超個性的!豊穣な卵のマスターと呼ばれる、素性不明な画家の寓意的作品13点 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

超個性的!豊穣な卵のマスターと呼ばれる、素性不明な画家の寓意的作品13点

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 びっしりと描かれた人体と異形。転がる卵。滑稽めいた顔。寓意と風刺と謎がたゆたう、奇異な作品ー…。17世紀後半~18世紀前半頃に生きたとされる、不思議な作品の画家はこう名付けられました。
 「Master of the Fertility of the Egg (豊穣な卵のマスター)」と。

 画家の名称が分からない時、研究者は作品の特徴+マスター(ギルドの親方)という風に名付けます。中世~近代の画家は名前不明の者が割と多いのです。画家の代表作が卵をテーマにしたものだったので、「豊潤(または肥沃)な卵のマスター」と付けられました。
 彼はイタリアのブレシアで活躍したとされ、学者の説によると本名はベルナルディーノ・デホ(1675-1717)である、とかアンジェロ・エッセラッソである、とか言われていますが、定かではありません。同時期のブレシアで活躍したファウスティーノ・ボッキも奇妙な小人群を描いており、ボッキのサークルにいたのではないか、という声もあります。北方ルネサンスの巨匠ヒエロニムス・ボスから続く、グロテスクで奇妙な怪物の影響を受けていると考えられ、絵画には象徴に満ちた寓意や鋭い風刺などが込められています。とにかく個性的で、一度見たら忘れられないインパクトさを持っていますよね。

 では、「豊潤な卵のマスター」の作品13点の作品をご覧ください!題名はなく、色々と不明な部分ばかりで、私も全然分かっていません。翻訳は我流となります。ノリと勢いでご紹介しますので、 ご了承ください!

 

画家の名前の由来ともなった「卵の繁殖力」と名付けられた作品。
卵から生まれた異形の生物がびっちりと描かれています。
生命は皆、卵から出て増えていくというメッセージなのかしら。
右上の卵殻のザリガニが可愛い^^

「卵の繁殖力」バージョン2。小人の男が卵籠に座り、右側で
老婆が見上げるという構図は同様ですね。可愛いザリガニさんは
こちらでは、糸を紡いでいるようです。
糸紡ぎや右側のふいごは人生や生命のシンボルを表しています。

動物たちが集まり、何やら行っています。樽にいる動物達が
食べ物を左の者達に与えていますね。本当の解釈は全然
分かりませんが「市民を餌付けして扇動している」ように
私は感じました。表面の誘惑に惹かれて洗脳されゆくのか…。

カードやボールのゲームをして遊んでいる動物たち。
右上の家の主人が主催のイベントなのかしら。
異形の動物がいる不思議な絵ですが、平和で楽しそうですね^^

この作品、意味を解釈するのは困難とwikiにありましたので、
自由に想像しますw 鶏とカエルの決闘、邪魔したり煽る者、
製図描きのザリガニ、豚の生首と、カオスな状況ですね。
圧倒的にカエルが不利な状況から、仕組まれた罠を感じます…!(?)

ピンクの服を着た黒豚のような者が、コンパス(?)を手に持ち
演説しているようです。文章最初のFama volatはラテン語で
「噂が飛ぶ」を意味するそうで、噂を聞いて集まった人々を
表していそうですね。ただ、その内容は怪しそうですが^^;

ピンク服の黒豚さん再び。噂を聞いて集まった人々を勧誘し、
自分の思想を学んでもらっているようです。果たしてどのような
内容なのか…。小人さんのカリカチュアに満ちた顔が、
この集会がいいものではないことを物語っていますね。

ピンク服の黒豚さん×2! 文章には「Fe pian pian che il porco dorme」とあり、
訳が全然分かりませんが「痛み、豚、寝る」といった単語があるので、
「口だけ出して、争いは他人事」的な感じなのかしら。
集会の思想が分裂しているのかもしれません。

小人と動物たちの音楽セッション開始!一見賑やかで楽しそう
ですが、当時まだ宗教音楽以外は「世俗的で快楽をもたらす」と
して、忌避される風潮でした。ボスの「快楽の園」の音楽地獄も
それに関連した表現ですね。

wiki記載のタイトルが「動物達が遊んだり、産着に包まれた犬が
遊ぶグロテスクな情景」でした。めっちゃ遊んでる…。
今回は鳥類が多めな印象です。糸巻ザリガニさんや猫さんもいますね。
 

