神と人間の仲介役を務める天使は、預言者や聖人に様々なお告げを伝えています。
聖書には天使が聖歌を歌ったり楽器を奏でる場面は出てきませんが、天使が歌を歌ったり、楽器を弾いたりする絵画は数多く存在します。それはギリシャの女神ニケがリラの音色で人々を従わせるという伝承に基づいているともされていますが、中世やルネサンスの時代は世俗的な楽器は(バグパイプ、ハープ、手回しオルガンなど)卑しいものとされ、聖なる音楽とは区別されていました。天使達が楽器を奏でる姿を描いたのは、芸術家たちが「神を賛美しているなら、立ったまま褒め称えたりしているより、美しい旋律を奏でる音楽の方がいいだろう」と考えたからなのかもしれません。聖歌やキリスト教音楽の発達も関係しているように思います。教会は音楽に満ちあふれていますしね^^
では、天使の楽隊についての絵画13点をご覧ください。
「マッテオ・ディ・ジョバンニ作 1474年」
マリアの昇天を描いた作品。巨大なるマリア様を中心に据え、
周囲には楽器を持った天使達が取り囲んでいます。ハープや
リュート、笛など様々な楽器を持っていますね。交響楽団と
言った風情です。
「バスコ・ペレイラ作 1535-1609年」
こちらは聖母子像と唯一神の周囲に、天使の楽隊がこれでもか
というくらい密集しています。チェロやヴァイオリン、トロンボーンの
ような楽器がありますね。この至近距離で聖歌を演奏されたら、
なかなかの大音量のような気が・・・。←ぇ
「ファン・エイク兄弟作 1427-29年」
ファン・エイク兄弟の代表作「ゲントの祭壇画」の左上部分。
8名の天使達が楽譜を見て歌を歌っています。 この表情で、
ソプラノやアルトなどのパートが分かるそうです。それにしても
全力で歌いすぎて、顔が怖いです・・・^^;
「ハンス・メムリンク作 1430-94年」
横一列に並んで静かに神を称える天使の楽隊たち。
見たことがない楽器もちらほらありますね。左二つはどういう音が
出るのだろう・・・。
「Cristovão de Utreque の追随者作 1501-25年」
聖母マリアを称える可愛らしい天使達。吹く楽器ばかりですね。
終末の到来の際、天使はラッパを吹いて告げるとされ、
そのイメージがあるからなのかなぁと個人的に思います。
「ガウデンツィオ・フェッラーリ作 1534年」
イタリアの都市サロンノにある、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会
の天井画。奏楽の天使達がびっしりと天井を覆い尽くしています。
(画像元)
「作品アップ」
聖歌を歌い、笛を吹き、弦を弾いています。左上の笛を二つ持って
いる天使さんが気になる!ダブルで奏でるのだろうか・・・。
「作品アップ」
こちらは右下のバグパイプのような楽器を持った天使さんが
気になります。こちらもダブルですねw バグパイプやリュートは
地域や時代によっては世俗的な罪深い楽器とみなされますが、
こちらの作品に表れています。天使が持っていればOK!ですね。
「レオナルド・ダ・ヴィンチの工房作 1506年頃」
岩窟の聖母の祭壇画の両端ともされている、妖艶な雰囲気を
たたえた天使さん。ヴァイオリンを静かに奏でています。
「レオナルド・ダ・ヴィンチの工房作 1506年頃」
こちらも祭壇画の両端に位置する天使さん。物憂げな表情で
リュートを奏でています。あ、上の方は裸足だったのに、
この方はサンダルを履いていますね。
「Giovanni Laurenti(?)作 1590年」
受胎告知の場面。天使ガブリエルが聖母マリアに懐妊したことを
告げています。幼い天使達が楽しげに楽器演奏をしていますね。
「ルドヴィコ・カラッチ作 1616年」
ナポリのサンパオロマッジョーレ教会にある作品。バロック的な
色彩の中、少年少女のような天使達が楽器を奏でています。
頭上の天使のカスタネットが巨大ですね。トライアングルもある。
「ウィリアム・アドルフ・ブグロー作 1825-1905年」
天使の歌という題名の美しい作品。聖母マリアの腕の中ですやすや
と眠るキリスト。三人の天使が奏でているのは子守歌でしょうか。
この場に居合わせたらぐっすりと安眠できそうです。
「テオドル・アクセントヴィチ作 1859-1938年」
優しいタッチで描かれたヴァイオリンを弾く天使。
楽器は職人さんが丁寧に作るものですが、天使の中にも楽器
職人がいるのだろうか。もしくは聖なる力で一瞬にして生み出
