オリオンの絵画11点。アルテミスを愛しアポロンに謀れ、星座となった巨人の狩人 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

オリオンの絵画11点。アルテミスを愛しアポロンに謀れ、星座となった巨人の狩人

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 オリオンはボイオティア地方に住む巨人の狩人です。背の高い偉丈夫で、一説によるとポセイドンとミノス王の娘エウリュアレーの間に生まれたとされています。
 彼は恋多き男で、シーデーやメロペーという美女を愛しましたが、シーデーはヘラによって殺され、メロペーは彼の愛を拒否してしまいます。メロペーの父親によって目を抉られ、盲目となったオリオンは、暁の女神エオスと太陽神ヘリオスの力を借りて目を癒します。それからエオスや、プレイアデス七姉妹に恋をしたそう。恋多すぎですね…!

 その後、彼は女神アルテミスと恋に落ちることになります。二人はクレタ島で暮らし、結婚も考えるほどでした。しかし、それに激怒したのは彼女の兄アポロン。「妹は純潔を守らねばならん。こんなどこの馬の骨とも分からん、乱暴な男は言語道断だ!」と、オリオンの元に毒サソリを放ったのです。サソリに驚き、オリオンは海へと逃げました。それを確認したアポロンはアルテミスにこう言いました。「妹よ。いくら達人の君でも、あの遠くに光るあれは射れまい」と。「そんなことは容易いわ!」と、兄の挑発に乗ってしまった彼女は、オリオン目掛けて射ってしまったのでした。こうしてオリオンは恋人の手にかかり、命を落としたのでした。

 死体が浜に上がり、自分のやったことを悟ったアルテミスは、たいそう嘆き悲しみました。名医アスクレピオスに蘇生して欲しいと頼み込みますが、冥界王ハデスに反対されてしまいます。アルテミスは「ならばせめてオリオンを空に上げてください。私が夜空を走る時、彼に会えるように」とゼウスに頼み込みました。ゼウスはこれを聞き入れ、オリオンは星座となったとされています。
 では、オリオンにまつわる絵画11点をご覧ください。

 

「二コラ・プッサン作 1658年」
オイノピオン王によって盲目にされてしまったオリオン。
ケダリオンという者を肩に乗せ、彼は太陽神ヘリオスのに導きに
より、オケアノスへと到着します。そこの太陽を見た時、
オリオンの盲目は治ったのでした。

「ローマの工房の画家作  17世紀」
盲目となった巨人オリオンが彷徨うの図。足元の家を見ると、
彼がかなり巨大であることが分かりますね。ワイルドイケメン
であれば、何名もの女性との恋に巨大すぎる背丈も関係ない…!?

「ヨハン・ハインリヒ・ティシュバイン作 1762年」
女神アルテミスといちゃつくオリオン。巨人が関係なくなり、
イケメン美青年になっておりますね。この関係が気に入らない
兄アポロンは策略を練り、オリオンは命を落とします。

「ダニエル・シーター作 1685年」
アルテミスの矢で息絶えたオリオン。彼女は名医アスクレピオスに
蘇生を頼みますが、冥界王ハデスに拒否されてしまいます。
あられもない姿で倒れているオリオン…。

「ギイ=ニコル・ブルネ作 18世紀」
オリオンの死と題された作品。首に立った矢と、足元の矢筒で
表現しています。ただただ、美青年のお身体が描きたかった
だけに感じますね…^^;

「作者不詳 18世紀の挿絵」
望遠鏡を使ってオリオン座を見上げる天使さん。
この星々の形を見て、オリオンの人格や物語を想像した
昔の人のイマジネーションに脱帽です。

「作者不詳  15世紀の挿絵」
中世のオリオン座。巨人の狩人というより中世の騎士ですね^^;
剣二振りと個性的な盾を装備して、はいポーズ!

「作者不詳 1482年の挿絵」
こちらはルネサンス時代の挿絵。手持ちが棍棒になったものの、
やっぱり騎士ですね。15世紀に神話がどのように伝えられていた
のかが気になります。くるくる巻き髪がセクシーです。

 「ヨハネス・ヘヴェリウスの書籍の挿絵 1687年」
中世の騎士は脱出できましたが、ギリシアの戦士という感じに
なりましたね。棍棒と盾、剣はやはり所持しています。

「作者不詳  1825年の挿絵」
現代の私達が想像するような姿になりました。こうして見ると、
棍棒と獅子の皮がヘラクレスと似通っているような。
ヘラクレスはゼウスの子で、オリオンはポセイドンの子で
生い立ちは違えども、謀略で死を迎える部分も共通点がありますね。

「イスラムの彩色写本の挿絵より 13世紀」
おりおーん!!!???

