聖書 バベルの塔の絵画10選。人々は神の頂を目指して塔を建設し、天罰を受ける | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

聖書 バベルの塔の絵画10選。人々は神の頂を目指して塔を建設し、天罰を受ける

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 バベルの塔は旧約聖書の「創世記」に登場する塔です。
 聖書によると、かつて人々は同じ言語を用いていました。彼等は全国から集まり「さぁ、私たちの街と塔を作ろう!天へ届くほどの高い塔を。名声がとどろくような塔を作ろう!」と言い、塔を建設し始めました。着実に建てられていく塔を見て、神は「人間は団結し、天の領域を侵そうとしている。その原因は言語が統一しているからだ」と呟き、人々の共通言語を奪ってしまいました。突然話が通じなくなった人々は混乱し、街と塔の建設をやめざるを得なくなりました。人々は散り散りになり、やがて異なる言語を話すようになります。そして、置き去りにされた街は「バビロン」と名付けられました。
 崩壊した街バビロンのモチーフはバビロニア王国の首都だと言われています。バベルの塔は王国の神殿「ジックラト」に由来しています。後期になって、バビロンの塔だから「バベルの塔」と呼ばれるようになったとされています。
 神の天罰を受けた塔を描いた作品を見ていきましょう。

 

「ドイツ中世後期の彩飾写本  1370年」
初期に描かれたバベルの塔はシンプルなもの。
上からにょっきり現れた神がシュールです。

「15世紀の彩飾写本」
一世紀経って塔が少し複雑になりました。ですが、ちっちゃい感じ。

「彩飾写本の挿絵 年代不明」
現実的に建設している感じのバベルの塔。まだ始まったばかりですね。

「グリマーニ聖務日課の一部 Gerard HORENBOUT作 1510年」
更に一世紀経ってかなり細密になったバベルの塔。
建設に携わる多くの人や道具が描かれています。

「ピーテル・ブリューゲル(父)  1563年」
彼の代表作である作品。
規模が一気に飛躍し、塔や背景の細かさが際立っています。

「ピーテル・ブリューゲル(父)  1568年」
五年後に描かれたバベルの塔。スケールが更に大きくなり、遠目からでは
人は視覚できません。しかし、ここには1400名が描かれているとか!
当時の建築技術を忠実に再現してあるそうです。

「Marten van Valckenborch作  1580年頃」
近景と遠景を描き、奥行き感を再現しています。
しかし、ブリューゲルほどのスケール感や細密描写はありません。

「Marten van Valckenborch作  1600年頃」
 Valckenborch第二弾。
ブリューゲルの作品を参考にして描かれたのが分かります。

「アベル・グリマー作  1604年」
巻貝のようにくるくるしたバベルの塔。
こちらも先人達を参考にして構成された作品に感じます。

「ジェームズ・ティソ作 1896-1902年」
塔を建設する人たちをクローズアップさせた作品。
他の作品と趣旨が違い、面白いです。

 有力な説によると、バベルの塔は7階建てで90mあったとされています。東京スカイツリーは634mだから、そんなに高くないじゃん!と思われるかもしれませんが、当時の建築技術では馬鹿でかい規模だったと思われます。(一説では13kmらしいです・・・)
 しかし、ブリューゲルの描いたバベルの塔は150m~200mと推定されています。本物よりでかいんです!5年後に描いたバベルの塔は7階建て以上に思われますし、本物以上に大きく描いた彼の力量は恐るべしという他ないでしょう。後年の作品もスケールは大きいですが、ブリューゲルに勝る者はいないように思えます。

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> 季節風様へ
    こんばんは。
    いえいえ、お気になさらず^^
    バベルの塔は様々な人種の方達が協力し合って作ったという印象があります。だからこそ、塔建設に尽力した人達を焦点に当てて欲しいですよね。
    「バベルの塔展」観に行かれましたか!私も行きましたよ^^
    あの展覧会は本当に素晴らしかったです。
    コンパクトな画面に人や塔がみっちりと描き込まれ、まるでキャンパスが異次元空間のように感じられました。
    画面に「一つの世界を形作った」という形容がよく当てはまる作品でした。
    私も以前はバベルの塔=神が雷でぶち壊したと思っていました…。
    おそらくタロットカードの「塔」の影響なのではと私は推測しています。
    カードのシンプルなイラストでは「言語が通じなくなった」という事を表すのは難しいです。
    不吉や破滅を象徴する塔を的確に表現する為に、神の鉄槌である雷で塔を破壊するイラストを描き、バベルの塔が壊されたというイメージになったのかなぁと思います。
    (由来が異なっていたらすみません^^;)

  2. 季節風 より:

    管理人様へ。
    いつも勉強させていただいております。有難うございます。
    高貴な人が塔建設の視察に来てない作品がいいです。バベルの塔を作るのを決めたのは一般人達というイメージが私にはあります。
    「ピーテル・ブリューゲル(父)  1568年」は日本で展示された時に観に行きました。思いのほか小さかった(-_-;)ですが圧倒的な風格と緻密さとカッコよさが好きです。
    私は神様が塔をぶち壊したのかと誤解していました。

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