仮面舞踏会(マスカレード)は15世紀のイタリアより始まった、仮面を被って素性を隠し参加するダンスパーティーのことです。
イタリアのヴェネツィアでは、仮面を被って踊る「ヴェネツィア・カーニバル」が1162年頃に興りました。また、中世後期の宮廷内では、特別な機会の時に派手な衣装を着て行進したり、仮装して余興したりする「仮装舞踏会(モリスコ)」が流行っていました。これらのイベントが混ざり合い、仮面を被りながら踊る公的な式典である「仮面舞踏会」は誕生したのです。
仮面舞踏会は17、18世紀に西洋全土に広がり、上流階級の間で大人気のイベントとなりました。仮面をした者たちは素性が分からないよう工夫を施し、踊ったり話したりしながら誰かを当てるという余興を行っていました。目元だけではなく顔を覆うタイプのものや、装飾をしたものなど様々なデザインの仮面が生まれたのです。仮面舞踏会は人気すぎてトラブルも多く、決闘での死者や暗殺なども起きており、風紀を乱すイベントとして禁止令を出した国王もいたほどでした。仮面舞踏会の文化は現在でも受け継がれており、妖しくも華やかなダンスパーティが密やかに行われているのです。
仮面舞踏会に関する絵画13点をご覧ください。
「ピエトロ・ロンギ作 1750年」
仮面舞踏会に参加する人々。彼等は踊ったり話したりカード遊びを
したりと、各々で楽しく過ごしているようです。男性が白い仮面、
女性が黒い仮面を付けている人が多いようですね。
「ピエトロ・ロンギの追随者作 18世紀」
こちらも男性が白い角ばった仮面で、女性は真ん丸の黒い仮面。
この時代ではこれが流行っていたのでしょうか。それともルールが
あったのかな?女性の仮面がカオ〇シみたいで、こ、怖いです・・・。
「ロレンツォ・バルディッセーラ・ティエポロ作 18世紀」
トランプゲームとティーを楽しむ貴族たち。この優雅なひと時が
社交の場であり、自らの権力や財力を誇示する場だったのです。
「Matthijs Naiveu 作 1647-1726年」
外で仮面舞踏会を盛り上げようとする楽師たち。CDや有線がない
時代、生の音楽でしかBGMを流せないのです。楽師たちの地位は
高くなく、道化や芸人と似たような立場にありました。
「Willem Cornelisz Duyster 作 1620年」
電気設備のない西洋では夜が来たら真っ暗であり、松明の火だけが
頼りでした。雰囲気を盛り上げようと、夜に行われた仮面舞踏会も
あったのかもしれませんね。楽器を持ち、踊る楽師たちが不気味
チックでいい味を出しています。
「イタリア出身の画家作 18世紀」
この仮面舞踏会のメインは中央の男女二人だったのでしょうね。
奥に王と王妃がいるから、王子の結婚式だったのかもしれません。
右側でアレルッキーノ風の衣装を着た二人が夫人に甘い言葉を
吐いているように見えますが、どんな展開になっているか気になります。
「Angelo Caroselli 作 1585-1653年」
楽器を膝に置いて支度する女性に、「早くいくよ!」とせかしている
かのような魔女風お婆さん(?)。仮面のデザインから見ると男性
なのかな?口紅しているように見えるけど・・・。仮面舞踏会は
出会いの場でもあるから、女性のおめかしは欠かせません。
「フランス出身の画家作 18世紀」
怪盗みたいな仮面を被っている淑女。これくらいの仮面なら正体が
誰だかが分かってしまいそうですね。仮面舞踏会で正体がばれても
仮面は被り続けたんでしょうか・・・?それか「正解!」と言って仮面を
取ったのでしょうか。ちょっと気になる。
「Felice Boscarati 作 1721 – 1807年」
扇子を持って決めポーズをしてらっしゃいますが、こ、怖すぎます・・・。
それにしてもこの仮面、どうやってくっついているのでしょう?
鼻の部分で挟み込んでいるとか・・・?
「ダフィット・テニールス(子)作 1610-90年」
村の医者(薬剤師)だって、仮面舞踏会に参加します。カーテンの
隅からにょこっと出ているのは患者さん?ポーズを決めていないで、
お薬下さいよ~と言っているのかも・・・?
「アントワーヌ・ペスヌ作 1757年」
Egmont von Chasotさんの肖像画。フランス生まれにも関わらず、
プロイセンの将校と、都市の司令官として活躍した人のようです。
白に黒い縁があしらわれた、素敵な仮面を持っていらっしゃいますね。
「ヨーハン・ゾファニー作 1770年」
カラフルな衣装で道化師かと思いきや、紳士の服装のようです。
仮面舞踏会の中ではなんでもアリ状態で、このように派手な服を
着た人もいたのですね。自分の顔を仮面にするのも粋な発想です。
「ジャン=レオン・ジェローム作 1857-59年」
「仮面舞踏会の後の決闘」と題された作品。霧がかる雪の中で二人の
男がレイピアを持って戦い、瀕死の状態になっています。
二人の間に一体どういう問題があったのでしょう・・・。
現代に至るまで続けられている「仮面舞踏会」。
英語で検索してみると、各国で様々な仮面舞踏会が催されているのが分かりました。その中で、一番目を引いたのがヴェニスのカーニヴァルイベントで行われている、仮面舞踏会。
このような感じでパーティが行われているようです。
円卓を囲んでご馳走を食べたり、話し合ったり、ゲームをしたり・・・。服装や仮面のヴァリエーションは、過去とは比較にならないほど広がったと思いますが、「大変な世の中だけど、楽しんじゃおう!」という根本的な感情はルネサンス&近世から変わっていないように感じます。
仮面を被ることで「特別性」「異空間性」が高まり、より楽しめるという気持ちは、「仮装」することで楽しむハロウィンと通ずるものがあり、日本でも馴染み深いもののように思います^^
【 コメント 】
>> 録画したまま……だったものを観た人様へ
こんばんは。
ネロ帝を観ましたか^^
きっと、日本でのハロウィンや成人式よりもトラブルが沢山あったんでしょうね^^;
あじか売りって何ぞや?と思って調べたら、かご売りなんですね。
徳川家康も仮装大会をやっていたとは…。
はっ!サーカスはまだ記事にしていません。
いずれ特集を組みます!
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは。
あの仮面はヴィザードというんですね!
鼻で挟んでいたのではなく、口でくわえていたとは…。
社交の場なのに、喋れないのは致命的のように思いますが、逆に話せないからこそ仮面舞踏会のミステリアス性が増したのかもしれませんね。
褒めてくださりありがとうございます^^
これからもよろしくお願いいたします。
楽しそうですね。
でも、イベントにはトラブルがつきもの^^;
そして、仮面舞踏会には当てっこのような遊びの意味もあったのですね。
普段と違った恰好をするというのは、今も昔も気分転換になっていいお遊びなのでしょう。『真田丸』の仮装大会? であじか売りをやっていた徳川家康を思い出しました^^
次はサーカス特集かな?←ちゃっかり。
女性の黒い丸い仮面は16世紀に流行したヴィザードというものではないでしょうか。
口の部分に咥える部分があり噛んで固定したそうです。当然喋れず顎も疲れたのでは。
小説とかによく出るモチーフのわりにこういう仮面の集団絵はあまり見たことがなかったので面白かったです。