錬金術師(アルケミスト)の絵画13点。賢者の石と金の錬成に生涯を掛けた研究者達 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

錬金術師(アルケミスト)の絵画13点。賢者の石と金の錬成に生涯を掛けた研究者達

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 錬金術師は卑金属からの金の錬成や、不老不死となる賢者の石やエリクサーの錬成、人造人間の錬成などを研究した者のことを指します。
 始まりは古代ギリシャからで、古代エジプトからイスラムに伝わり、12世紀には西洋でも盛んに研究されるようになりました。万物は火、風、水、土の四大元素から成り立っており、元素は分解や相互変化ができるとされました。この四つの元素を金の配合と同じにすれば金が生成できると考えられました。この思想は占星術と結び付けられ、神秘を纏っていく内に不老不死を可能とする「賢者の石」の思想も生まれることになりました。中世の錬金術師たちはこの物質を錬成しようと、こぞって研究を行いました。

 化学者としての発明も数多くあり、錬金術師は磁器の製法の発見、蒸留の技術、硫酸・硝酸・塩酸や実験道具の開発などを行いました。17世紀後半になると四大元素は否定され、アントワーヌ・ラヴォアジエが「質量保存の法則」と33ヶの元素を発表すると、錬金術は近代化学に変貌していきます。金や永遠の命を求める錬金術師の熱意が化学を底上げしたといっても過言ではないように思います。
 様々な実験を行う錬金術師の絵画、13点をご覧ください。

 

「ダヴィッド・テニールス二世作  17世紀」
錬金術師の家は様々な実験器具で溢れており、道具以外にも
吊り下げられている犬のような剥製や、壺のようなものが沢山置かれ
ています。錬金術師はふいごらしきものを持っているので、火を焚いて
いるのでしょうか。

「トーマス・ヴァイク作    1616–77年」
魂や神秘思想を扱う為、錬金術師は魔術師と紙一重でありました。
錬金術の始祖としての伝説の神人に、ギリシャ神話のヘルメス、
エジプト神話のトトが融合した、ヘルメス・トリスメギストスがおります。

「エグバート・バン・ヘームスケルク作  17世紀」
中世の考えでは、ヘルメス・メギストリスは賢者の石を製作できた
唯一の錬金術師とされ、エメラルド・タブレットやヘルメス文書の
著者とされました。

「フランソワ・マリウス・グラネ作  18世紀」
古代ギリシャや古代エジプトにおいての錬金術は、まだ卑金属を金に
変える研究でした。12世紀頃にイスラム錬金術が西洋に入って来た
時に賢者の石やエリクサーの思想が入ってきました。

「ジョセフ・ライト作  1771年」
「賢者の石を発見する錬金術師」や「リンの発見」ともされる作品。
1669年ドイツの商人ヘニッヒが実験でバケツ60杯分の尿を蒸発させた
ところ、リンを発見したとされています。この絵画は尿っぽくないし、
石っぽくもないので、霊薬エリクサーの発見なのかもしれません。

「Mattheus van Helmont 作   1771年」
賢者の石は卑金属を金に変え、人間を不老不死にする力のある
究極的な物質と考えられ、中世西洋の人々は賢者の石の開発に
夢中でした。錬金術は医学、化学、科学、生物、占星術、神秘思想など
あらゆる知識を必要としました。

「作者不詳 Julian Tuwim のコレクション  19世紀」
ポーランドの錬金術師Michael Sendivogiusを描いた作品。
また、錬金術師の研究は無生物から人造人間ホムンクルスを創造する
ということも行われました。

「ドイツ出身の画家作  17世紀」
老女が頭から謎の液体を頭に垂らしていますね。錬金術師は得体の
知れないことをやっていたので、胡散臭く感じる人もみえました。
いや、この方は単純に実験がうるさかっただけかもしれませんが・・・。

「ピーテル・ブリューゲル(子)作  17世紀頃」
錬金術師たちが集まって、一つの部屋で実験を行っています。
コミュニティで互いの情報を伝えあい、共有していたのでしょう。
ブリューゲルは錬金術師のことを、ちょっと危なげな人だと認識して
いたのでしょうかね。

「Jan Josef Horemans (子)作 18世紀」
錬金術は商人や貴族など、お金に余裕のある裕福層が行うことでした。
ただ、研究費は莫大なお金がかかるので、パトロンを募ったり頑張って
お金を稼いだりして研究を行いました。

「Franz Christoph Janneck 作  18世紀」
「賢者の石ができた!」と言って金持ちに売りつけるエセ錬金術師が
いたのも事実です。少量の金を卑金属に埋め込み、あたかも錬成できた
かのようにみせる者もいました。

「ヤン・マテイコ作  1867年」
金の生成を見せる錬金術師。片足立ちが様になっています。
権力者の中には金や不老不死を求める者がおり、錬金術師のパトロンに
なる者もいました。それほど裕福ではない者でも、その援助によって
研究が続けられたのです。

「フランソワ・ブーシェ作  1769年」
子供の錬金術師。
あれっ、金ができちゃった!みたいなノリなのでしょうか。
案外子供の想像力の方が、物凄いものを生み出したりするんですよね。

 錬金術が廃れてしまったことで、不老不死の研究は消えてしまったのでしょうか。いいえ、そうではありません。現代においてもそういった研究はなされています。
 生物の染色体の先っぽには「テロメア」という構造があります。それは繰り返しの配列を持つDNAとタンパク質から構成されており、細胞分裂を繰り返すたびにテロメアが短くなっていき、その長さが寿命を決めます。つまり、テロメアが短くならないならば、人間は不死になる可能性があります。

 また、ベニクラゲは不老不死のクラゲとして知られており、通常であるならば子孫を残して死んでしまうところ、ベニクラゲは衰弱した後、その個体は成長段階であるポリプに「若返り」をします。成長し、衰弱し、またポリプに戻るという永遠のループを繰り返しているのです。
 ベニクラゲはテロメアがなくなった時、テロメラーゼという酵素を分泌してテロメアを再び復活させます。それが人間にも適用され、短くなったテロメアを伸ばすことができれば、積年の願いである不老を手に入れることができるのです。

 なんだかロマンと不安を同時に感じさせる話ですね。もしそれが現実になったらどうなってしまうんでしょう。マイナス思考の私は、ホラー映画みたいな結果を引き起こしそうに思えてしまいます…。現代の研究者たちも、一種の錬金術師であると言えそうですね。

→ ホムンクルスについての絵画を見たい方はこちら

 

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