ギデオンの絵画14点。旧約聖書の士師記に現る、神の導きでイスラエルを救った者 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ギデオンの絵画14点。旧約聖書の士師記に現る、神の導きでイスラエルを救った者

スポンサーリンク

 ギデオンは旧約聖書の「士師記」に登場する、イスラエルを救ったヘブライ人の指導者です。
 イスラエルは40年間平和であったものの、人々が神をないがしろにするようになりました。すると、ミディアン人が攻めてきて征服してしまったのです。イスラエルの人々は圧政に苦しんで主に助けを求めると、神はギデオンに天使を遣わします。貧しい生活者のギデオンは「貴方が国を救済しなさい」と告げられ驚き、「どうして私なんかが?神のご意志が真実なら、しるしを見せてください」と言います。すると、天使は岩から炎を出し、肉とパンを焼いたのです。ギデオンは神の意志のままに異教の偶像を破壊し、仲間を増やします。しかし、ミディアン人も同志を募り、敵は膨大な数となりました。

 ギデオンは再度神にしるしを求めました。「もし私が救済者とおっしゃるなら、羊の毛の上だけが濡れて、地面は乾いているようにしてください」と。神はそのようにして、羊の毛が乾いて、地面が濡れるという反対の奇跡も行いました。ギデオンの決心は固くなりましたが、神は「戦う民が多すぎる。もっと減らしなさい」と告げ、最終的に軍は300名となりました。300名でどう大軍と戦うのかと彼が不安に思っていると、神は夢の御告げを与えたのです。

 そして深夜。ギデオンは300名に水がめと角笛を持たせ、三隊に分けました。ギデオン率いる先発隊が敵陣へと進み、角笛を吹いて水がめを砕き、「主の為に、ギデオンの為に剣を!」と叫びました。それに続き、他の二隊も敵を包囲しながら、全く同じことを行ったのです。敵はパニックを起こして同士討ちを行い、敗走してしまいました。彼等は敵を追撃し、将軍の首を討ち取りました。こうしてイスラエルは国を取り戻し、ギデオンが王となって国を統治したのです。その平和は40年間続いたとされています。
 神の御力によって大軍を打ち破った指導者、ギデオンの絵画14点をご覧ください。

 

「ヘルブラント・ファン・デン・エークハウト作  1621-74年」
貧しい生活をしていたギデオンの元に、天使が現れます。
「ミディアン人からイスラエルを解放するのは他でもない、貴方だ」
と指名されますが、ギデオンは「どうして私が?」と半信半疑。

「ヘルブラント・ファン・デン・エークハウト作  1642年」
「私が肉とパンのお供え物を持ってきますので、どうか しるし を
見せてください」とギデオンが頼みます。天使はそのお供え物を岩の
上に置くよう言いました。するとどうでしょう。
岩から炎が上がったのです!

「Constantijn van Renesse 作  1626-80年」
岩から発せられた炎は、瞬く間に肉とパンを焼き尽くしました。
この作者はレンブラントの弟子であったそうです。
確かに画風が似ているような気がしますね。

「ジェームス・ティソ作   1896-1900年」
ギデオンが驚愕した時、天使は忽然と消えうせていました。
彼は奇跡を目の当たりにして畏怖に襲われ、そこの場所に主の祭壇を
築きました。ティソが描いた「神の御使い」は古典的な天使の姿では
ありませんね。天使の姿に関する記述はないのです。

「フランソワ・ブーシェ作  1703-70年」
ロココ時代の巨匠ブーシェは、高らかに飛翔して去る天使の姿を
描いています。というか、ギデオンの周りに数名みえるのですが、
もしかして焼きあがったお供え物を食べようとか・・・?(罰当たる?)