 最後の中世イスラムのオリオンのインパクト、半端ないですねww
 アポロンの奸計によって命を落としてしまったオリオンですが、サソリによって殺されたという説もあります。一説によると、巨人でかなり強いオリオンは力を自慢するようになり、「俺が地上のあらゆる獣を狩りつくしてやるぜ!」などと豪語していました。それを不満に思っていた女神(ゼウスの妻ヘラであったり、大地の女神ガイアだったりします)は、彼にサソリを放ちます。サソリの毒にやられ、オリオンはあっけなく命を落としてしまうのでした。
 オリオン座は冬、さそり座は夏の星座。双方は決して同時に出ません。サソリが姿を現す時、オリオンはもう二度と毒にやられぬよう、そそくさと地平線の奥へと逃げていくのでしたー…。
 どちらの説だったとしても、なんというか格好がつかない死に方ですね…^^;どんまい、オリオン。

 

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【 コメント 】

  1. オバタケイコ より:

    いわゆる細マッチョですね。いいですね~💖
    ギイ作、本当に美しくて何度も見ちゃいますww

  2. 管理人:扉園 より:

     >> オバタケイコ様へ
    オリオンの物語もいいですし、様々な時代や国のオリオン座のイメージを見るのも面白いですよね♪
    中世、ルネサンス、近世、イスラムのオリオン七変化がどれも傑作です!
    ギイ作は「んもう、オリオンを口実にして美青年の肉体を描いて~はれんち~!」と思うのですが、気になって掲載してしまうという(笑)
    私は細身に見えて、実は筋肉がある人がいいかしら^^
    中国雑技団にめっちゃいそうですw
    余裕の笑みを浮かべながら、このままくるくると宙返りしていそう…。

  3. オバタケイコ より:

    うーーーーーん、読み応えありました。
    神話世界、面白いですね!
    オリオン座、これから見る目が変わります。
    ギイ=ニコル・ブルネ作 は、本当に美しい肉体を描き切っていますね!私は細見が好きだけど、これを見たら筋肉しっかりある男体もいいなぁ。。。と余計な事を考えました(^-^;
    ルネッサンスの挿絵はメッチャお洒落ですね💗
    イスラムの彩色写本の挿絵、超笑える!中国雑技団にしか見えません。

  4. 管理人:扉園 より:

    >> 美術を愛する人様へ
    星座の世界も奥深いですよね^^
    夜空を見て星座を学びたいなと思いつつも、オリオンとカシオペヤと北斗七星くらいしか見分けられません…。
    ギリシア神話は悲恋ばかりですよね(汗)
    ヒュアキントスやアドニスなど、神に愛された者は死にゆく運命のなのでしょうか…。
    そんな中で、プシュケーとクピドの結婚はほっとします。
    アポロンとダフネの物語は一度知ったら忘れられないですよね。
    なんというか神話のエッセンスが凝縮された、ギリシアらしい素敵な物語です。
    ゼウス様もヘラ様がいる限り、めでたしめでたしな結末になるのが難しそうですね…^^;
    めでたしなお話ですと、バウキスとピレーモーンの老夫婦の物語が好きです。
    二人は木になり永久に寄り添う。美しい憧れるような愛です^^

  5. 美術を愛する人 より:

    オリオン座は夜空を見上げるとすぐに視界に入る程、見付けやすい星座の代表ですね!
    詳しい内容までは知らなかったですが、恋人を射てしまったアルテミスに同情してしまいました。
    神話に出てくる神々や人間の恋愛は、悲恋が多い気がします。
    今回、悪役?に回ってしまったアポロンも、月桂樹のお話がありますし…(個人的にはとても好きな話で、関連する絵画や彫刻も大好きなのです(^^;💦)
    たまには、みんな幸せに暮らしました…めでたし、めでたし!で終わらせてよ~😭とゼウス様にお願いしたいですね。

  6. 管理人:扉園 より:

    >> 美術を愛する人様へ
    確かにそうですよね。
    現代に生きる私達に比べ、遥かに綺麗な夜空を眺めることができたからこそ、生まれた神話なのかもしれません。
    天の川ですら見え辛くなってしまっている日本。
    星に込められた物語を守る為、星が眺められる環境を大切にしていきたいですね。

  7. 美術を愛する人 より:

    地方に行くと都会より星がたくさん見えます。
    電気がなかった中世では今の私たちより何倍もの星が見えていたでしょうし、だからここまで細かく星座が描写できたのだと思います。

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