中世写本の装飾文字人間の作品13点。アルファベットがシュールな生物に変化する | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

中世写本の装飾文字人間の作品13点。アルファベットがシュールな生物に変化する

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 皆様は中学か高校の美術の授業で、漢字をイラストで表現するという授業をしたことはありますか?例えば「雲」という漢字をもくもくとした雲で描いてみたり、「猫」と言う漢字を寝転がる猫として描いてみたり。
 なんと、似たような事を中世時代の西洋人もやっていたのです。
 中世の彩飾写本に描かれている頭文字は、イラストで描かれているものがあります。それらの多くは人間や怪物、物語のワンシーンで表現されています。漢字は一文字で意味が通じるもので、一文字だとほぼ意味を成さないアルファベットとは異なりますが、西洋の人は様々な面白いイラストでアルファベットを装飾しようとしていたのです。
 では、13点の写本の装飾文字をご覧ください。

 

「中世彩飾写本の挿絵より」
キリストとマグダラのマリアが描かれたアルファベットの「M」。
Mを仕切りと見立て、その中に住んでいるかのようですね。
Mはマグダラのマリアの文字として考えられていたのかもしれません。

「中世彩飾写本の挿絵より  12世紀頃」
こちらは「O」かな?修道士と思われる二人の男性が餅つきみたい
な事をしています。先ほどの「M」とは違い、人間がアルファベットに
変化しつつありますね。

「中世彩飾写本の挿絵より  15世紀頃」
アルファベットの「G」。色々と状況を突っ込みたくなりますね。
特に老人の生首が気になりすぎる!下で足をがぶがぶしている
狼蛇っぽい怪物が地味に可愛いです。

「中世彩飾写本の挿絵より  15世紀頃」
こちらは「R」。セクシーポーズ(?)をした女性が謎の生物たちを
統率しています。個人的に怪物がみんな可愛い。←ぇ

「オックスフォードのボドリアン図書館所蔵の写本より  1504年」
「A,B,C,D」と紹介されていました。でも、「A,B,反転D,O」に
どうしても見えてしまいます・・・。老若男女と怪物達で力を合わせて
作り上げました!個人的に「D」の白馬&獅子がナイスキャラw

「Giovannino de’ Grassi 作  1390年」
こちらは小文字の「h~u」が描かれています。でも「j」がないような
気がする・・・。キリストから人物、動物、怪物まで様々な姿で
表現されていますが、カチッとした感じの書体ですね。

「chansonnier de Zeghere van Male という歌の写本より 1542年収集」
大文字の「E」。この歌の写本には沢山の変な装飾文字人間が
描かれており、見るのが楽しいです。青い謎の怪物が人間を
がぶーと食べているかと思いきや、足が突き出していますねw

「chansonnier de Zeghere van Male という歌の写本より 1542年収集」
こちらは「S」。小型の船で湖を捜索中、謎の葉っぱフィッシュに頭を
がぶりとされてしまったようです。何と言う事はない、という表情を
している所がいいですねw

「chansonnier de Zeghere van Male という歌の写本より 1542年収集」
「C」。シンプルに竜型の怪物単体で表わされています。現代の
ゲームのモンスターや召喚獣に出てきても充分に行けそうな
フォルムをしていますね。時代を先取りしています!

「chansonnier de Zeghere van Male という歌の写本より 1542年収集」
地獄の悪魔さんと業火に焼かれる人間の「A」。歌の写本に
描かれるにしてはシュールな絵です。確かにAって個人的にも
赤というイメージがあります。火はFireなのに、「F」って緑系の
イメージがあるなぁ。なんだか不思議です。

「chansonnier de Zeghere van Male という歌の写本より 1542年収集」
果実成る新緑の下でバグパイプを奏でる青年の「D」。
さらっと描いたイラストなのに、爽やかな音楽が聞こえてきそうです。
こんな素敵な想像力が欲しい。

「シトー修道院収蔵の写本より  12世紀初頭」
こちらは聖ゲオルギウスと竜の戦いを表現した「R」。
ゲオルギウスさんだけじゃ足りなくて、足場になっとる人がいる!
しかも槍で刺してさり気なく頑張っているし!

 様々なアルファベットを駆使して、面白い世界観を作り上げている中世写本の装飾文字。これらを見ていると、段々と単語や名前を作ってみたくなりませんか・・・?
 という事で、こんな感じに組み合わせてみました!

