寓意画(アレゴリー)の絵画13点。複雑な概念を擬人化して伝える、美術的技法 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

寓意画(アレゴリー)の絵画13点。複雑な概念を擬人化して伝える、美術的技法

スポンサーリンク
Jean-Baptiste Regnault France  Liberty and Death1795 -

 寓意(ぐうい)(英語:アレゴリー)は絵画や文学において、抽象的で曖昧な概念を、具体的な物事に置き換える技法です。
 絵画では寓意を描いた作品を「寓意画」と呼び、難しい概念を擬人化したり道具を使うことによって、対象者に明確に伝える図像学の一つです。例えば、「運命」という概念。神話では運命の女神もいますが、そういった要素、考えを組み合わせて、絵画一枚で運命という概念を説明するのです。運命は不安定な球体の上に立った女性の姿で表されることが多く、周囲には宝物があったり、死神が立っている場合があります。運命は気まぐれで不安定、富を得たかと思えば奈落も待っている、といった要素があるので、それを人物の動き、持っている道具で語るのです。また、「イタリア」という国の概念も、女性の服装や持ち物、歴史的な建築として表されています。
 様々な内容の寓意画(アレゴリー)、13点をご覧ください。


 

「シモン・ヴーエ作  1630‐35年  富の寓意」
高価そうな壺やアクセサリーを傍らに、二人の子供を相手する天使の
女性。子供は宝石を持っていますが、女性は子供を大事そうに
抱えています。本当の富はお金より子供という事を伝えています。
でもやっぱり気になってるから、お金も必要なのかしら。
Wealth, by Simon Vouet (1630-1635)

「サンドロ・ボッティチェリ作  1470年  毅然、不屈の寓意」
鎧を身にまとい、玉座に座った女性。
折れぬ強き意志を、格好いい感じの女性として表しました。
Fortitude 1470  Sandro Botticelli

「Frans II Francken 作 17世紀前半  運命の寓意」
運命を表す女性は左手側ばかりに富を投げ、右には目もくれていません。
左手は裕福な貴族が横行し、右は貧乏人や障害を持つ者がおります。
運命の不平等性、気まぐれ性を表した作品。
→ 運命と人生の寓意画をもっと見たい方はこちら
Fortune Francken Frans II, le Jeune

「 ジョヴァンニ・ベリーニ作 1430‐1516年 節制の寓意(運命?)」
こちらは節制の寓意画と紹介されていましたが、違う文献では運命と
されていました。欲望の象徴であるハルピュイアのような女性が、
両手に壺を持って球に乗っています。どちらかというと、運命のバランスを
保つ、節制を大事にするという意味のように感じます。
Allegory of Temperance, Giovanni Bellini

「ポンペオ・バトーニ作 1708-87年 戦争と平和の寓意」
戦争へ行かないで、と愛しの女性が兵士姿の男性に訴えています。
剣をそっと押しのけ、平和の象徴であるオリーブを差し出し、平安の
方が大事だということを伝えています。
→ 戦争と平和の寓意画をもっと見たい方はこちら
 1708-87

「コレッジョ作 16世紀前半  美徳の寓意」
美徳の輝きを一枚にした作品。女性たちは皆笑顔を浮かべ、
人種を越えてお互いを讃え合い、認め合っています。
猛獣でさえも牙を収め、人に懐いています。
Virtues by Correggio

「Leandro Bassano 作  1580年 地球の自然の寓意」
地球から与えられた恵みを精一杯描いた作品。
果物や野菜、動物など全てが地球から与えられた自然ですね。
Leandro Bassano  1580  element earth

「Philipp Veit 作 1834-36年 イタリアの寓意」
イタリアを擬人化した作品。頭部に乗せているのは月桂冠です。
服装の色合いも国旗に似せており、イタリアを表現した女性は
「イタリア トゥリッタ」と呼ばれ、国内で親しまれています。
Philipp VEIT Allegorical Figure of Italy 1834-1836

「ジャン=バプティスト・ルニョー作 1795年 フランスの自由と死の寓意」
こちらは革命によって揺れるフランスの国家情勢を表した作品。
中央がフランスを示していて、左手側は自由を象徴する女性、
右は失墜、失敗を意味する死神が描かれています。
Jean-Baptiste Regnault France  Liberty and Death1795

「Ambroise Dubois 年 1543-1614年  彫刻の寓意」
彫刻だけではなく、絵画や音楽などの芸術を表す寓意画もよく描かれました。
こちらの女性は彫刻を模写しており、子供たちが像を持って遊んでいます。
 Flemish 1543-1614

「Alessandro Turchi 作 17世紀  知恵者の寓意」
左からそれぞれ哲学、歴史、知識欲を表しています。
三名が集まる事で、知恵としての三位一体を構成しています。
Alessandro Turchi  Philosophy, History kowledge 17th

「Jean Jouvenet 作 1699年 冬の寓意」
季節や時間の流れを表す寓意画も描かれてきました。推測ですが、
冬の擬人化である老人が炎を奪っている事によって、外気が寒くなる
と言った感じなのでしょうか。
 French
 
 当時、貴族の娯楽の一つとして、寓意が含まれた絵画の謎解きがありました。寓意画を見て、どのような概念が潜んでいるのか、どのような事を伝えたいかなどを話し合い、知識を披露しあうのです。なので絵画もどんどん複雑化、シンボル化していき、現代でも解くことのできない作品が存在するのです。
 風景や人物が描かれた美しい絵画も良いと思いますが、難解な内容が含まれた寓意画も、味わい深くて興味深いと思いますよ。



【 コメント 】

タイトルとURLをコピーしました