いぇーい!と飛んで指揮する小人に合わせ、合唱する動物達。
楽しそうに歌っているかと思いきや。ロープやほうきで邪魔が
入っています。どんな歌を歌っているのか、聞いてみたいですね^^

タッチが他と少し異なって見えますね。ボウルを渡す男女が
神話や宗教の物語に関連しているかと思いきや、そうでも
なさそうです。ただ、闇の部分は死者っぽい動物がいるので、
冥界を意識していそうですね。グロテスクで面白い作品です。

こちらは動物達がいなくなり、通常の頭身をした人々がいます。タイトルは「The luck of the foolish 」、愚者の幸運でしょうか。
檻に入った人々を検分したり、話したり、何やら契約したりと
不穏な動きを見せています。

 上記の作品の続きとなります。左の旗のラテン語は「私はルールを守る愚者の伍長です」と描かれ、右側のもう1つは「彼は幸運の為に充分に踊る」というように描かれているそうです。世界のしがらみに縛られながら、幸せを求めて抗う人々を表しているのでしょうか。またはルールを守りすぎて、幸運が掴めずに転覆してしまう人なのでしょうか。いずれにしても、世間を皮肉った象徴に満ちた作品ですね。

 また、真ん中くらいに紹介した絵画の「ピンク服の黒豚さん」は一説によると「占星術や神秘主義」を教えているオカルティックな者を象徴しているそうです。そうだとすると、オカルトまがいの話を噂に聞いて人々が集まり、先導者の学びの集会を開いて、分裂して破滅してしまうという、信憑性のない神秘主義を風刺する内容となります。

 グロテスクと謎でいっぱいの作品。記事を書いた情報源がほぼwikiだけなので、文献を漁ると色々内容が分かるかもしれませんが、深い真相はやはり謎に包まれているでしょう。何が正解なのかは「豊穣の卵のマスター」さんの幽霊に直接聞いてみないと分かりませんね。(幽霊に聞くという行為も、「オカルティックだ!」と彼に風刺画を描かれてしまいそうですが^^;)

<参考wiki>
→ Maestro della Fertilità dell’Uovo – Wikipedia
→ Category:Maestro della Fertilità dell’Uovo – Wikimedia Commons

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >>オバタケイコ様へ
    歌っていたり、ゲームをしていたり。作者さんも楽しんで描いていそうですよね^^
    ザリガニが好物なのかしら…(笑)
    カニも描かれているので、甲殻類自体が好きなのかも?
    群像画はまとまりをつくるのが大変ですが、ごちゃっとしているようで実は上手くまとまっていますよね。
    ころころした卵がかわいいです^^

  2. オバタケイコ より:

    何だかすごい画家さんですね(^-^;
    本人は描くの楽しかっただろうな~。
    ザリガニが好きだった事は確実ですね(笑)
    面白いだけじゃなく、絵も上手いし「動物達が遊んだり、産着に包まれた犬が遊ぶグロテスクな情景」は、背景が黒で構図も綺麗だし見とれてしまいました。ピンクのジャケットの黒豚いいですね!

  3. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    一度見たら忘れられない、素敵な絵ですよね。
    私もかわいいと思います~^^
    顔がどこかシュールで少し不気味さがあるところが、またいい味を出しています。
    滑稽で可愛くて風刺的で面白い。この絶妙なバランスが最高です。
    お洋服を着たザリガニさんもいいですよね~。
    確かに!タラ夫とぜひコラボして欲しいです!
    タラ夫がこの中に混ざっていても全然違和感ないです(笑)
    そんな本あったら、私も絶対に買ってしまいます!^^

  4. 美術を愛する人 より:

    奇妙で、でもユニークな雰囲気が癖になりますね!
    小人も動物達も個性豊かでカワイイと思ってしまいました☺️(私だけ?)
    ザリガニさん、目で追ってしまいました👀
    私はズボンを履いている子がお気に入りです🦞タラ夫と並んでほしい😁
    少し分厚い童話集の挿絵に使われていても違和感なさそうですね📖✨
    もし、そんな本があったら即買いします❗️

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