キリストの誘惑 (荒野の誘惑) の絵画15点。救世主は悪魔サタンの甘言を拒否する | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

キリストの誘惑 (荒野の誘惑) の絵画15点。救世主は悪魔サタンの甘言を拒否する

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 キリストの誘惑(荒野の誘惑)は、イエス・キリストが悪魔の誘惑を退けた新約聖書のエピソードです。
 ヨルダン川でヨハネから洗礼を受けた後、キリストは聖霊によって40日間荒野に送られました。その間何も口にすることはなく、救世主は酷く飢えていました。そこへサタンが現れ、こう言います。「ここに石がある。お前が神の子ならばパンに変えてみせろ」と。それに対しキリストは「人はパンだけで生きておらず、力を使うのは誤りだ」と答え、拒否します。次にサタンは高い場所へ連れていき、国々を見せました。「もし私にひれ伏すというならば、これら全てをあげよう。権威、栄華、全てお前のものだ」しかし、キリストは「私は神にしか仕えません」と退けます。
 更にサタンはエルサレムの宮の頂上へと連れていき、こう囁きます。「ほら、お前が神の子だと証明すべく此処から飛び降りてみろ。神はお前を守る為に御使いを寄こすのだろう?」キリストは「神を試してはならない」と断固拒否します。誘惑に失敗したサタンは悔しがりながら離れていきました。こうして救世主は聖霊の力に満ちあふれながら、ガラリヤへと帰宅したそうです。
 堕落させようと必死なサタンと、色々な表情でNOと言うキリストの姿15点をご覧ください。

 

「中世写本の挿絵  年代不明」
「お前に国々をプレゼントしよう。ただし、俺を崇拝したら」と言うサタンに、
のんのん、と人差し指を立てて拒否るキリスト。サタンの脚の後ろから
緑色の羽が生えているのは堕天使の名残でしょうか。
→ 堕天使についての絵画を見たい方はこちら

「ドゥッチョ・ディ・ブオニンセーニャ作   1308-11年」
かなり低い丘の上で世界を見せているサタン&私を馬鹿にしておるのか?
と言った感じの態度のキリスト。背後では天使二人が「そうだそうだ!」
と援護しています。神の権力を笠に着ているように感じるのは私だけ・・・?

「Fernando Gallego 作   1480-88年」
賢者のような老人に変装して石を見せるサタン。しかし、足が怪獣の
ようになっています。こちらのキリストはちょっと弱気です。
右側と左上に他のシーンも描かれております。

「フアン・デ・フランデス作  1500年頃」
今度は修道僧の恰好をしてやってきました。腰には数珠を付け、さも
聖なる存在ですよアピールをしていますが、頭には角が。
キリストは敵意丸出しの表情で「こんなんいらん!」と示しています。
よく見ると左上の崖に二人の姿が・・・。

「ルカ・ジョルダーノ作  1685年」
このサタンは魔法使いの老人のような姿。前掛けに石を置き、
さり気なくお勧めします。完全な変装をしておりますが、爪は鋭く、
布の隙間は炎が上がっているようです。「ねぇ、それあなたが食べたら
どう?」とキリストが言っているように感じてしまいます・・・。

「セバスティアーノ・リッチ作   1659-1734年」
サタンの七変化は続きます。今度は足を怪我した老人に変装して、
同情を誘う作戦。石も小さめにして怪しまれないように・・・。
「いや、もうサタンさん。しつこいですよ」

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1620年」
凄い足の開き方をして石を見せるサタンに、キリストが「しつこいわ!」と
マジ切れをしているように見えます。仏の顔も三度(?)までですね・・・。

「ウィリアム・ブレイク作  1757-1827年」
口に指を当て、石をパンに変えて欲しいの・・・。と懇願している老人の
サタン。背筋がムッキムキのキリストは天を指し、そんな事はやらぬ!
と言っています。あまりしつこいとラリアットやられちゃいますよ!

