ホムンクルスは錬金術師によって生み出された小人で、中世ルネサンスの時期に盛んに研究されました。
「フラスコの中の人」と言われている通り、フラスコに納まるくらいのサイズで、中から取り出したら死んでしまうとされています。産まれた時からあらゆる知識を有しているそうです。ホムンクルスの作り方としては諸説あります。一つ目には人間の精液を入れ、40日間密閉して腐敗させます。そうすると透明で人型のようなものが現れ、それに人間の血液を与え続け、馬の胎内の同温度で保温します。すると40週間後、人間の姿のホムンクルスが誕生します。
二つ目として、クリスタルガラスの容器に5月の三日月の夜露と青年の血液を適量入れます。一か月後に透明の液と赤い沈殿物ができますが、上澄みを取り、動物の抽出液を加え、下の赤い沈殿物は過熱をしながら一ヵ月置きます。やがて沈殿物は内臓や血管などを形成するようになり、それに4週間ごとに上澄みの液を振りかけてあげます。すると、4か月後には樹が生え、小さい少年と少女が生まれているのです。なんだか現実と幻想が入り混じった、不思議な作り方ですよね・・・。現代では「そんなのでできるわけないじゃん!」と思うのですが、当時の方たちは本気で取り組んでいたのでしょう。
ホムンクルスに関わる絵画11点をご覧ください。
「Mattheus van Helmont 作 17世紀」
ホムンクルスの研究は占星術、カバラ、黒魔術などの深い知識を
必要としました。錬金術師たちは文献やフレスコとにらめっこする
毎日だったのでしょう。
「作者不詳 19世紀」
ゲーテ作の「ファウスト」にもホムンクルスの製造シーンがあります。
ワーグナー博士がホムンクルスを生み出している場面。
彼はファウストの助手だった男性で、第二部の物語では大学者になって
ホムンクルスを創造することに成功します。
「作者不詳 19世紀頃」
ファウストは産まれたばかりの賢いホムンクルスと会話したそうです。
悪魔メフィストフェレスが覗き込んでいますね。ホムンクルスは完全な
人間になる為にフラスコごと旅にでますが、最期には消えてしまいます。
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「作者不詳 中世時代の挿絵」
下の火は過熱、上の太陽と月は時間の経過を表しているのは分かる
のですが、周りの鳥さんとフラスコの上の植物、ホムンクルスが持っている
蛇とカラフルな物体がよく分かりません・・・。
「作者不詳 15世紀の挿絵」
ホムンクルスの作品として紹介されていましたが、なんか化学の
調合を越えた状態になっています。フラスコと材料で人造人間を作る
話なのに、どうしてこうなった・・・。
「作者不詳 15世紀の挿絵」
これは上澄みの透明な液と赤い沈殿物を説明している絵のように
思います。ホムンクルスらしき人物が黄金の服装をして、十字架を
持っていますね。17世紀の秘密結社「薔薇十字団」がホムンクルス
製造に着手していたという噂があるので、それに関係が・・・?
「作者不詳 中世の挿絵」
ホムンクルスの製造を描いたらしき作品。ヘルメスを象徴する杖
ケーリュケイオンが右に描かれ、真ん中には小人、左には何故か
お料理されたらしき竜が描かれています。さっぱり分かりません・・・。
「ニコラース・ハルトゼーカー作の著書の挿絵 1695年」
ニコラースは著書の中で、人間の精子の中に小さい子供が入って
いると仮説しました。初めから性別が男女に分かれており、これが
卵子と結びついて生まれると考えていたのです。
「クエンティン・マサイス作 1466‐1530年」
錬金術師パラケルススの肖像画。彼は1493年にスイスで生まれました。
本業は医者でしたが、占星術や錬金術に深く没頭しました。彼は
ホムンクルスの作成に成功した最初で最後の者とされています。
「作者不詳 16世紀」
パラケルススとほぼ同じ時代に生きた、錬金術師ジョン・ディーの肖像画。
彼はホムンクルスの製造についての話はありませんが、パラケルススの
噂は必ず知っていると思うので、作ろうとしていた可能性があります。
「Miloslav Dvořak 作 1951年」
ゴーレムはユダヤ教の伝承に登場する動く泥人形です。
召使いのような存在ですが、使い方を間違えると狂暴化します。
ゴーレムは製造工程こそ違いますが、ホムンクルスと同じく
人造人間と言えるのかもしれませんね。
想像していたよりホムンクルスに関する絵画は少なく、肖像画やゴーレムで補填したことをお許しください。現代では漫画やアニメ、ゲームの影響でホムンクルスの知名度はかなりありますが、当時は一部の研究者やオカルティストなどしか知り得ない情報だったのでしょう。むしろ錬金術師や薔薇十字団は情報を秘匿にしたがっていたはず。もしかしたら、現在出回っている情報はデタラメで、裏に真実の製法が隠されているのかもしれません。その秘密の製法を使えば、ホムンクルスができる・・・のかもしれません。
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