ダヴィデに怒るサウルの絵画13点。嫉妬に狂った王が音楽を奏でる少年に牙を向く | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ダヴィデに怒るサウルの絵画13点。嫉妬に狂った王が音楽を奏でる少年に牙を向く

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 旧約聖書に登場するダヴィデとサウルは、神に選ばれし誠実な少年と王位に執着するイスラエル王です。
 神に見放されて悪霊に苦しめられていたサウルの為に、部下は竪琴の名手を呼んで音楽を奏でてもらう事にしました。そこで呼ばれたのがダヴィデで、彼が弾く美しい音色にサウルの心も少しは晴れました。その頃、イスラエルはペリシテ人と争っており、将軍ゴリアテの半端ない強さにイスラエル軍は太刀打ちできませんでした。誰もが尻込みする中、ダヴィデは「僕が倒す」と進み出て、石を投げて見事ゴリアテを倒してしまったのです。

 鮮やかな勝利にイスラエル軍は沸き起こり、ダヴィデは大人気となりました。サウルはそれに深い嫉妬を感じ、自らの王位が奪われはしないかとダヴィデに憎悪を向けるようになります。ある日、ダヴィデがサウルの為に癒しの音楽を奏でていると、サウルは怒り狂って槍を投げ付けたのでした。ダヴィデはそれを間一髪で避け、槍は壁に突き刺さりました。ダヴィデが音楽を奏で、サウルが槍を投げようとするこのシーンはなかなか画家に人気があったようで、沢山の絵画が残されていました。
 では、音楽で癒そうとするダヴィデにキレまくるサウルの絵画13点をご覧ください。

 

「マッティア・プレティ作  1613-99年」
竪琴でぽろろーんと癒しの音楽を奏でるダヴィデ。しかし、空気は
凍り付き、暗雲立ち込める状態となっております。槍を握る
サウルは静かにダヴィデを見つめており、一触即発の状態に・・・。

「Nikolai Mikhailovich Plyusnin 作  1873年」
こちらのサウルは頭に手を置き、イライラとしています。一緒に
聴いているのは奥さんかな?妻はアヒマアズの娘アヒノアムだと
されています。なんとなくダヴィデの表情を見ていると、じわじわ来ます。

「Nikolay Zagorskiy 作  1873年」
個人的に好きな作品。一緒に座ってダヴィデの音楽を聴いて
みたいです^^ あ、でも攻撃のとばっちりを喰らったら嫌です・・・。
奥の老人はサムエルなのかな?

「アーンシュト・ユーセフソン作  1878年」
こちらも異国情緒あふれる素敵な作品。ダヴィデが少しセクシーな
衣装です。人物を大きく描く為か、二人の距離が近いけれど、
この距離で槍を投げられたら間違いなく危険・・・。

「Erasmus Quellinus 二世作  1607-78年」
椅子に足をかけ「イェイ☆」と音楽を奏でるダヴィデ。こんな態度で
演奏されたら誰だって怒りそうです。サウルは怒り狂うと思いきや、
呆れたような表情をしていますね。「こんな奴に怒るのも疲れたわい」
と言っているのかも・・・。(違w

「ゲルハルト・フォン・キューゲルゲン作   1772–1820年」
くるくる巻き毛でギリシア風美青年に描かれたダヴィデ。
サウルはそっぽを向き、「お前の音楽も聴きたくない、顔も見たく
ない!」と言った感じですね。

「Ivan Tvorozhnikov 作  1848-1919年」
ダヴィデよそ見している場合じゃないよ、危ないよ!

「アントニ・ブロドフスキ作  1812年」
ダヴィデは驚き、避けようとしている瞬間なのだと思われますが、
一瞬「やぁ」と挨拶しているのかと見えてしまいした^^;
一人の男性が王を止めようとしているものの、サウルお怒りです。

「フランス・ウォルフハーゲン作(?)  17世紀頃」
凄いずんぐりむっくりとしたダヴィデとサウル。
ヨナタンと思われる(?)人がダヴィデを庇っていますね。
それにしても上の作品とこの作品の服装の違いがありすぎる・・・。

「Willem Van Herp の追随者作  17世紀」
「わしは槍を投げるー!」と大暴れするご乱心のサウル。
ダヴィデは「あら」と言った感じでたいして驚いていないようです。
百戦錬磨のダヴィデなので槍を避けるのは朝飯前なのかな・・・?

「Francisco Fernández 作  1606 – 46年」
背中を見せて逃げようとしているダヴィデ目がけて槍を投げようと
しているサウル。それにしてもダヴィデがおじさんなのが気になる・・・!

「グエルチーノ作  1646年」
いたいけな少年をいじめるのは止めてあげてー!と言いたくなる
作品。この至近距離でどうやって避けるのだろうか・・・。

「Constantin Hansen 作  1804-80年」
槍を投擲!ダヴィデはとっさに腕を上げ、槍は脇をかすめて
マントと壁に突き刺さっていますね。
驚くべき瞬発力で事なきを得たのでした。

 ダヴィデが音楽療法の為に使っていた楽器は竪琴(リラ)。ギリシャ神話にも頻繁に登場する竪琴は一体どれくらいの歴史があるのだろうと思い、調べてみました。
 すると、竪琴は紀元前4000年のエジプトと、紀元前3000年のメソポタミアの時代にはそれらしい楽器の記録が確認されており、シュメール王朝時代(紀元前2000-500年くらい?)の遺跡から、竪琴の原型と思われる楽器が発見されたそうです。おお、想像以上に歴史が古かったです。これなら紀元前1000年頃に生きたとされるダヴィデが竪琴を弾いていても充分頷けますね。
 聖書いちの竪琴の名手ダヴィデと、ギリシャ神話の音楽の神アポロンが音楽を競ったら一体どうなるのでしょうかね?個人的にはダヴィデを応援したいですが、かのマルシュアスとの音楽合戦のように、アポロンのことだから審査員を内輪で固めて勝利を収めてしまうかもしれません・・・^^;

→ サウルとヨナタンについての絵画を見たい方はこちら
→ 音楽合戦に敗れて皮剥ぎの刑となったマルシュアスについての絵画を見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> 予測分析者気取り様へ
    こんばんは^^
    槍を握ってサウルの手からさっと奪い、くるくるっと槍を回して一礼し、「サウル様落ち着いてください。私の音楽がお気に召しませんでしたか」と爽やかな声で問いかけるのですね。←ぇ
    困ったようないたいけな顔をしているのに…流石はダヴィデやりますな!
    「ドスッ!ビイィィン」と槍が壁に突き刺さった音が聞こえてきそうです^^
    あの至近距離で避けられるのは神業…流石はダヴィデ!
    投擲の槍だと真っ先にオーディンのグングニルを思い出します。(北欧好き)
    イスラエルにも北欧にも共通して槍投げの習慣があるのですね。
    こうしてスポーツとしての槍投げが確立したのでしょうか。←ぇ

  2. 予測分析者気取り より:

    グエルチーノさんの絵ですが……
    右腕で槍を払う構えをとっているのですな。
    それで、槍が振り下ろされた瞬間に腕を上げて穂先をそらし、そのまま手首を外から巻き込んで槍を握ってしまうのです。
    ……みたいなことができるでしょうか。専門家でないのでわかりませんが。←おい
    にしても、
    最後のかたの、わかりやすくてかっこいいですね。
    日本の時代物見てると突きあってますが、西洋だと投擲のイメージ^^

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