されるとか・・・。←ぇ
「エドワード・バーン=ジョーンズ作 1833–98年」
個人的に大好きな作品。うつむき加減で静かにフラジオレットを
吹いています。中世写本のような美しい色彩使いですね。
音楽には詳しくありませんが、キリスト教音楽の歴史を調べてみると、数えきれないほどの宗教音楽が作られ、奏でられてきたことが分かりました。
絵画の天使達が奏でている音楽は残念ながら分かりませんが、人類の歴史に則した音楽だったのかなぁと思います。グレゴリオ聖歌とか、アヴェマリアとか、近代だったらきよしこの夜とか・・・。天使を描いた画家たちは音楽を頭に思い浮かべながら描いていったのでしょうかね。天使で構成されたコンサートが催されたら、ぜひ行ってみたいなぁ(笑)
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【 コメント 】
>> 季節風様へ
こんばんは^^
バーン・ジョーンズの作品は部屋に飾りたくなります。
色彩やポーズ、表情など全てが美しいですよね。
お釈迦様とキリストが友人で、悪魔と鬼と戦う物語。凄い気になります^^
ブッダとキリストの日常を描いた某ギャグ漫画は知っていますが、あのふざけ方はどうなのでしょうか…。
現代でも敬虔に信仰している人がいるので、個人的にはちょっとまずいような気がします。
聖夜にピッタリの絵が多いですね。
エドワード・バーン=ジョーンズ作の素敵ですね。
私は子供のころ天使の楽隊が出てくる日本の漫画を読みました。悪魔がついに天下を奪おうと動きだしたという情報を釈迦が知人のキリストに報せに来ます。(キリストが痩せすぎと釈迦に言われてるのが印象に残ってます。)そしてキリスト・釈迦組と悪魔・鬼組とで最終決戦になります。
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは^^
はっ、私が気になっていてもあえて触れなかったところを見つけてしまいましたね…!
純真無垢の天使様だから、そんな破廉恥なことはないと思いますが、どう見てもおっぱ…(自粛します)
ガウデンツィオ・フェッラーリ作の、バクパイプの天使…!!
これ、絶対狙ってるだろ!!
どう見てもオッパ…強制終了
>> サー……、おっ?様へ
こんばんは^^
ブグローさんは滑らかで美しい作品を描きますね。
サテュロスを沼にいざなうお方と見比べてみましたが、なるほどよく似ています。
特に髪形がそっくりです。←ぇ
同じモデルさんだったのかな?^^
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは^^
そう言われるとそうですね。
当時は男尊女卑的な思想がまかり通っているのに、天使は女性寄り、悪魔系は男性寄りばかりです。
男性優位時代と言っても、聖母信仰もありますし、天使は古来からの女性崇拝の名残があるのかもしれませんね。
でも、どうしてサタンなどの悪魔は筋肉系男性になったのでしょうね…?^^;
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは^^
「天使は物理的実体を持たない」としつつも、当時の画家達は結構俗世にのっとった天使さんを描いていますよね^^
ファン・エイクさん作の天使さん達が懸命に歌っている姿に共感が持てます。
一度に二本の笛を吹いている悪魔の作品があるのですね!
私は道化師が吹いている絵画なら見たことがあります。
悪魔や道化が吹くということは、俗っぽい楽器だったのでしょうかね?
どんな楽器なのかを知りたいです。
バーンズの奏楽天使さんは何年か前に来日していて、その時に見て一目惚れしました^^
見ていて心が洗われる作品です。
サーと流し見していて、見慣れたお顔が……
と思ったら、やっぱりブグローさんでした(笑)
お気に入りのお顔だったのかな……?
サテュロスを沼に引きずりこんだうちひとりも、彼女(手前の天使)だった気がします( ̄▽ ̄)
堕天使の時も思ったんですけど
天使は女性的・中性的なのに対して堕天使とか悪魔は男性的なの不思議ですね…
こんばんは。
天使も楽譜が必要なんだ、とかフルオーケストラ生演奏いいな、とか俗な感想が浮かびます。
一度に二本の笛演奏している図はなんか悪魔の絵でもあったような……当時は一般的な楽器だったのでしょうか。
バーンズの奏楽天使の絵は初めて見ましたが、繊細で綺麗ですね。個人的には羽根の色合いがたまりません。