが来たようです。

「バルトロメ・エステバン・ムリーリョ作  1617-82年」
こちらも多くの民衆が見守る中、アンデレの元に天使さんが来ました。

「Juan Correa de Vivar 作  1540–45年」
老人の姿で描かれるアンデレが多い中、こちらはキリストを
もろに意識した姿で描かれていますね。この絵画を彼が見たら、
「い、イエス様と似たお顔だと、恐れ多いから私をヨボヨボの
老人にしてください!」と言うのかな・・・。謙虚なお方です。

「カルロ・クリヴェッリ作  1476年」
聖アンデレのアトリビュートは勿論X字型の十字架。これを持って
いる聖人がいたら、かなりの確率で彼だと思います。
肩に担いで読書中ですね。

「エル・グレコ作  1541-1614年」
こちらもX字型十字架を持ち、祈りを捧げているアンデレ。
石やのこぎり、刃物、やっとこ、車輪など凄まじい殉教のされ方をして、
それがアトリビュートとなっている聖人がいる中、アンデレは
キリストに近い殉教をしているのだから幸せな方なのかしら・・・?

「アードリアン・イーゼンブラント作  1490-1551年」
大天使ミカエル、聖アンデレ、アッシジの聖フランチェスコの
三名が前に、背景にはキリストの磔刑が描かれています。
「イエス様より前なんて、恐れ多い!背景の一部で結構です!」
と遠慮するのかしら・・・。←また


「ミゲル・バローゾ作  1538-90年」
天を指さして静かにこちらを見据えるアンデレ。兄弟のペトロは
キリストの捕縛の際に敵の耳を切り落としたり、鶏の鳴く前に
三度「違う」と否認したり、動きと感情の激しい人ですが、
アンデレは真面目で控え目で、謙虚な人なのだなと感じました。

 X字型の十字架の事を「聖アンデレ十字」とも呼ぶそうで、スコットランドの国旗のX印は聖アンデレが由来しているそうです。スコットランドの守護聖人はもちろん聖アンデレ。また、ロシアのピョートル大帝の時代、白地に青X字のデザインが勲章になったり、海軍の軍旗にとなったりしました。ブルゴーニュ公フィリップ善良公は、聖アンデレを守護聖人とした金羊毛騎士団を設立し、白地に赤色のアンデレ十字を旗としています。
 西洋においてX字のマークがあったら、聖アンデレが関係していると言っても過言ではないようですね。影が薄いだなんて言ってすみませんでした!アンデレさんは控え目で謙虚ですが、だからこそ人々に愛され信仰される十二使徒なのでした。

→ ユダの接吻(キリストの捕縛)についての絵画を見たい方はこちら
→ ペトロの否認についての絵画を見たい方はこちら

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> びるね様へ
    こんばんは^^
    聖アンデレ教会はノルウェーにもあるのですね。
    紋章ではスコットランドやロシアなど、北方の国が目立ちます。
    北欧周辺の歴史は航海に関連深いので、船乗りの守護聖人として人気があったのかなと思ってしまいます。
    (南欧や東欧でも勿論崇拝されていると思われますが…)

  2. びるね より:

    ボルグンのスターヴ教会に行ったとき、トリフォリウムに相当する部分がX字の梁になっているのを見て、そこが聖アンデレ教会であることを実感しました。

  3. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    私はアンデレ十字がここまで紋章として有名だとは思っておらず、黒子扱いしていました。アンデレさんすみません^^;
    そう言われて気付いたのですが、十字とX字だと木の長さが若干異なるんですよね。
    作り直して丁寧に磔刑してくれるなんて、きっと執行人の方は芯根が優しい方だったのですね…。
    布をまとう作品が多い中、キリスト似のアンデレさんは毛糸のパンツ…。確かにめっちゃ気になります(笑)
    そして暖かそうです^^←ぇ

  4. 美術を愛する人 より:

    あのハードな感じのX型の十字架ってこれが元ネタだったのか…!不勉強なもので恥ずかしながら初めて知りました(汗)
    十字架を作る係りの人たちはせっかく作っているところを「斜めにしてください」と言われ、素直に作り直したのかなと思うとちょっと可愛いですね。
    とはいえ内容はシリアス、感慨深い…とは思うものの、やはり一番気になったのはカラヴァッジョの本物偽物騒動…よりも9枚目のアンデレさんの毛糸のパンツでした…すみません…

  5. 西洋専門のブログだと知りつつ…… より:

    伊達政宗公なら、白装束に黄金の磔柱ですね。
    ……いや、眼帯のほうがわかりやすいか。
    ……いや、特定するなら磔柱のほうか……
    というか、日本の場合、兜でだれかってのが区別できるか……

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