聖セバスティアヌスの絵画12点。肉体美、セクシーさが時代を経るにつれ増してゆく | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

聖セバスティアヌスの絵画12点。肉体美、セクシーさが時代を経るにつれ増してゆく

 1616) - コピー

 聖セバスティアヌス(聖セバスチャン)はローマの軍人で、キリスト教に改宗して世間へ広めた功績により、聖人となりました。キリスト教徒となったセバスティアヌスはローマ皇帝に裏切者の烙印を押され、杭に縛り付けられてハリネズミのようになるまで矢を射かけられてしまいます。しかし、奇跡的に彼は助かり、聖イレーネによって介抱されます。治癒したセバスティアヌスは皇帝にキリスト教へ帰依することを勧めますが、皇帝は彼を何度も殴って殺してしまいました。
 セバスティアヌスは人気のある聖人で、古くから多くの画家に描かれてきました。ですが、時代が進むにつれて美を求める画家の気持ちが強まり、男のセクシーな肉体を描くことに力を入れ始めます。全ての画家が肉体美路線ではないものの、これってセクシーすぎない?というセバスティアヌスが大量に存在します。
 段々とセクシーランクが増していく聖セバスティアヌスの作品12点をご覧ください。


 

「ジョヴァンニ・デル・ビオンド作  1370年」
中世時代のセバスティアヌスはおじさんで、記述通りハリネズミ状態
となっています。肉体美は全くありません。
 1370)

「Francesco Botticini作  1450年」
初期ルネサンスの作品は身体の質感がだいぶ滑らかになったものの、
セバスティアヌスを聖人として信仰する気持ちが汲み取れます。
 1450

「サンドロ・ボッティチェリ作  1474年」
有名な画家ボッティチェリの作品。セクシーの萌芽が芽生えてきました。
年を経るごとにセバスティアヌス=美青年という図式ができてきます。
→ ボッティチェリの絵画をもっと見たい方はこちら
 Sebastian(detail), 1474

「聖ルチアの伝説のマスター作  1480-90年」
記述通りに大量の矢が刺さっていても、余裕の表情を浮かべる彼。
縛られ方がセクシーさを醸し出しています。
 Robert Pintelon

「Nacheiferers von Perugino作  1500年」
16世紀に入ると暴走する画家が現れます。
顔がもはや女性のセバスティアヌス。矢は一本しか刺さっていません。
布下げすぎです!見える!
Heiliger Sebastian eines Nacheiferers von Perugino, 1500

「ジロラモ・シチオランテ・ダ・セルモネタ作  1560年」
天使が祝福をしていても、肉体美が目立ちまくりなセバスティアヌス。
画家が肉体の描画を気にしているのがよく分かります。
1560-Girolamo Siciolante d Sermoneta

「エル・グレコ作  1580年」
等身の高い人物を描くことでお馴染みのグレコも、セクシー肉体。
St-Sebastian, El Greco

マッティア・プレティ作  17世紀」
他の作品よりセクシーさは低いものの、やはり聖人を描くにしては
露出度が高めです。どの画家もぎりぎりラインの腰布ですね・・・。

Mattia Preti (Il Cavalier Calabrese), Saint Sebastian, 17th

「Attributed to Andrea Vaccaro作  17世紀」
映画のワンシーンのような作品。色男に描きすぎのような気がします。
Attributed to Andrea Vaccaro, Saint Sebastian, 17th

「グイド・レーニ作  1616年」
美青年を通り越してセバスティアヌスは美少年に変化しました。
この絵画は作家の三島由紀夫がインスピレーションを受けた事で有名。
 1616)

「Nicolas Regnier 作  1625年」
写真を撮ったかのような描写。実際に青年モデルを見ながら描いた
のでしょうか・・・。スキャンダルを感じます。
 Nicolas Regnier

「François Guillaume Ménageot 作 18世紀」
申し訳程度の布が隠していたとしても、半裸どころじゃありません。
というか、矢が消滅しました。物語を無視しすぎです。
完璧にセバスティアヌス=セクシーという方式が成り立っていますね・・・。
François-Guillaume_Ménageot 18th

 セバスティアヌスはローマ帝国の軍人なので、本当はガチムチのお兄さん(おじさん)であるのに、画家達は彼を理想の肉体を持った美青年に仕立てています。時代が新しくなるにつれて『信仰の為に描く→肉体美の為に描く→美少年が描きたい!』という風に推移しているように思えます。一部の画家は下心があって描いているような気がしないでも・・・。また、セバスティアヌスがゲイであったという説があり、ゲイの守護聖人ともなっています。厳格な中世から徐々に規制が自由になっていった証なのでしょうかね。
 ただ、17世紀頃には、男性の半裸像を教会に置くのはナンセンスと、射かけられたセバスティアヌスの絵画を禁止しています。代わりに教会が推奨したのは、怪我をして聖イレーネに介抱されている場面。それなら大丈夫だろうという事ですが、そのシーンでもセクシーさはあまり変わっていないような気がします。 

「二コラ・レニエ作  1630年」
こんな感じなので・・・・・・。
ニコラ・レニエ

コメント

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    「タブーがあるほど人は燃える。」
    なんだか名言ですね…!
    聖人をセクシーに描くって、宗教の違う私達でも禁断の匂いを感じますよね^^;
    同性を愛すのは古代からあったことですし、現代はもっと自由になってもいいと私も思います。愛に自由を…!

  2. 美術を愛する人 より:

    心の底から楽しく拝読しました。タブーがあるほど人は燃えるものなのですね。そして、私たちはもっと自由に愛を感じていいのですね。

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