聖母子像は、聖母マリアと幼児キリストを共に描いた図像のことを指します。
中世から現代にかけて非常に人気のある主題ですが、時代によって表現は異なります。中世はあくまでも神の子とその母の主題として、双方とも冷淡ともとれる表情をしていますが、時代が下るにつれてより感情的、親子としての表情が豊かになってきます。キリスト教の教義を重視しているか、絵画としての母子の美しさを重視しているかで絵画が変わって来たのだと思います。
今回は感動的で美しい聖母子像ばかり9点を集めてみました。
「ヤン・ファン・エイクの追随者作 15世紀」
優し気な表情で授乳させるマリア様。まだ中世から抜け切れておらず、
表情が形式的ですが、慈愛の念が染み出している作品。
「カルロ・クリヴェッリ作 1480年」
妖艶な印象を受けるマリア様ですが、金 (おそらく本物) をあしらった
衣服が神秘的で素敵。信仰者は畏敬の念が沸き起こった事でしょう。
「サンドロ・ボッティチェリ作 1480年」
青は神聖な色とされていて、高級な石ラピスラズリを砕いて使っています。
物憂げな表情ですが、きめ細やかで美しい絵画です。
「Giovanni Battista Salvi da Sassoferrato作 17世紀」
そっと寄りそう親子。まさに聖母子像という雰囲気の絵画。
暗闇の深い陰影も上手く表現されています。
「ドメニコ・コルヴィ作 18世紀後半」
気持ちよさそうに眠るキリストの手を、ぎゅっと握るマリア様。
この時代まで来ると宗教臭は抜け、母子の象徴のように描かれています。
「Gaetano Gandolfi作 (部分) 1785年」
ヨハネとたわむれるキリストを優し気な目で見つめるマリア様。
当時は結婚が早かった為、少女のまま母になる者も多かったでしょう。
「Carl Joseph Begas作 19世紀半ば」
ママ、しゅき!と顔を近付けるキリスト。この絵画は少し古典的ですが、
マリア様の衣服は当時の衣装に基づいていそうです。
「Fyodor Bruni 作 1858年」
何かを訴えかけるような二人の眼差し。特にキリストの表情は深くを
見透かされていそうで、ドキッとさせられてしまいます。
「ウィリアム・アドルフ・ブグロー作 (一部) 1893年」
マリア様の腕の中ですやすやと眠るキリストと、象徴する子羊。
白に統一された色彩が美しく、淡く発光しているように見えます。
マリアとキリスト像は始めこそ神の子と聖母で、近寄りがたい信仰すべき存在でしたが、時代を経るにつれて母子の象徴、神聖だけど親しみやすい存在に推移していったように感じます。
結局、お腹の中で命をはぐくみ、育てる母が一番の神秘だと思います。
【 コメント 】
>> 季節風様へ
こんばんは、お気になさらないでください^^
中世~ルネサンス時代は「神や聖人は近寄りがたくあらねばならぬ」と高貴で厳しめの作風が多い中、ルネサンス後期~バロック以降は親しみがある方が良い(民衆にも優しくしてくれる)と、民衆に根差した服装や表情が多く見られますね。
馬小屋で生まれたイエスは貧しい人こそ救われると説き、富は捨て去る方が良いと言っているので、親しみがいのある雰囲気の方が良いように私も思います。
思想の移り変わりで服装や表情が変わっていくのは面白いですよね^^
扉園様
続けざまにすみません。間違って途中送信してしまいました。
キリストは庶民の中で育ったと思っていましたので
一般人的な身なりの優しそうなマリア様は親しみあります。
それでも後光がさしていたり厳かさと品を感じます。
こんばんは。
ボッティチェリの頃はまだマリア様も王妃みたいで厳めしいですね。精密で凄いですけど。
庶民として育ったのかと