ダナエはギリシャ神話に登場するアルゴスの王女で、ゼウスとの間に英雄ペルセウスをもうけました。
ある日、アルゴス王アクリシオスは世継ぎについての神託を求めました。結果は「息子は生まれないが、男の孫ができてお前は孫に殺される」という恐ろしいものでした。王は慌てて娘ダナエを青銅の部屋に閉じ込めたのですが、神の王ゼウスが彼女に目を付け、黄金の雨に化けて関係を持ってしまったのでした。
年月が経ち息子ペルセウスを産んだダナエ。アクリシオスはおののきながらも娘と孫を殺すことをためらい、二人は箱に入れられて海に流されたのでした。箱はどんぶらこっこと海を漂い、運よくセリーポス島に漂着して二人は漁師に救われたのです。その後も神話は続きますが、画家達にとって部屋に閉じ込められたダナエの元に、金の雨に変化したゼウスが現れる場面は需要のあるシーンだったようで、多くの作品が残されています。
では、ダナエの絵画13点をご覧ください。セクシーな描写が含まれますのでご了承ください。
「ベルギーのブリュージュにある彩飾写本より 1470-80年」
中世ルネサンス時代のダナエ。なんかもうツッコミどころが色々と
ありますね。ベッドに金の雨が降っておりますが、横にゼウスが
ちゃっかりといます。それにしてもダナエの頭の団子はなんだろう。
「ヤン・ホッサールト作 1531年」
北方ルネサンスの美しい描写のダナエ。晴天にもかかわらず、
座り込む彼女の頭上から金色の雨が降り注いでいます。晴天と
雨という対比が神秘的な雰囲気を醸し出していますね。
「Antonio Bellucci 作 1654-1726年」
史実には乳母の記述はありませんが、乳母を描く作品は数多く
あります。子供を授ける場面だから育てる乳母もいるみたいな
感じなのでしょうか。ダナエの座り方や乳母の布を持つ手など、
ティツィアーノの作品を彷彿とさせます。
「ダニエル・マイテンス(子)の追随者作 17世紀頃」
突然ばらばらと降り注いでくる金貨に驚くダナエ。黄金の雨を
金貨として表現する作品もあります。右側のキューピッドは二人で
何をやっているのかな?羽の毛づくろい?←ぇ
「イタリアの工房作 17世紀」
眠るダナエの元に雨ではなく直接ドロンと来てしまったゼウス様。
全然黄金の雨じゃない・・・。
「ヘンドリック・ホルツィウス作 1558-1617年」
こちらはゼウスが鷲の姿として登場。しかも乳母だけではなく、
沢山のキューピッドやヘルメスまでもが来てしまっています。
セキュリティが甘すぎますよこの青銅の部屋!
「レンブラント・ファン・レイン作 1636-43年」
他の賑やかな作品とは異なり、静かな雰囲気を称えたレンブラントの
作品。苦悶の表情を浮かべた黄金のキューピッドは何を意味して
いるのか様々な解釈があるそうです。それにしても乳母が怖い。
「ピーテル・パウル・ルーベンス作 17世紀」
こちらもゼウスがそのままの姿でドロンと現れています。
黄金の雨感はゼロですね。鷲はゼウスの化身ですが、こちらでは
アトリビュートとして用いられているようです。
「ガスパール・バセラ作 1560年」
こちらのゼウスはじゃらじゃらとした金貨の雲に乗って登場です。
どうしてダナエさんこんなにセクシーポーズなのだろう。そして
どうして乳母までもが服を着ていないのだろう・・・。
「ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ作 1696-770年」
こちらはかなり開放的な空間のダナエ。お父さん、娘を閉じ込めておく
気がありませんね!ゼウスも堂々と侵入してしまっています。
鷲の登場に、わんちゃんがびっくりしています。
「ヨアヒム・ウテワール作 1566-1638年」
ドカーン!と雲の合間から現れたゼウスにかなり驚くダナエ。
乳母も全力で仰天しているようです。だから、何故乳母の服が・・・。
「ヴェネツィア派の工房作 17世紀」
背景を排し、ダナエを主眼に置いた作品。金貨付きの雲がダナエに
覆いかぶさり、キューピッドは「しーっ」と何も言わないよう私達に
語りかけています。
「ヨハン・ハインリヒ・フュースリ作 1741-1825年」
このせいでペルセウスを身籠ってしまった
ダナエ。二人は父によって
箱に入れられて海へと流されてしまいます。とんでもない事件で
授けられた命ですが、ダナエにとってはかけがえのない息子。
漁師によって助けられた彼女は息子を大事に育てたのでした。
1985年の6月15日のエルミタージュ美術館。そこで大事件が起きました。リトアニアの男性がレンブラント作の「ダナエ」に硫酸を浴びせ、刃物で二回切りつけたのです!
