【絵画10点】残酷なギリシャ神話。音楽合戦の末、アポロンはマルシュアスを皮剥ぎに | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

【絵画10点】残酷なギリシャ神話。音楽合戦の末、アポロンはマルシュアスを皮剥ぎに

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 ギリシャ神話の中に、アポロンがマルシュアスの皮を剥ぐという残酷な話があります。
 ある日、サテュロスであるマルシュアスは木管楽器を拾いました。その笛はアテナが捨てたものでしたが、彼は器用だった為にやがて名手となりました。他のサテュロスやニンフにもてはやされ、調子に乗った彼は「俺が世界一の音楽家だぜ!アポロンの竪琴なんかよりな!」と豪語するようになります。怒り心頭のアポロンは「俺と勝負しろ!」と言い、勝者は敗者に何をやってもいいというルールを付け、二人は音楽合戦をすることになりました。審判者はアポロンの従者ムーサ。陰謀めいた音楽勝負は、もちろんアポロンの勝利。
 刑罰は恐ろしいものでした。アポロンは彼を木に吊るすと、生皮を剥がし出したのです。激痛に泣き叫ぶマルシュアスをアポロンは無視します。皮を剥がされ尽くしたあと放置され、彼は絶命します。その時に流された血がマルシュアス河となったとされています。(一説にはサテュロスやニンフ達の涙が河となりました)
 合戦の末に残虐な刑となった絵画10点をご覧ください。閲覧注意となります!

 

「パルマ・イル・ジョーヴァネ作  16世紀後半-17世紀前半」
音楽合戦開始です。圧倒的有利な立場に、アポロンは余裕顔。
アポロンの楽器は竪琴、マルシュアスは二本の管のついた木管とされている
ものの、異なる楽器を持っています。画家によって違い、結構自由です。

「フランチェスコ・プリマティッチオ作  16世紀」
アポロンの勝利の中、王様の耳はロバの耳で有名なミダス王は、
マルシュアスを支持したそう。この絵画はそれを表しています。
マルシュアスを指さすミダス王を、皆が不審げに見ています。

「Giovanni Battista Zelotti 作   1580年」
勝負に敗北したマルシュアスは、早速皮を剥がされようとしています。
サテュロスは顔を背けていますが、アポロンの仲間に見える女性は
楽しそうに見物しています。

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  17世紀」
身をよじって痛がるマルシュアスを完璧に無視。黙々と作業を行っています。
それにしても、ルーベンスの描いた人体はムキムチですなぁ。

「バルトロメオ・マンフレディ作   1616-20年」
やめてくれよぉ・・・と懇願しているものの、無表情を貫く。
アポロンは人間の戦争の真っただ中で死の矢をばらまくこともあり、
怒らせたら本当に恐ろしい事をしてのけます。

「Antonio de Bellis 作  17世紀半ば」
悪魔のような角と耳をしたマルシュアスが、足をべろりされています。
アポロンは理性、マルシュアスは情念を象徴し、理性と欲望の対立、
欲望の敗北として解釈することもできるそうです。

「ホセ・デ・リベーラ作   17世紀」
また、この物語は神に近付こうとした傲慢の罪への罰
(バベルの塔やイカロスなど) とも読み取ることができます。
→ バベルの塔について知りたい方はこちら

「ディルク・ファン・バビューレン作  17世紀前半」
皮を剥がされ終えたマルシュアスは放置され、、
死んでしまいます。背後でニンフ達が凄い表情で嘆いています。

「ルカ・ジョルダーノ作  17世紀後半-18世紀前半」
女の子座りをしたマルシュアスの足を踏み付けにしながら、
楽しそうに皮を剥ぐアポロン。鬼畜すぎます。

「Massimo Stanzione 作   1640年」
ほらね、皮がべろーりと綺麗に剥がれただろう?

 思想哲学では理性を象徴するアポロン、欲望を象徴するデュオニュソス(豊穣の神)として紹介されておりますが、個人的にアポロンの行動は理性的に思えないのですが・・・。エロスの矢の影響を受けたとは言え、美女ダフネを追いかけ回したアポロンは理性的なのでしょうか。理性的な思考でマルシュアスの皮を剥いだとしたら、恐ろしすぎます。神話の話なので、斜めに考えるのはよくないと思うのですが、マルシュアスがとても可哀想に感じてしまいます。

→ アポロンとダフネについて知りたい方はこちら
→ 聖バルトロメオについて知りたい方はこちら

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> さすらいの子守唄うたい様へ
    名医と思って信頼したら、とんでもない拷問医者だった!
    アポロンはアスクレピオスの父ゆえに医学を司る神でもありますから、多分どんな怪我や病気でもちょちょいのちょいで治せるんですよね…。
    (アポロンが医学力を発揮している物語なんてあったかしら?^^;)
    「先生、痛いのですがどうしてですか?」
    「皮膚を剥がしているのだから当たり前だ。黙ってろ。かならず全てむいてやるから」
    (こちらの記事のコメントは懐かしい感じでしたね^^)

  2. さすらいの子守唄うたい より:

    (……ん? 最近コメントしたのは別の記事か? ^^;)

  3. さすらいの子守唄うたい より:

    この記事には最近コメントしに来たばかりだったけど、どうしても気になったので言わせてくださいっ。
    マンフレディの作品、
    真剣な目つきでマルシュアスの腕に切り込みを入れるアポロンさまが……、
    難しい手術をする、偉大なるお医者さまに見えてしまいましたっ^^;
    マルシュアス「先生、治りますか?」
    アポロン「黙ってろ。かならず治すから」

