あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します^^ 2019年一発目の記事はこんな内容です。
アテナイの王ケクロプスの娘達は、禁断の箱を開けて破滅した話と、ヘルメス神を巡る愛と嫉妬話の二つのギリシャ神話の逸話に登場します。
娘達はアグラウロス、ヘルセー、パンドロソスの三人姉妹で、ある日彼女たちはアテナイの守護女神であるアテナから箱を預けられました。「開けてはならない」と厳命されていたにも関わらず、アグラウロスとヘルセーは興味に負けて開けてしまいます。入っていたのは下半身が蛇の赤ん坊エリクトニオス。この赤子はヘパイストスの暴走(?)によって産まれた子で、アテナは一人前の子に育てようと蛇と一緒に箱に入れていたのでした。禁断を侵した二人は蛇に噛み殺されたとも、アテナの怒りを買って気が狂い、アクロポリスから身を投げたとも言われています。
また異なる逸話によると、姉妹達はアテナの約束通りに箱を預かっていましたが、アグラウロスだけが中身を見てしまい、「開けたよ~」とカラスが女神にそれを知らせました。この時アテナは彼女の所業を許したかに見えましたが、実は根に持っていました。月日は流れ、ヘルセーがヘルメス神と恋仲になりました。アグラウロスは激しい嫉妬を覚え、二人の仲を引き裂こうとあらゆる事を行います。この感情を生じさせたのがアテナであり、女神は嫉妬の擬人に「やってちょうだい」と頼んだのでした。ヘルメスが家に再びやってきた時、アグラウロスはヘルセーの部屋の前に座り込み、「私の方が良いのよ!」と神の侵入を妨害しました。怒ったヘルメスは彼女を石に変えてしまったそうです。
では、ケクロプスの娘達にまつわる絵画13点をご覧ください。
「Jasper van der Lanen 作 1620年」
女神アテナに「開けてはならぬ」と言われた箱をぱこっと開けた
姉妹達。中から現れたのは下半身が蛇とされる赤ん坊エリクトニオス。
あれ、なんだか二足歩行に見えるけれど・・・。
「ピーテル・パウル・ルーベンス作 1615年」
ルーベンスもこのテーマを描いています。エリクトニオスは
ヘパイストスがアテナを襲うのを失敗して大地から産まれた子
なので、愛のエロスや豊穣の象徴の像が描かれていますね。
「ヤーコブ・ヨルダーンス作 1617年」
ルーベンスかと思ったらヨルダーンスでした。彼もかなり豊かすぎる
女体を描いていますね。中央の方が籠のエリクトニオスを持っている
のですが、肌色過ぎてちょっと見にくいですね・・・^^;
「ヤーコブ・ヨルダーンス作 1635-40年」
ヨルダーンスさん二枚目。女性のふくよかさは落ち着き、画家の
個性が確立されてきたように見えます。籠の開け方が雑っぽくて、
アグラウロスと思われる方が「なんだ~赤ちゃんか~」みたいな
表情をしていますね。
「ヨハンネス・グラウバーの追随者作 1670 – 1729年」
ケクロプスの娘達のもとへびゅーんと飛来してくるヘルメス神。
一説にはヘルセーとの恋仲となっており、逢瀬を繰り返していたの
でした。こんな風に来たら凄く目立ちますよねw
「ポール・ブリルの追随者作 1674年」
夕方にもびゅーんとやって来るヘルメス神。
ゼウスの使者としての仕事を行っているヘルメスは旅人の神であり、
たまには気晴らしをしたいですよね。←ぇ
「セバスティアーノ・リッチの工房作 1659–1734年」
こちらは箱を開けようとしているアグラウロスの元に、アテナでは
なくヘルメスがやって来ています。いや、ヘルメスの視線は
ヘルセーであり、エロスが矢を放っているので結局はヘルセーとの
ラヴラヴさを伝えようとしているのですね。
「ジャン=バティスト・マリー・ピエール作 1714-89年」
アテナの手回しにより嫉妬に憑りつかれてしまったアグラウロス。
彼女はヘルセーに激しく嫉妬し、ヘルメスを誘惑しようとします。
しかし神は怒ってアグラウロスを石に変えてしまったのでした。
「Gerard de Lairesse 作 1640-1711年」
