寓意画(ぐうい)はアレゴリーとも呼ばれ、難しい概念を、擬人化したり図像を用いることによって絵画で表わす美術の形態の一つです。 → 寓意画について詳しく知りたい方はこちら
西洋における芸術はアルタミラやラスコーの壁画、ギリシャの彫刻、竪琴、縦笛など、古代の作品から始まり、段々と発展していきました。絵画ではフレスコ、テンペラやモザイク、油彩が開発され、美術表現の幅を広げていきました。象徴や図像で抽象的な表現も可能になり、寓意を描く風潮が高まった時、画家たちは様々な方法で芸術そのものを表現しようとする絵画を描いたのです。
芸術に関する寓意画、12点をご覧ください。
「Franco-Flemish 工房の画家 16世紀」
牧歌的な世界で女性が麗しい音楽を奏でると、鳥たちが寄ってきています。
一番前の鳥は木の実をくわえています。弦楽器の上品で美しい音色を
表現した作品なのでしょうか。
「Michele Desubleo 作 1602-76年」
リュートと思われる楽器を女性がひいています。テーブルの上には
天使がおり、楽譜を開いているので、聖歌を奏でているのでしょうか。
バロック調の背景がシックで、優し気な音色が流れていそうです。
「レンブラント・ファン・レイン作 1626年」
分厚い楽譜を持つ女性を筆頭に、チェロとハープを持つ男性と、
にやりと微笑む老婆がいます。彼等の顔は余り楽しそうではありません。
額縁に掛けられた絵が宗教画のように見えるので、世俗音楽にどっぷりと
漬かることに対する風刺が込められているのでしょうか?
「Lombard School の画家作 17世紀」
素敵な天使さんがじっと楽譜を読み、ハープを持っています。
宗教音楽の譜面を覚えているのでしょうか。世俗性のない神秘的な
存在である天使が譜面を見ていると、なんだか親近感が湧きます。
「フランチェスコ・トレヴィザーニ作 1656‐1746年」
彫刻家の者に天使が舞い降り、月桂冠を被せています。
月桂冠は勝利を得た者、優秀な者に授けられるものとされているので、
この者は彫刻を極めた芸術家なのでしょう。
それか、「彫刻」そのものの存在と言えそうです。
「アンゲリカ・カウフマン作 1741-1807年」
こちらは可愛らしい天使たちが、とんてんかんと純白の天使の像を
作っています。彫刻のお仕事を天使が摸倣することで、
彫刻そのものの存在を絵画で伝えています。
「フランソワ・ブーシェ作 1703‐70年」
二人の天使が女性の胸像を見ながら絵を描いています。こちらも上記
と同じく、絵画の存在を表しています。絵はほのぼのとして可愛いですが、
上の天使の目付きがちょっと怖いです・・・。
「フランソワ・ブーシェ作 1703‐70年」
同じブーシェさんの作品。これでは女性が天使を見ながら描いています。
上の天使が月桂冠と鳥の飾り物のようなものを持っています。
キャンパスが平面で鏡のように見えるので、「絵画は美しいが、
自らの心を映す鏡である」と考えるのは邪推でしょうか。
「Alessandro Turchi 作 1578‐1649年」
絵を描く女性を描いた作品。シンプルに描く行為だけを表しています。
女性のこちらを見つめる目がなんだかホラーに見えるのは気のせい・・・?
「ポンペオ・バトーニ作 1740年」
芸術そのものを表した作品。絵画の女性はヘルメスを描き、
右の女性は竪琴を持ち、下の女性はハンマーを持っています。
足元には頭部像と楽譜のような本が。奥の女性二人はカメラ目線ですが、
何を表しているのでしょうか・・・。
「シモン・ヴーエ作 1590‐1649年」
この作品は剣をペンで制す!ならぬ剣を芸術で制す!と言った感じです。
絵を描く女性の左側には武装した女性が描かれていますが、和やかな
表情です。右の楽器を持った女性の足元には武具が積まれており、
踏み付けられています。戦争より芸術やろうぜ!というメッセージが。
「マールテン・ド・フォス作 1590年」
芸術とは少し外れてしまいますが、この作品は七つの教養と解され、
ロジック、幾何学、算術、天文学、音楽、弁論術、文法を表しています。
これが教養なら、私に足りないものが多すぎます・・・。
現代だと芸術は「先鋭的なもの、挑戦的なもの」というイメージがありますが、この絵画を見ていると、ルネサンス、バロック、ロココの画家達は芸術を「技術を極めるもの、平和的なもの」と考えている者が多いように感じます。もちろん現代においても技術的で美しい、平和的な絵画もありますが、現代アートが発展するにつれて見た目よりも内容の強烈さ、目新しさを重視する風潮があるように思います。そういった現代アートも素敵なものもありますが、個人的には古典的な方が性に合っているかなぁと感じます。
今後の芸術は一体どうなっていくことでしょう・・・。
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