弓引く者達の絵画13点。狙いを定め、矢を放つ。遠距離攻撃の礎である伝統武器 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

弓引く者達の絵画13点。狙いを定め、矢を放つ。遠距離攻撃の礎である伝統武器

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Sir Joshua Reynolds Colonel Acland  Lord Sydney1769 -

 弓。それは人類が石と投槍の次に手にした遠距離武器で、その使用は旧~中石器時代へと遡ります。最初は狩りの為に用いられてきた弓矢でしたが、時代が経るにつれて神事や争いにも用いられるようになりました。初期の戦争における弓の位置付けは重要であり、遠くから攻撃が可能である故に奇襲や狙撃に用いられました。弓などの遠距離攻撃は戦争の要とも言えます。
ショートボウやロングボウ、機械弓であるクロスボウやバリスタなど、弓は進化し様々に改良されましたが、その栄華は重火器が台頭するまでのこと。百年戦争の頃(14世紀末)の精度が低かった大砲は、ルネサンス期に入ると大砲、小銃共に精度が上がり、戦争の中心となっていきます。その結果、弓の存在は急速に薄れていってしまい、実際の戦争においては姿を消してしまいました。ただ、弓は貴族の作法や競技、物語の中などに生き残り、今に伝わっています。弓をきりりと引き絞り、矢を放つ。この一連の動作は優雅で凛々しく、魅力的に映りますね^^
では、弓を持つ者達の絵画13点をご覧ください。



「ブライソン・バロウズ作  1869-934年」
射手という題の作品。文明がまだ発達しておらず、狩りを
生業としていた時代でしょうか。三名の男性が何かを狙って
います。狩りの成功を祈ります。
Bryson Burroughs 1869-934

「ヘンリー・ド・フェラーズ作 11世紀頃」
鹿を狙う二人の狩人。自分の背丈ほどもあるロングボウを
用いているようですね。腰には剣や角笛が。
貴族のお坊ちゃんなのかしら?
 Henri de Ferrières, Les Livres du roy Modus

「作者不詳 19世紀」
射手の隊長とされる人物。緑の立派な衣服に身を包み、
誇らしげにロングボウを持っていますね。
かなり動きにくそうな服装ですが、腕はピカいちなのです!
19th  Watercolour - Captain of Archers

「ニコラース・マース作 1675-93年」
 貴族のお坊ちゃんの少年が、誇らしげに弓と矢を持っています。
犬もいるので狩りの主題でしょうか。中世では弓は「位の
高くない武器」として考えられていましたが、時代につれて
株が上がったようです。
Nicolaes Maes - Portrait of a young nobleman 1675-93

「ホーファールト・フリンク作 1639-40年」
弓を持つ黒人の少年の肖像画。若き射手という題ですが、
戦争において主流ではなくなっている為、絵画のテーマと
しての姿なのでしょう。絵になりますね…。
A Young Archer by Govaert Flinck 1639-640

「ジョシュア・レノルズ作 1769年」
アクランド大佐とシドニー卿とされている二人の射手。
躍動感がある素敵な作品ですね。彼等の位の高さと勇猛さが
弓を引く行為によって表現されています。
Sir Joshua Reynolds Colonel Acland  Lord Sydney 1769

「ジャン・マルク・ナティエ作 1685-1766年」
ディアナ(ダイアナ)としてのマダムBergeret de Frouville氏の肖像。
美しいご婦人が弓矢を持ち、女神に扮しています。
弓は神話の女神のアトリビュートとしても用いられます。
MADAME DE MAISON ROUGE AS DIANA JEAN MARC NATTIER

「ヘンリー・レイバーン作 1756-1823年」
弓をつがえる貴族のお坊ちゃん。伝統的な弓矢を廃れさせぬ
よう、イギリスでは必須の作法と定められていたそう。
Henry Raeburn

「ヘンリー・レイバーン作  -Dr Nathaniel Spens. 1791-93年」
弓矢の立派な肖像だから軍関係のお方かと思いきや、まさかの
スコットランドのお医者様!お名前はナサニエル・スペンス博士。
彼はロイヤルカンパニーオブアーチャーの会員だったようです。
型にはまった格好いい弓姿なのも納得です。
Henry Raeburn - Dr Nathaniel Spens. 1791-93

「William Beechey 作 1753-1839年」
モートン伯爵のジョージ・ダグラスさん。彼もスコットランド
出身の貴族で、上のスペンス博士と同じ服を着ていますね。
ロイヤルカンパニーオブアーチャー!
George Douglas 16th Earl of Morton, Sir William Beechey

「ウィリアム・パウエル・フリス作  1872年」
貴族のお嬢様だって、弓矢はたしなみのひとつ。
ひらひらのドレスをまといながら、的に狙いを定めます。
打ちにくくないのかしら…。
William Powell Frith, English Archers, 1872

「William Beechey 作  1789年」
楽しそうに矢をつがえる少年と、三人の愛らしい少女。
この矢は玩具だよね…!?うっかり打って刺さっちゃったり
しませんよね…?子供だって弓矢をたしなみます。
William Beechey The Oddie Children, 1789

「ジェームズ・アーチャー作 1823-1904年」
「よーし、クロスボウ(ボウガン)はこうやって打つんだぞ~」
「分かったよパパ!」「ふふふ、楽しそうね」「ワン!」
という感じの平和なワンシーン。…のはずですが、日本人の
私からすると、こんな幼い子に武器を持たせるなんて…!と
心配になっちゃいます^^;やはり国や時代の差ですね。
The Crossbow Lesson James Archer

弓を扱う者は俊敏な優男のイメージがありますよね。映画やゲームなどに登場する人物はいとも簡単に矢を放っているように見えますが、実際には引く力はかなり重たいです。
ショートボウ(100cm以下くらい)では詳しい数字こそ分からなかったものの、10~20㎏くらいはあると考えられます。ロングボウ(120cm以上の弓)では、ものによりますが引く力は45㎏くらいにもなったとか。45㎏ですと…!?弓兵の遺骨を調べると、左腕は太くなり、指などは変形していたとのこと。大変な反動であったようです。それにも関わらず、熟練者にもなると一分間に10本以上の矢を放つことができたと伝えられています。45㎏の重さものを6秒ペースで放つなんて。人間を6秒でぶん投げていくレベルですよ…。中世の弓兵、恐るべし。
オリンピックで使われているアーチェリーの引く重さは20㎏ほど(人によって違うみたいです)、西洋の伝統的なアーチェリーだと、45㎏の重さのものが普通にあるそうです。テレビで「格好いいなぁ…」と思いながら見ているアーチェリー。指だけで米袋を2~4個ほどぶら下げている競技だったなんて!衝撃です…。
ということで(?)、レゴラスはムキムキなんですね!Σ(;´Д`)(ぇ



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