ベッドに座ってセクシーなポーズをとるヘルセー。建物の入り口には
ヘルメスがおり、アグラウロスが全力で侵入を阻止しています。
なんかアグラウロスが可哀想に見えてきました・・・。
「二コラ・プッサン作 1624-26年」
プッサンもセクシーヘルセーと可哀想なアグラウロスを描いて
おります。既に石になりかけていますね・・・。
「パオロ・ヴェロネーゼ作 1576-84年」
このシーンは想像以上に画家に描かれていました。
「開けてはならない」のテーマより愛憎に関するテーマの方がやはり
人気なのですかね。
「カレル・ファブリティウス作 1622-54年」
物凄く個性的なアグラウロス&ヘルメス。最初この人がヘルメスだと
分かりませんでした。ちゃんと見てみると、ケーリュケイオンと翼の
サンダルがありました。凄く真面目な顔で石に変えようとしています。
「Louis-Jean-François Lagrenée 作 1725-1805年」
完全に二人だけの世界に入ってしまっています。背後から嫉妬の
眼差しで見つめるアグラウロス。禁断の箱を開けたアテナ様の
お怒りとは言え、残酷な刑罰でありますね・・・。
娘達の父親であるアテナイの王ケクロプスは、息子エリュシクトーンが夭逝してしまった為に、次期の王位を有力者クラナオスに譲りました。クラナオスはその後、アムピクテュオーン(デウカリオンとピュラーの子)に王位を追われてしまいます。
箱に入れられていた半人半蛇のエレクトニオスはアテナによって育てられることとなり、立派な若者に成長してアムピクテュオーンを追放してアテナイの王となりました。そして、エレクトニオスはアクロポリスにアテナの木像を設置し、アテナイの最大の祭典であるパンアテナイア祭を始めたそうです。
結局アテナに育てられて立派なアテナイの王になったのなら、エレクトニオスを箱に入れてケクロプスの娘達に預けた理由は一体なんだったのだろうと思ってしまいます・・・。蛇と一緒に入れて成長させる為とされていますが、ヘパイストスと大地(?)の息子であるエレクトニオスを本音では育てたくなかったのかな。もしくはアテナを守護女神として崇める、アテナイの王の娘達の信仰心を試す為だったのかな・・・?
その結果は悲劇に終わってしまいましたね^^;
【 コメント 】
>> 季節風様へ
こんばんは^^
神様の言いつけを破ったとはいえ、わざと嫉妬の感情を植えつけるなんてアテナ様もやる事が回りくどいです。
ヴィーナス様より恐い仕打ちかも…。
ヘルセーが一言「やめて」と言えば、ヘルメス神は彼女を石に変えずに、嫉妬の呪い(?)にかけられているのに気付いて治してもらえたかもしれないのに、そうしなかった所を見ると、ヘルセーも姉を「邪魔な恋敵」として見ていたのかな…。
やはり可哀想ですね(> <)
こんばんは。
最後の作品ではアグラウロスは石になっていなくて「家政婦は見た」状態ですが、入り口でヘルメスを止めようとする命知らずアグラウロスは可哀想です。ヘルセーは姉を救おうとしてないですね。
>> オバタケイコ様へ
こんばんは^^
蛇を尻尾にした画家は、エレクトニオスは後に王となってアテナの像を建てるほどの人物となるから、下半身全部が蛇となってしまったら、生活に不便なのではという配慮なのでしょうかね?(笑)
並べて作品を比較してみると、色々とツッコミたくなってしまって^^;
(むしろツッコみたくなる作品を選んで掲載している部分もあります)
「←ぇ」は自分自身のコメントをツッコんでいる感じですね。
「ww」や「(笑)」なんかと似たような感じの、ネット用語だと思います。
正直言ってよく理解できないまま使っています(/ω\)
初めの絵、完全に二足歩行ですね。しっぽが蛇。。。
ヤーコブ・ヨルダーンス作、赤ちゃん転げ落ちてますね。(笑)
扉園さんの目の付け所とツッコミが面白くて爆笑してます(≧▽≦)
ところで前から気になってたのですが、文末に出てくる ←ぇ は、どんな意味ですか?えーっ⁉じゃないですよね?