  4. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    音楽合戦をする前から皮を剥ぐ気満々だったと思われる、陰謀100%のアポロン氏^^;
    美術を愛する人様はアポロン派なのですね!
    残酷であったとしても、アポロンはイケメンだし神話好きには人気のある神様なのである、と友人に伝えてみてくださいw
    でも、私はヘルメス派です^^←ぇ
    アポロンの行動を人間的な枠で捉えると「ヤバい人」になってしまいますが、人間として捉える方が間違っており、人間の想像の範疇を越えた太陽神として捉えるべきだと私も思います。
    (記事では突っ込みまくっていますが…^^;)
    英雄の物語ではアポロンに神託を求める場面が多く出てきますし、「実際に信仰されていた」という部分を念頭に置いて考える必要がありそうです。
    旧約聖書の唯一神だって、人間が神に逆らったらおしまいですからね。人間の尺度で神を測ることはできません…^^;
    やはり美術を愛する人様が仰ったように、アポロンは人を癒し滅ぼす太陽そのものであるように思います。
    私もまだまだ勉強不足なので、これからも美術を通して学んでいきたいと思います!

  5. 美術を愛する人 より:

    陰謀しかないwww
    いまいちアポロンがどういう為人なのか掴めないのですが、そうは言ってもギリシャ神話の中でも個人的に彼が一番好きかもしれないです。
    こちらのサイト様を拝見しているうちに素人ながら色々勉強させてもらっていたんですが、友人に今回の音楽バトルの話をすると「なんでそんな残酷な神様好きなのw」と言われてしまいますし否めないですww
    ただ彼の強くて素晴らしくて、一方で残酷な面もあるというところが魅力に感じるのかもしれません。黄金の矢で大量に人を殺しますしねw
    彼は太陽そのものなんだなと思います。唯一無二の絶対的な力でたくさんの恩恵を与えてくれるので人は太陽なしでは生きていけませんが、その一方で人を追い詰めて死なせたりもします。
    マルシュアスとの対決も「それどうなの?」と思いそうになりますが、でもそういう絶対的な有無を言わさない感じが神様なんでしょうね。決して人のために生まれた存在ではなくて、逆に人がそれを受け入れるから信仰があるんだと思ったり。
    ギリシャ神話の世界面白いですね、まだまだ知識が浅いのでもっと知りたくなります!

  6. 管理人:扉園 より:

    >> 美術を愛する人様へ
    アポロンは牧神パーンとも音楽合戦を行っており、ミダス王は「わしはパーンの音楽の方が好きじゃ」と言ったところ、アポロンにキレられたという感じです^^;
    人間以上に人間の本能丸出しの神様って…。
    古代ギリシャの人々はそんな神様達を信仰していたのですよね。なんというか大変そう。
    ミダス王、もうしばらくお待ちくださいませ^^

  7. 美術を愛する人 より:

    えー!?ミダス王の耳がロバの耳になったのもアポロンのせいなんですか!?
    アポロン様、何やってんの!?笑
    もう、しょっちゅう短気を起こしてあちこち罰あてて…何か…ギリシャ神話の神様って、大人げない人ばかり…笑
    ミダス王の記事、楽しみにしています!!
    ミダス王と黄金のお話好きなんです♪

  8. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    ですよね!アポロンには広い器を持って欲しいです。
    「志の低い奴は直ぐに比べたがる。音楽は心で感じるものだ。優劣では芸術は判断できないのだよ」くらいの格好いい大人の台詞を吐いてくれたらなぁ…。
    ギリシャの神様は自分を貶めた相手にはめちゃ厳しいですよね^^;
    そのミダス王です!
    彼の耳がロバになったのも「お前の耳は音痴か。聞く耳がない奴はロバの耳にしてやる」と、アポロンのせいなんです^^;
    一月後半にミダス王についての記事が出る予定なので、もしよろしければご覧ください(ノωノ)

  9. 美術を愛する人 より:

    私もアポロンは理性的に思えなーい!!
    ホントに理性があるのなら、
    「ふふふ。サテュロスごときがカワイイこと言うとるのぅ(°∀°)」
    くらいに構えてて欲しいものです。神様なんだから!!
    ミダス王って、黄金欲しさに、触るもの皆金にした あのミダス王ですか?
    だとしたら、耳がロバだったり、娘をうっかり黄金にしちゃったり…と、災難の多い王様ですね(^_^;)

  10. 管理人:扉園 より:

     >> 幼稚園様へ
    こんばんは。
    神話もそうですが、グリム童話やマザー・グースって残酷な内容のものが多いですよね。
    個人的には「シンデレラ」の姉たちが鳥たちに目を潰された結末より、ガラスの靴が入らなくて、つま先とかかとを切り落としたというシーンの方が衝撃でした。
    靴が血みどろやんけ…(怖
    私は幼稚園の時に「七匹の子山羊」をやった記憶があります。
    「王様の耳はロバの耳」も、なかなか幼稚園のお遊戯でやるにはシュールな内容ですよね^^;
    楽し気なファンタジーの裏には、大人の諫言や箴言、世の理不尽さといったダークな面が含まれていますね……。

  11. 幼稚園 より:

    とある日本映画で、
    主人公の女性が、幼稚園で『シンデレラ』をやることになった幼児と話すシーンがあるのですが、
    その子が耳許で、もとの残酷な『シンデレラ』の話の姉たちの結末を得意気に教えるのです。
    それを観て、幼稚園のころ『王様の耳はロバの耳』をやった私は、なんだかぞっとしてしまうのでした(^-^;

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