この男性は美術館に入館した際、「どの作品が一番価値があるのか」と職員に問いかけ、その後犯行に及んだそうです。「ダナエに誘われたからやった」という不可解な言動をしており、男性は精神病院へと送られて6年間入院したそうです。被害を被ったダナエは12年間を掛けて修復作業が行われましたが、元通りにはなりませんでした。
絵を描き、芸術を愛す身としてはこの事件はとても悲しいです。ただ、レンブラントのダナエはそれだけ価値があり、魅力的で美しい作品だということなのかなとも思いました。
→ ダナエの絵画をもう少し追加で見たい方はこちら<日本版Wiki>
→ 英雄ペルセウスについての絵画を見たい方はこちら
→ フュースリについての絵画を見たい方はこちら
【 コメント 】
>> びるね様へ
こんばんは^^
ウワテールの乳母は顔は老婆なのに、体つきが青年に見えますよね(汗)
二の腕とかふくらはぎとかムキムキですし…。
青年モデルを見て描いたか、過去の巨匠の作品を真似て描いたような気が私もします。
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは^^
その可能性もありそうですね。
または「金色の雨として描くと遠距離から鑑賞した場合に見にくい」という理由も考えられそうです。
黄金の雲や金貨の方が遠目でも分かりやすいですから。
レンブラントの作品は宗教画や民衆画のイメージがあり、裸婦画って数多くないですよね。神聖と世俗の垣根を表現したのかもしれませんね。
ウテワールの乳母、イニューディそっくりな気がします。
黄金の雨を金貨で描く絵が多いのは、黄金の雨自体がピンと来なかったからだと想像しているのですが。
レンブラントの静謐な絵を見ると、受胎告知との差別化で、わざと俗っぽい描写にしたのかと思えなくもないです。
>> 黄金の雨はまだでしたか(笑)様へ
二回ずつ撮られていたのですね!
なら違う方を観たのかしら…?
記憶が曖昧なので、もう一回観たいと思います^^;
コメルさんのダナエは白く眩しいお姿ですね!
掲載するにはお肌の露出が…。あ、今掲載しているダナエとそう変わらないかも。
段々と基準が分からなくなってきました(笑)
>> フュースリおたく様へ
こんばんは^^
やっとダナエが登場です。
神話的にはペルセウスの出生についてなのでそこまで記述は多くないのですが、美女のセクシーシーンということで人気が集まるのでしょうね^^;
確かにイタリア画家に金貨の表現がみられますね。
メディチ家との関連は有り得そうに私も思います。手元にお金がありふれていたか、もしくは「お金と愛は結びついている」という皮肉が込められている…!?