< img hspace=”5″ border=”0″ src=”https://mementmori-art.com/wp-content/uploads/2023/08/09b9dd5d-s.jpg” alt=”bosch letter people -” class=”pict” height=”95″ width=”480″>

「BOSCH!」

 私の師匠「ヒエロニムス・ボス」のボスのつづりです。知っている人しか伝わらない、かなりの自己満足ですねw
 そういった事をやってみたいという方がみえたら、以下の外部リンクよりもっと沢山の装飾文字人間が集まりますので、色々と組み合わせてみてください。リンクを辿ったら「A~Z」まで集まるように思います。新聞の切り抜きではなく、装飾文字で犯行予告ができてしまうかもしれませんよ!←ぇ
(中には下ネタな表現をしている装飾文字人間もあるので、そこはお気を付けください)

→ 装飾文字人間をもっと見てみたいという人はこちら<外部リンク>
→ 聖ゲオルギウスについての絵画を見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> kb様へ
    こんばんは^^
    飾り文字ってオシャレですよね。「私も真似したい!」と思って考えようとするのですが、こういう自由なデザインがなかなか思い浮かびません…。
    中世の方達は素晴らしい想像力だと思います。
    アモンはフクロウの頭をした悪魔でしたね。
    それとなく通ずるものがあるような気がします。
    ゲオルギウス格好いいから人気なのかもしれません^^
    竜を倒す戦士というイメージは聖人よりも古く、その神話的背景も人気の一つであるように感じます。

  2. kb より:

    こんにちは
    こういう漫画のような遊び心のある絵画素敵ですね!Rの下にある鳥のような猫のようなかわいい生き物はゴエティアの悪魔の1柱アモンでしょうか。
    ゲオルギウスはどこでも引っ張りだこですね。

  3. 管理人:扉園 より:

    >> オバタケイコ様へ
    こんばんは、お久しぶりです^^
    年末のPCの故障は辛いですね。無事に退院できて良かったです。
    私のPCも年明けにアップデートの不具合か何かで、フリーズ&画面暗転したことがあって、めちゃ焦りました^^;大事にしてあげなきゃ…。
    そう言っていただけると嬉しいです。更新の励みになります!
    アルファベットの頭文字イラスト、面白そうです。
    鑑賞する側もとても楽しめそう♪
    クラナッハの画集を買われたのですか^^
    私は今、悪魔についての本を読んでいます(笑)
    お母様が早く元気に退院されるといいですね。
    まだまだ凍えるような寒さなので、無理せずにお身体に気を付けてお過ごしください。

  4. オバタケイコ より:

    お久しぶりです!PCが年末に壊れ、最近やっと退院しました。コンスタントに更新されててすごいですね。とても面白い記事でした(^-^)
    これとは違いますが、アルファベットのA~Zまでを頭文字としてイラストにした作品展をやった事があります。考えるのがとても楽しかったです。扉園さんに教わったルカス・クラナッハの画集買いましたが、母が入院したりとバタバタでまだ読んでません。少しづつ読んで行こうと思います!

  5. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    予言の力をジャンケンに使うイエスがナイスです(笑)
    イエス様ならチョキオンリーで三連勝できそうな予感がします。←ぇ

  6. 美術を愛する人 より:

    三回勝負を懇願しているのですね!!
    往生際の悪いマグダラのマリアさん(笑)
    きっと、「お前は三度私に負けるだろう」と、イエスに予言されちゃうと思います。

  7. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    もうジャンケンしているようにしか見えなくなってしまいました(笑)
    マリアさん、パーを出してしまったのですね。
    「どうか、どうか三回勝負にしてください!」と懇願しているマリアさん。←ぇ
    とういか、既に足元に触れちゃっていますねw

  8. 美術を愛する人 より:

    Mのキリストとマグダラのマリアは、ジャンケンしてるように見えます。
    キリストがチョキで勝って、マグダラのマリアが負けて落胆しているようです。
    「私に勝ったら触れて良いよ~」とか言ったのでしょうか

  9. 管理人:扉園 より:

    >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    本は中身が見えないと判断しづらいですよね。
    図説の本を買って、モノクロの小さい図ばかりだった時はがっかりしてしまいます…。
    図書館で片端から借りて気に入った本を買うようにしているのですが、ついつい衝動買いをしてしまいます^^;
    中世の発想は素晴らしいですよね。
    現実に則した作品には表現できない、シュールで象徴的な世界観。
    色彩も美しいものが多くて魅了されてしまいます。
    14世紀には「J」というアルファベットは存在せず「I」から派生して生まれたんですね!
    新発見ありがとうございます^^

  10. 美術を愛する人 より:

    こんにちは。この間フィルム包装されて中身が見えない、中世写本の絵たくさんと謳ったぶ厚い本を買ったのですが
    オークション上の歴史主体で書いてあって中身の解説やこちらで見るようなかわいい怪物絵もなくてがっかりしてしまいました。
    こうして細かい部分を紹介頂ける場は貴重と思います。
    葉っぱフィッシュとか力押しの発想が素敵です。
    1390年の本にjがないのはiとの分岐過程の時代だったせいかも?

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