>> 大阪無残様へ
こんばんは^^
あわわ、そう言われるとそうですね(> <;) ローマ=英語だとなんか恐ろしい勘違いを起こしました…。 英語はセーラームーンと一緒ですね。←ぇ 普段何気なくバラバラに呼称を呼んでいるので、どれがどの呼び方なのかを意識していませんでした。学ばなくては。 あ、ケクロプスの方でしたかw 大地の恵みのテーマだからこそ、豊穣や愛の象徴に溢れているのですね。
あ、参考までに。
マルスは英語だとマーズです。ローマ神話での軍神ですね。
アレスは、もとのギリシャ神話の神で……、ローマ神話のマルスとは同一視されているものの、本来の性格(というか位置付けというか)は別……のはずが、絵画では「マルス」といってアレスを指していたりします。同一視なので^^;
ユピテルはジュピター、ウェヌスはビーナスですね。クピドがキューピッドかな。
それぞれギリシャ神話では、ゼウス、アプロディテ、エロース……にあたると思います。
あ、ルーベンスのテーマ、ではなくて、ルーベンスの描いたケクロプスのテーマでした^^;
>> 大阪無残様へ
こんばんは^^
ルーベンス展へ行きたかったのですが、結局東京へ行けずじまいでした…(T_T)
くやしいのでケクロプスの娘達を紹介ですw
ルーベンスが生きていた時代に徳川家康が天下統一を目指していたと考えると、なんだか不思議です。
なるほど「恵み」ですか。だからあんなにふくよかな肢体になっていったのですね。←ぇ
レアを見初めた時はおじさん風マルスなのに、ヴィーナスとキューピッドの方はカメラ目線キザマルスなのですねw
個人的にパエトンの墜落をじっくりと見てみたかったです~!
確かにマルスは英語だとアレスになりますね。
アテナもミネルヴァと掲載される事が多い気がしますし…。
でも、ゼウス&ユピテルは両方とも掲載されているような気がします。
(アングルの作品はユピテルとテティスですね)
うーん、考えれば考えるほど訳が分からなくなってきましたw
ルーベンスの絵、見てきました。
描かれたの、ちょうど大坂夏の陣の年ですね。(翌年に家康とシェイクスピアが亡くなります……、そんな時代)
ルーベンスのテーマは恵みだそうですね。大地の恵み……だから、あんなに明るいのですね。
愛の神に見つめられてるのが例のロマンス・ヘルメスの……( ̄▽ ̄)
展覧会で好きになったのは、ヴィーナスとキューピッドとマルスの描かれた絵で、マルスがごつい青年またはおじさんではなくて綺麗めイケメンだったやつ(笑)
ところで、日本語で展示するときの絵画の題って、なぜ「マルス」だけ、英語読みじゃないんでしょうね……
>> ヘルメス災難様へ
こんばんは^^
直接的な被害はないけれど、ヘルメスとばっちり喰らっていますよねw
アグラウロスを石に変えてから少し不憫に思っていたりして…。
「触らぬ女神に祟りなし」ということで、ヘルメスは何も気付いていないふりをしていたかもしれませんね。
デウカリオンの子供アムピクテュオーンが、エレクトニオスが王になる為の準備段階のように扱われているのは、私も少し残念に思います。
ギリシャ神話にはなかなかハッピーエンドが訪れませんね^^;
ヘルメス神がかわいそうですね。
復讐のためにめんどうくさい目に遭わされて、さらにあの親切をつくしてくれたデウカリオンの子供が追放される羽目になるなんて……
まあ、飄々としたヘルメス神のことですから、「あの女神とやりあってもいいことないやー」って感じであっさりしてたのかもしれませんけど^^;