「作者と年代不詳  タペストリーの一部」
神の奇跡を信じて偶像を破壊しまくるギデオン。しかし、もう一度だけ
神の真意が知りたいと、「私が救済者と仰るなら、羊の毛だけが濡れて、
地面が乾いているようにしてください」と祈ります。
この作品は天使さんがやって来ていますね。

「作者不詳  中世彩色写本の挿絵」
神はその祈りを聞き入れ、実際にそのようにしました。
それだけではなく、羊の毛を乾かし、地面を濡らすという反対の奇跡も
行ったのです。これにより、ギデオンは羊の毛と関連付けて考えられる
ようになりました。

「アルベルト・ボウツ作  1460-1549年」
左側がイスラエルの指導者モーセ、右側がギデオン。二人とも奇跡を
受けて、決意を固めているところです。この作者はディルク・ボウツの
息子さんであるそう。ボウツ家もブリューゲルと同じように画家一族なのです。
→ ディルク・ボウツについての絵画を見たい方はこちら

「ファン・ヘームスケルク作  1498-1574年」
上記と同じく祭壇画の両翼部分。こちらはギデオンとアダムとイブが
描かれています。神を信じるギデオンと、蛇から知恵の実を貰って
神を裏切る二人を対照的に表していますね。

「ジェームス・ティソ作  1904年」
勇んで仲間を増やしたギデオンに、神は「多すぎる。減らしなさい」と
アドバイスします。彼は言いつけ通り、二万二千人を国へ帰らせて
一万人を残しました。しかし、神は言います。「もっと減らせ」と。

「Pedro Orrente の追随者作  1580–1645年」
水辺に付いた時、神は「水をすくわず、かがんでそのまま飲んだ者は
別にしなさい」と命じます。手で水をすくって飲んだものは300名。
3万人いた軍はわずか300名になってしまったのです。

「二コラ・プッサン作  1625-26年」
「少人数でどうミディアン人の軍と戦えばいいのでしょう」とギデオンが
聞くと、神は夢の御告げでヒントを与えます。彼は300名に角笛と
水がめを持たせ、三隊に分けます。そして夜中・・・。
ギデオンは角笛を吹き鳴らしながら陣営へと突っ込みました!

「ピーテル・パウル・ルーベンスの工房作  1625-30年」
300名は敵を包囲し、角笛を吹いて水がめを勢いよく割りました。
そして「主のために、ギデオンのために!」と声高に叫んだのです。
寝静まった夜闇の中に、物凄い大音量が響き渡ります。

「ウィリアム・ホール作  1846-1917年」
敵は大混乱に陥り、同士討ちを行ってしまいます。命からがら敗走し、
結果はギデオンの大勝利でした。敵将が討ち取られ、こうして
イスラエルの国家は取り戻されたのです。

 神の偉大なる力により非力なギデオンが味方を率いて敵を打ち倒し、国家を取り戻す。一見ハッピーエンドに思える物語ですが、多神教である私にはどこかが引っかかりました。
 そう、ミディアン人に国を奪われた理由は、「イスラエルの人々が神をないがしろにした」からです。神から見て悪いことをしたから、イスラエルに不幸が襲った。唯一神である神は絶対者であり、信仰は必然的なことです。ユダヤ教やキリスト教の人から見たら偶像を崇拝することは悪であり、天罰があってしかるべきなのです。ギデオンの物語は罪を償い、神に許されて国を再建したというエピソードなのです。
 しかし、私の目線からすると「神に運命握られて、踊らされているような。怖いよ~・・・」と思ってしまいます。何もかもが神の手の内で、その筋書き通りに人々が動いている。旧約聖書はそのような話が多いですが、やはり思想の違いをひしひしと感じてしまいますね。

→ アダムとイブについての絵画を見たい方はこちら
→ モーセについての絵画を見たい方はこちら

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> スマホ?様へ
    こんばんは。
    年明けは何かと忙しいですからね。体調も崩しやすいので、無理をせず遊びに来てください^^
    確かにティソさんの作品スマホでパシャって見えますね(笑)
    「こら、へたっぴ!ちゃんと写さないか!」「す、すいません!」と言っているように見えてきました…。
    実際は天使のパワーで岩が発火し、肉とパンがじゅーっと焼かれてギデオンが「うぉー!」と驚いている場面です。
    その後、バーベキューをしたとかしてないとか…w←ぇ

  2. スマホ? より:

    こんばんは。
    今夜は忙しくてまだちゃんと記事が読めていないのに、コメント欄へ現れてしまいました^^;
    ティソさんの絵が気になって……
    まさか、シャッターチャンスを狙ってる絵ではないですよね←

  3. スマホ? より:

    こんばんは。
    今夜は忙しくてまだちゃんと記事が読めていないのに、コメント欄へ現れてしまいました^^;
    ティソさんの絵が気になって……
    まさか、シャッターチャンスを狙ってる絵ではないですよね←

タイトルとURLをコピーしました