イスカリオテのユダの絵画14点。キリストを銀貨30枚で売った裏切者の悲しき人生 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

イスカリオテのユダの絵画14点。キリストを銀貨30枚で売った裏切者の悲しき人生

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 イスカリオテのユダはキリストを銀貨で売ったとされる、キリスト教最大の裏切者と知られている者です。他にもユダと言う名の者がいる為、出身地カリオテからとって「イスカリオテのユダ」と呼ばれています。
 「マタイの福音書」によると、ユダは十二使徒の一人でありながら金銭目的でユダヤの祭司長たちにキリストの引き渡しを持ちかけ、銀貨三十枚を得る約束をしました。その後、キリストと十二使徒は過ぎ越し祭の日に晩餐を行いますが、キリストは「君達の内誰かが私を売り渡すだろう」と言い、ユダにパンを与えました。ユダはその場を素早く離れたのでした。

 そして遂に運命の時が訪れます。ゲッセマネの園でユダは救世主に親愛の接吻をしました。接吻は「この者がキリストである」という敵への合図だったのです。現れた兵隊はキリストを捕らえ、ユダヤの祭司たちは裁判に掛けてキリストを処刑してしまいました。ユダはその罪深い行為が恐ろしくなり、銀貨三十枚を祭司たちの足元に投げ付け、自ら首を吊って命を絶ったとされています。
 では、裏切者の代名詞となっているユダについての絵画14点をご覧ください。一部閲覧注意がございますので、お願いいたします。

「ジェームズ・ティソ作  1886-94年」
西洋では黄色は背徳や裏切りなど負のイメージがあり、ユダは
黄色の衣装を身にまとっていることが多いです。また、伝説では赤毛と
されています。ガリガリに痩せたこの姿は浮浪者のような感じですね。

「フランスのフレスコ画  16世紀」
ユダは一行の会計士を任されていました。しかし、裏切者という印象が
付いた為か、不正をしていたという伝説も残されています。
これ故か、会計士の仕事は歴史上嫌われていました。

「ジョット・ディ・ボンドーネ作  1276-1337年」
手に銀貨の入った袋を握るユダ。ユダヤ教の祭司たちはキリストを
如何に陥れるかを話し合っているようです。
背後には真っ黒の悪魔さんが控えていますね。

「リッポ・メンミ作  14世紀」
こちらも銀貨三十枚を頂こうとしているユダ。一番右側がユダだと
思われますが、左側の人にかなりよく似てるような・・・。

「János Pentelei Molnár 作  1909年」
こちらのユダは少しイケメンの若者として描かれています。
テーブルの上に乗る銀貨。三十枚という数字は奴隷が一人買える
程度の安い値打ちであったそうです。現代で考えると奴隷一人が
安いって、どうなの?と思いますが・・・。

「カール・ハインリッヒ・ブロッホ作 1834–90年」
過ぎ越し祭の日、キリスト一行は晩餐をします。「これが最後の晩餐と
なるだろう。この中の一人が裏切るからだ」とキリストが予告をし、
ユダにパンを与えます。裏切りがばればれのユダはその場をそっと
離れるのでした・・・。

「Pieter Pourbus 作  1523-84年」
本当だとユダの裏切りはキリストのみが知っており、他の使徒達は
分かっていませんが、この絵画はペトロと思われる人物がユダを
捕まえているようですね。というか、右側のスケルトンは何者・・・!?

「Convent of San Marco のフレスコ画  1437年」
そして運命の日。誰がキリストか分かるよう合図を用意しろ、という
祭司側の要望により、ユダは親愛の証である接吻を利用します。
ユダがキリストに接吻をした途端、兵が現れて彼を捕らえたのでした。

「シモ・ゴメス作  1845-80年」
こうしてキリストは磔刑され、命を落としてしまいます。しかし、ユダは
罪の意識に耐え切れなくなり、祭司の元へ戻って銀貨を捨てたとされて
います。銀貨は畑を外国人墓地に変える為に使ったそうです。

「ブルガリアのStrupetsのフレスコ画  16世紀」
罪が償い切れず、絶望したユダは首をくくって命を絶ってしまいます。
抽象的な絵画ですが、地味に怖い作品です・・・。
Strupets, Bulgaria, 16th-century fresco

「15世紀のフレスコ画」
また「使徒言行禄」によると、ユダは自分で土地を買った事になって
おり、そこへ落ちて内臓が飛び出して死んだと言われています。
物語が混じり、首を吊って内臓が出た状態になっているようですね。
腹からユダの魂が出てきて、悪魔が連れ去ろうとしています。
death  Judas, Life of Christ (15th) frescoes, Chapel

「Giovanni Canavesio 作 1491年」
こちらも同様の状態の作品。
うおぉぉ・・・と思う程、グロい絵画ですよね^^;
魂がミニチュアの自分と言う表し方は中世時代に
特有の表現となっています。
Judas Hanging Himself by Giovanni Canavesio, 1491

「Sascha Schneider 作  1870-1927年」
死後、地獄へと堕とされてしまったユダ。キリストは茨の冠を被って
十字架を背負って殉教しましたが、復活して天へと召されました。
しかし、ユダは暗い地の底で罪の意識と戦いながら、永遠に悪魔

よってさいなまれ続けるのです。

「Benoît-Hermogaste Molin 作   1810-94年」
キリストの接吻ではなく、悪魔の接吻。お前は永遠にこちら側に
いるという親愛の現れなのでしょうか。こちらをじっと見つめるユダ。
彼の眼差しからは克明な感情は読み取れませんが、
なんだか可哀想な気がしてきました・・・。

 ダンテ・アリギエーリの「神曲」において、イスカリオテのユダは「三大裏切者」の一人となっています。他の二人はカエサルを裏切ったブルートゥスとカッシウス。彼等は地獄の最下層コキュートスの場において、半身が氷漬けにされたルシファー(ルチーフェロ)によって噛みつかれております。ルシファーは三つの頭を有しており、それぞれが下半身部分をがぶりと噛んでおり、裏切者達は上半身をだらりと垂らしているのです。
 このシーンを始めて知った時、どんな状態なんだ!?と衝撃を受けたのを覚えていますが、後になって傲慢によって神を裏切ったルシファーが、同じ罪である者達を食べているのは変だな~?と思いました。作者ダンテは裏切者が最も重罪だと考えていたので、毒を持って毒を制す的な感じで食べさせたのでしょうかね?

→ ユダの接吻についての絵画を見たい方はこちら
→ 神曲のルシファー(ルチーフェロ)についての絵画を見たい方はこちら

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    おお、サシャ・シュナイダーさんですか!
    ユダだけではなく、神話や聖書など様々なテーマを描いてみえるのですね。
    特集かしこまりました。
    のんびりとお待ちくださいませ^^

  2. 美術を愛する人 より:

    サシャ・シュナイダー特集もお願いしたいですー☆

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