ギリシャ神話のケパロスとプロクリスの絵画12点。愛の疑念は多大な悲劇を生む | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ギリシャ神話のケパロスとプロクリスの絵画12点。愛の疑念は多大な悲劇を生む

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 ギリシャ神話に登場するケパロスとプロクリスは、愛のすれ違いによって悲劇を生んだ夫婦です。
 ケパロスは狩猟が大好きな若者でした。それを見かけた女神エーオースはケパロスが好きでたまらなくなり、彼を攫ってしまいました。しかし、彼はプロクリスという妻をめとったばかりで、女神の愛を受け入れませんでした。怒ったエーオースは「お前の妻は節操のない女だ。試してみろ」と吐き捨てました。不安に思ったケパロスは女神の力を借りて別人に変装し、プロクリスの元へ向かいます。変身したケパロスが贈り物をすると、妻の心が揺らいだので、彼は正体を明かしてそれを非難します。プロクリスは後悔し、家を出て女神アルテミスのように狩猟生活を始めました。

 後に二人は仲直りをしました。しかし、ケパロスは狩りをしている際、そよ風にこんなことを言いました。「さぁ、アウラー(甘いそよ風)よ。僕の熱い胸を冷ましておくれ!」それを聞いた第三者が恋人に話しかけているのだと思い、プロクリスに伝えました。彼女はいてもたってもいられず、山へ探しに行きます。そこで夫が「アウラーよ、愛しているよ!」と言っているのを聞いて、彼女はうめき声を発しました。その声を獲物だと勘違いしたケパロスは槍を投げ、武器は妻の胸にあやまたず貫きました。自らの過ちに気付いた彼は慌てて刺さった槍を抜こうとしますが、プロクリスは「お願いだから、アウラーとは結婚しないで!」と言ったっきり、息を引き取りました。
 愛のもつれによって命を落とす、ギリシャ悲劇の典型とも言えるような二人の絵画12点をご覧ください。

 

「二コラ・プッサン作  1630年」
女神エーオースはケパロスが愛しくなり、猛アピールをしますが、彼は
聞き入れませんでした。気だるそうに寝ているサテュロスや、二人いる
エロス、白馬のペガサスが愛や欲望を象徴しています。

「Alessandro Turchi 作  1578‐1649年」
妻の不遇を疑ったケパロスは別人に変装し、彼女を試します。贈り物に
よって揺らいでしまった彼女の心を、彼は責め立てます。
という話なのですが、絵画はあれ?おじさんがいる・・・。
プロクリスさんって、もしかしておじさんフェチ!?

「フィリップ・ド・シャンパーニュ作  1630年」
反省した彼女はアルテミスのように狩猟生活を営みますが、
後に二人は仲直りをします。和睦の印として、プロクリスは狩猟犬と
強力な槍を彼に差し出します。

「ピーテル・パウル・ルーベンス作  1577‐1640年」
平和も束の間、今度はケパルスが「アウラーよ、愛しているよ!」と
言っているのを第三者が聞いてしまいます。それを知ったプロクリスは
山にいる彼を尾行し、彼女も夫の言葉を聞いてしまいます。
ルーベンス作の彼女が策士めいていてかなり怖いです。

「ヘンリエッタ・レイ作  1859‐1928年」
ショックの余りにうめき声を洩らしてしまったプロクリス。その声を獲物
と勘違いをして、ケパロスは槍を思いきり投げてしまいます。
しかし、見てみると槍は愛しの妻に刺さっているではありませんか。
彼は慌ててプロクリスの元へ駆けつけます。

「Alexander Macco 作 1793年」
こちらの絵画は脇腹に槍が刺さり、ケパロスは風神雷神のようなポーズを
して驚きを表現しています。彼はショックのあまり、声も出ません。

「バルダッサーレ・ペルッツィ作  1481‐1536年」
背後になんか大量の神々がおります。定かではありませんが、
馬車に乗っているのは冥界のハデスとペルセポネですかね・・・。
迎えに来た?真ん中の飛んでいる人は風の神様なのかしら・・・?

「パオロ・ヴェロネーゼ作  1580年」
「どうして君がここに!?」という問いかけに、妻は息も絶え絶えにこう
応えます。「もし私を愛しているのなら、どうかアウラーと結婚しないで」と。
それで全てを悟ったケパロス。単にそよ風に向かって言った独り言が、
勘違いされてしまったのです。

「ヨアヒム・ウテワール作  1595 – 1600年」
絵画によって武器が槍だったり、弓だったりします。このケパロスは弓を
使用していますね。彼は妻に真実を語ります。「アウラーはそよ風で、
女の名前じゃない。君を愛しているよ」よ。

「Theodoor Rombouts 作  1610年」
それを聞いた彼女は安心し、静かに息を引き取ります。
このプロクリスさんの肉体がたくましすぎる・・・。ケパロスより鍛えて
いるように見えますよ。上腕二頭筋とかムッキムキです。

「ジャン・オノレ・フラゴナール作  1755年」
ロココ絵画の巨匠フラゴナールは、甘美にロマンチックにこのシーンを
描いています。生の赤、死の青の比較が印象的です。

「アブラハム・ヤンセンス作  1567‐1632年」
こちらの作品も赤と青の対比を行っています。プロクリスの真っ白な
肌が強調されており、死の悲劇性を露わにしています。
あれ。よーく見ると、プロクリスさんも矢を持っている。まだ生きている?

 愛し合う二人ではあったけれど、互いの愛に対して疑心暗鬼になってしまい、結果悲劇を招いてしまう。この話は極端ですが、現代でもちょっとしたすれ違いでヒビが入ったり、喧嘩になってしまいがちだと思います。ほんの少しのズレが大きな悲しみを生むことは、よく
あることのように感じます。
 なかなか難しいことだとは思いますが、相手を信じる寛容な心が持てるようになりたいですね。

 

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