「ティントレット作  1519-94年」
今度は美しい天使に変身して両手に石を掲げています。上半身裸で
セクシー路線に走り、最早やけくそ状態です。キリスト怒りを通り越して
呆れが入っているように見えます・・・。

「パオロ・ヴェロネーゼ作  1580 – 82年」
キリストの洗礼と荒野の誘惑が合わさった作品。
ヨハネより洗礼を受けた救世主は、かなりの数の天使に祝福されて
います。この圧倒的パワーにサタンは勝てませんよね・・・。

「ジョン・リット・ペニマン作  1818年」
悪魔の姿を見て「フュースリかな?でもなんか違うような・・・」と思ったら
違う作者でした。フュースリの描き方を参考にしたようですね。
何をしても揺るがないキリストにサタンは逃げ去るのでした・・・。
頭上では天使達が飛来しております。

「バーテル・ブライン(父)の工房作   1547年」
こちらは荒野の誘惑を主題にしているものの、何か様子が違います。
たぶらかす悪魔の姿をプロテスタント派の者にして、手前には教皇の姿が。
あからさまにプロテスタントやルターを批判しているのが分かりますね。

「中世写本の挿絵   年代不明」
い、石がでかい!これがパンに変わったら一週間分くらいはありそう
ですね(笑)右では塔から降りることを拒否しておりますが、
・・・あれ、天使二人とちゃっかりお食事をしているように見えるけど?
キリスト誘惑に負けてしまったのかしら・・・?

「The Fouquet Missal 作  1470-75年」
なんかキリストお持ち帰りされている!
きっと国々を見せる為に高いところへ連れて行く最中なんですね。
ぐわっと言った表情と、サタンの歩いている感がじわじわ来ます・・・。

「アンゼルム・フォイエルバッハ作  1857年」
こちらも高いところに移動中のお二人。
なんだかサタンをタクシーがわりに使っちゃっているように見えます。
「んー乗り心地が悪いですね・・・」「す、すいやせん!」

 勝手に物語を盛って失礼しました。サタンはそこまで石をゴリ押ししておりませんし、キリストは毒を吐いておりません(笑)
 新約聖書には「悪魔」と書かれているので、どういう姿で現れたのかは分かりません。ただ、誘惑というのだから闇の眷属そのまんまで登場してはキリストも警戒してしまいます。騙されそうな姿に変身してから、そそのかそうとするのが自然ですね。(中世時代の作品は悪魔そのままですが・・・)画家によってサタンの姿が異なるのが興味深かったです。賢者や聖職者が多い中、ティントレット作のセクシー天使の姿が一番印象に残りました。また、キリストが抱っこされたり、サタンがタクシーにされたりと、絵画って自由ですね・・・w

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> 季節風様へ
    こんばんは^^
    老人や修道士とかの姿が多い中、半裸の天使はインパクト大ですよね。
    あの天使の姿で「パンに変えてみせよ!」と迫ってきたら、呆れて笑えてきそうです(笑)
    洗礼&誘惑の異時同図法は珍しいですよね。
    二つともキリストの成長の転換期というイメージで描いたのかもしれません。
    悪徳勧誘員というネーミング面白いですw
    しつこい詐欺キャッチセールスみたいな^^;

  2. 季節風 より:

    こんばんは。
    ティントレット作の悪魔は悪魔と正反対の天使に扮しているので意外性が凄いですね。キリスト様もクスッと笑ってるような。
    パオロ・ヴェロネーゼ作のは半分が厳かなキリストの洗礼の場面で、あとの半分が浮世の悪徳勧誘員(悪魔)に道で引き止められて迷惑そうにしているキリスト様だと思えます。

  3. 管理人:扉園 より:

     >> タクシー代わりって(笑)様へ
    こんばんは^^
    パンドラはヘルメスタクシー、ガニュメデスはゼウスか鷲タクシーでしたねw
    救世主キリストがサタンに無理やり連れられている図なんて、断じてあってはならない!と画家は思って、このような感じになったのかもしれません。
    それにしても椅子状態ですよね(笑)

  4. タクシー代わりって(笑) より:

    最後の絵、パンドーラーとかガニュメーデースを思い出してしまいました。
    なんだか椅子に座っているような感じですね(笑)

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