>> オバタケイコ様へ
近代の画家とはいえ、帝政オーストリアでは官能的な作品はタブー視されていたようなので、ダナエの作品についてなかなかな物議があったかもしれませんね^^
『タイタンの戦い』『タイタンの逆襲』は、それぞれ二回撮られているので、見たのが違うほうかもしれないですね。2010年代だったかな、私が見たほうは。
そうそう。ダナエの絵といえば、レオン・コメルさんのが好きです( ̄▽ ̄)
ダナエはまだ特集なかったんですね〜。ルネサンスからロマン派までいろんな画家が描いてる!金色の雨と、美女の裸体が描けるからみな力入れてるんですね(笑)
イタリアの画家の間では、なぜか雨が金貨になるんですね。そういえばオラツィオジェンティレスキやティツィアーノも金貨だったような。あの頃のイタリアって、メディチ家の庇護を受けてたから、ちょっと成金趣味なのかも(笑)
あ、クリムトのダナエはご存じだったのですね!あの絵が公開された時はセンセーショナルだったでしょうね。(´艸`*)
>> オバタケイコ様へ
こんばんは^^
ダナエは頭頂に団子を作り、更には塔に閉じ込められたストレスで髪が抜け落ちてしまったかもしれません(:_;)
クリムトのダナエは有名作品であり、なおかつセクシーすぎるかなと思って掲載を控えさせていただきました^^;
クリムトらしい黄金の色彩、子宮で眠る赤ちゃんのような穏やかな雰囲気で私も好きです。
>> 美術を愛する人様へ
こんばんは^^
金の雨…象徴的に解釈するとなると、色々と言葉を濁しちゃいます^^;
ルネサンスやバロックより、中世寄りの方が表現が生々しいというw
白鳥や他の神とは違い、無機物だから変身の難易度高いですよね。
ゼウスは雷を司る神だから雨もOK!という考えなのかもしれません。
(北欧神話のロキとヘイムダルも雲やら雨に変身している逸話があるので、神様は何でもできる!という考えもあるのかな)
セクシーな作品の需要は、昔も今もあるんですよね^^;
このテーマやスザンナと長老、クレオパトラなど「わっー!」となる掲載できないような過激なものもありますから…。
確かに貴族の同人誌って感覚もあるのかもしれません。
現代のコミケに通ずるものが…!?
>> 黄金の雨はまだでしたか(笑)様へ
こんばんは^^
皮肉に彩られた黄金の雨が遂に解禁です(笑)
過激のを避けつつ、オブラートにお包みしながら掲載することにしちゃいましたw
キュベレー様に比べたらまだセーフ!?
なるほど。塔に閉じ込めたのは人間対策で、神様まで加味されていなかったのかもしれないのですね。
神様対策をしていたら、ゼウスが「けしからーん!」と怒ってダナエに関係を持つばかりか、王を消し炭にしちゃうのですね^^;
「タイタンの戦い」は見た記憶がありますが、ゼウスそのままやって来ていましたっけ…?
黄金の雨は家屋侵入の手段で、家に入ったら元に戻ったという解釈なのかもしれませんね。
ダナエの頭の団子、爆笑です。ってか、ダナエ、剥げてますね?
相変わらず、コメント冴えてますねっ‼💖💖💖
私もこのエピソードはエロくて大好きですが(笑)このテーマをクリムトが描いたやつが一番エロいと思います。https://www.google.co.jp/search?hl=ja&tbm=isch&source=hp&biw=1366&bih=642&ei=aBGgXPbBMeTKmAXsqb6YCw&q=%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%A0%E3%83%88%E3%80%80%E3%83%80%E3%83%8A%E3%82%A8&oq=%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%A0%E3%83%88%E3%80%80%E3%83%80%E3%83%8A%E3%82%A8&gs_l=img.12…1832.7685..10387…0.0..0.134.1709.3j13……0….1..gws-wiz-img…..0..0i4j0j0i4i24.g46rbWNO45o#imgrc=_
金の雨って…解釈力試されますよね(汗)
と思ったら1枚目がなんか嫌に生々しいww
確かにアルテミスとか白鳥とかに変装してきたゼウス様ですけど未だに金の雨だけは読み間違いか何かとしか思えないですw
ただやっぱり需要あるんですね
こういう絵画って今でいう同人誌みたいな意図で描かれてそう??
いつだったか、コメント欄で「ダナエと黄金の雨特集は、画題的に品がないからブログじゃ無理だよなあ……」とコメントした記憶があります(笑)
キュベレーが出たので、もうなんでもありですね( ̄▽ ̄)←
当時の感覚だと、おそらく上は空いてても大丈夫だったのではないでしょうか( ̄▽ ̄)
高層階なら、まさか壁をよじ登ってくる人間がいるとも思えず、下手に神様対策したら「不遜な人間め」と逆に寄せつけてしまうかもなので……( ̄▽ ̄)
ところで、『タイタンの戦い』(新しいほう)を見たときにどうしてゼウスがそのままの姿なんだと思いましたが、黄金の雨ではなくゼウスそのままってのは、昔からあった表現なのですね。