「狂えるオルランド」は、ルドヴィーコ・アリオスト作によって1516年に発行された、フランスを舞台にしたイタリアの叙事詩です。内容はマッテーオ・マリーア・ボイアルド作の未完の叙事詩、「恋するオルランド」の続編、「ローランの歌」の前日談という形式をとっており、シャルルマーニュと十二人の勇士(パラディン)の活躍、オルランドの失恋と発狂、イタリアの有力貴族であるエステ家の起源が書かれています。
ある日、王主催の馬上試合にアンジェリカという美人の姫がやって来て、パラディンの一人オルランド(フランス読みでローラン)は恋煩いをしてしまいます。彼女を求めて世界中を旅し、再三の帰還命令も無視して歩き回るオルランド。しかし、恋は実らずに彼は発狂してしまうのでした。
一方、フランスの女騎士ブラダマンテはイスラムの戦士ルッジェーロと恋に落ちます。敵同士であった二人は周囲の激しい反対に合いますが、困難にめげずに愛を貫き、結ばれます。こうして二人の子孫がエステ家となったのでした。また、他にも支流の物語がたくさんあり、その中にはオルランドの理性を求めて王子が月へ行った話、ルッジェーロがアンジェリカを救う話、中国やタタール人の王との戦いの話などが散りばめられております。めちゃくちゃ長い話で、登場人物も多いので、これらのことだけで全貌を知ることはできませんが、物語を知る一存になれば幸いです。
では、狂えるオルランドに関する絵画14点をご覧ください。
「ギュスターヴ・ドレ作 1832-83年」
カタイ(中国がモデル)の姫であり、魔性の女性アンジェリカ。
彼女を一目見るなり恋に陥ってしまった男性多しです。しかし、彼女は
余程のことがなければなびかず、破滅する男性ばかりでした。
「ドミニク・アングル作 1819年」
エブーダ島で囚われたアンジェリカは縛られ、鯱の怪物に食べられ
そうになっていました。そこへ、ヒッポグリフに乗った主人公の一人
ルッジェーロが颯爽と現れ、助け出します。
「アルノルト・ベックリン作 1871-74年」
このシーンはギリシャ神話にあるペルセウスによるアンドロメダの
救出そっくりで、作者が参考にしたんだなと思います。
ぐるぐる巻くドラゴンが可愛らしいですね^^
「ルドヴィコ・カラッチ作 1555–1619年」
あわーと大口を開ける怪物にイカリのようなものを引っかけて
引っ張るルッジェーロ。
彼はイスラム出身なのに、バリバリのローマ人です。アンジェリカも
中国周辺出身なのに、バリバリの西洋人です。
「Giovanni Biliverti 作 1625年」
神話では愛に発展するのですが、ルッジェーロが愛を示しても
アンジェリカは恋に落ちるどころか、魔法の指輪を盗んで逃走する
暴挙に出ました。ドンマイ!
「ミケーレ・ロッカ作 1720-50年」
そんなアンジェリカは瀕死だったサラセン側の兵士メドーロ(Medoro)を
看病します。回復するにつれて二人は相思相愛となります。
移り気の激しかったアンジェリカは、運命の人を見つけたのです。
「Giuseppe Antonio Fabbrini の追随者作 19世紀頃」
この主題は画家たちに好まれ、日本ではマイナーですが、かなりの
絵画が残されています。森の中、きゃっきゃうふふする二人。木の幹や
岩に愛の言葉を刻んで、愛を確かめ合ったそうです。天使も祝福を!
「Mihael Stroj 作 1803-71年」
洞窟の中、きゃっきゃうふふする二人。
「まだ僕完治していないよ」「ずっと看病してあげる」と砂糖過多すぎて
喉が痛くなるような台詞を言い合っているんでしょうかね・・・。
「ギュスターヴ・ドレ作 1832-83年」
おそらくオルランドと、中国の王グラダッソかタタール人の王マンドリカルド
との一騎打ちを描いたシーン。オルランドの持っている聖剣デュランダル
を狙ってここまでやって来たのでした。
「ウジェーヌ・ドラクロワ作 1852年」
女性騎士マルフィーザとピナベッロの作品。どのような場面か
調べたのですが、申し訳ありませんが分かりませんでした・・・。
誰か教えて下さい~!
「Giovanni Lanfranco, 1624
また、ダマスカス王のノランディーノと姫ルシーナは新婚旅行中に難破し、
オーガ(巨人)の島に着いてしまいます。脱出しようと試みますが、
ルシーナは巨人に捕まってしまうのでした。
「 Pehr Hilleström 作 1732-1816年」
やっとちゃんと出て来た主人公オルランド。彼はアンジェリカと
メドーロの愛の巣へ行き、刻まれた言葉を目の当たりにした時、
余りのショックに発狂してしまいます。
「アルノルト・ベックリン作 1901年」
愛の言葉を削り、全てをぶち壊し、丸太を振り回す野獣と化した
オルランド。周辺の人々に迷惑かけまくりです。主人公オルランドは、
失恋の傷によって「狂えるオルランド」になったのです・・・。
「Massimiliano Lodi 作 1860年」
エステ家の方々の面前で「狂えるオルランド」を語り聞かせる
作者ルドヴィーコ・アリオストさん。家系の賛美物語を聞かせるのは
当時の娯楽であったのでしょう。長い物語なので、一体にどれだけ
かかるんだろう。少年は飽きて寝てしまっているような・・・。
パラディンの代表である英雄ローランは、本来援軍を呼ぶのを嫌がるほど誇り高き人物なのですが、この物語では女性にうつつを抜かし、君主に「国に戻ってこい!」と言われても無視をするというダメ人間。しかも、失恋するやいなや、暴走して野獣と化すという・・・。聖剣デュランダルを持っているし、戦闘力は高いのだから、迷惑このうえありません。
しかも、イギリス王子であるアストルフォがヒッポグリフに乗って、月にまで行って「理性」を取り戻してもらう始末。こんなにヘタレで面白い英雄はなかなかいないと思いますw(誉め言葉)
もし、伝説のモデルになった本物のローランさんが読んだら、一体何を思うのでしょうか・・・。
→ ローランの歌についての絵画を見たい方はこちら
→ ギュスターヴ・ドレの描いた狂えるオランドの挿絵を見たい方はこちら<外部リンク>
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