ギリシャ神話のヒュアキントスは、事故によって亡くなったアポロンの愛人です。
彼は相当の美青年で、アポロンは非常に可愛がっていました。男色は全然OKの時代、神だって気にしません。アポロンは漁や狩猟に行く時も、スポーツをする時も、山登りをする時も、いつもヒュアキントスを伴っていました。ある日、二人は円盤投げをして遊んでいました。アポロンが空高く投げた円盤をじっと見つめ、ヒュアキントスはそれをやりたくなり、円盤に駆け寄っていきました。しかし、運悪く地面に跳ね返って来た円盤が彼の額に直撃したのです!瀕死で倒れた少年の元に、アポロンは真っ青な表情で走り寄ります。どんな治療をおこなっても徒労で、ヒュアキントスは死んでしまいます。「ああ、なんたることだ!お前の立場と替わることができるならそうしたのに!お前の存在を美しい花に変えてあげよう・・・」そうアポロンが言うやいなや、ヒュアキントスの姿は深紅色の百合のような花に変化したのです。
悲劇の青年ヒュアキントスの絵画、11点をご覧ください。
「Louis de Boullogne II 作 1654-1733年」
少年ヒュアキントスに竪琴を教えるアポロン。愛しい少年に、色々な
ことを手取り足取りレクチャーします。
「Alexander Kiselyov 作 1884年」
しかし、円盤投げで遊んでいると、彼の額に円盤が直撃してしまいます。
ヒュアキントスは倒れ込み、瀕死に陥ってしまいました。
「Nicolas-Rene Jollain 作 1769年」
一説には風の神ゼピュロスもヒュアキントスを愛しており、嫉妬によって
円盤の角度を変えて彼を殺したとされています。しかし、実際に死んで
しまうと、ゼピュロスは深く後悔したそう。美青年の取り合いは恐ろしい・・・。
「ベンジャミン・ウエスト作 1771年」
寄りかかるヒュアキントスの額にそっと触れるアポロン。二人の絵画は
肉体美を前面に押し出しまくっている作品が多いですね。
それにしてもアポロン、一体どんな髪形をしているんだ・・・?
「アンドレア・アッピアーニ作 1754-1817年」
アポロンの計らいにより、彼は美しい花に変わります。
一般的にはヒヤシンスとされていますが、記述には「深紅色の百合の
ような花」と書かれており、すみれの一種か、パンジーの一種か、
ヒエンソウである説もあるそうです。
「メリー・ジョゼフ・ブロンデル作 1781-1853年」
命尽きたヒュアキントス・・・。それにしても危険なアングルですね。
他の画家は布か角度か手で隠していましたが、もう気にしないぜ!
と言った感じですな・・・。布踏まれてるし・・・。
「ピーテル・パウル・ルーベンス作 1636年」
ルーベンスの下絵。私が調べた限りでは、残念ながら完成版は
ないようです。肉体美より、躍動感や悲壮感などを重視している
ようですね。他にはない、血がだばだば~です。
「Jan Cossiers 作 1600-1671年」
ルーベンスの習作を元にして、違う人が描いた作品。
比較してみると、ほとんど元絵に準じていることが分かります。
全く違う箇所と言えば、ヒュアキントスの腰布の色くらいでしょうか。
「ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ作 1752-53年」
ギャラリーがいるヒュアキントスの死。足元にはテニスラケットと
ボールが転がっています。あれ?円盤投げをしていたはずだけど・・・。
神話の死を現実の偉人の死となぞらえて、描いたのでしょうかね。
現実にテニスボールに当たって亡くなった人がいたのかしら・・・?
「イタリア出身の画家作 17世紀」
あれ?こちらもテニスラケットが。こちらは二人で背景が黒塗りなので、
推測しようがありません・・・。なんだかテニスボールで絶命した方が
悲劇のような気がします。足元には可憐なヒヤシンスが。
「ジャン・ブロック作 1801年」
ぎゅっと愛おしそうに抱きしめるアポロン。少女漫画のような華奢な
体型と表情です。なんだか200年以上前に描かれた作品に見えませんね。
でも、 何も着ていません・・・。
神に愛された美青年はちょっと調子づいたばかりに命を落としてしまう。もしくは神の嫉妬の陰謀によって殺される。そして、神によって花に変えられる。これはヒュアキントスの物語だけではなく、ヴィーナスに愛された美青年アドニスの話に全く当てはまります。登場人物が違えどもほぼ構成が同じなんです。どちらかの話が元にあって複写されたのか、同時に成立したのかは分かりませんが、この二つの物語は双子の構成と言えそうです。まさか・・・アドニスとヒュアキントスは双子だったとか!?・・・それはないか(笑)
【 コメント 】
>> 少年漫画を愛する人様へ
こんばんは^^
「テニスの王子様」は昔少しだけ読んだ記憶があります。
あり得ない技を放っているのは知っていましたが、壁やコートだけではなく審判まで破壊しちゃうなんて…。もはや事件ですw
中高生のテニス試合で恐竜や彗星が発動できるなら、神様のテニスボールで絶命するのは容易いですね。
アポロンが本気を出せば、テニスで地球が消し飛ぶかもしれません^^;
(テニプリって時空レベルの戦いをしていたんですかw)
アポロンは美形なら男女どっちでもOK!っていうタイプだと思いますw
ダフネやカサンドラ、アカンサスと女性に言い寄る物語はありますが、どれも拒否られているから、もしかしたら美青年の方が向いているのかも…。
イケメンだし神だし青年(少年)好きだし、きっとアポロンは腐女子の方にとってオイシイ設定盛り沢山なのですね^^
ゼウスも美少年ガニュメデスをはべらせていますし、ヘラクレスも美少年の従者ヒュラスを連れていました。アキレスも親友パトロクロスとねんごろな疑惑の間柄であったそうです。
ギリシャ神話は結構そんな物語がありますよ…(ノωノ)
テニスラケットとボール…
少年ジャンプとジャンプスクエアで連載されていた「テニスの王子さま」では、テニスで普通に人が大怪我します。
コートや審判はもちろん、スタンドや壁まで破壊します。
なんなら、時空を止めたり恐竜や彗星が飛んできたりするので、テニスボールで死ぬのは当たり前なんだと思います(笑)
アポロンは、男性もイケる人だったんですね!?
この記事を読むまで知らなくて、記事の初めの数行にある「アポロンの愛人」「美青年」が信じられなくて、(あれ?アポロンて女神だったっけ?あれ?美少女の書き間違い?あれ?あれ?)と、何度も読み返してしまいました(笑)
たまーに、耽美系のゲイ小説に「私のアポロン~」とか「アポロンの愛人~」と、アポロンを引き合いに出されるのを見掛けるので、イケメンの代名詞的なものかと思っていたのですが、なぜかアポロンだけで、なぜかゲイ小説だけに見られるので、長年疑問に思っていましたが、今回の記事で謎が解けました!!
>> 体躯の謎が気になる人様へ
こんばんは。
再びのコメント感謝です^^
アドニスは狩人なので美丈夫タイプな感じで、ヒュアキントスは円盤投げもできない、なよなよタイプな感じなのかなと勝手に推測しました(笑)
ですが、体躯の問題は画家の好みが結構入っていそうですよね…。
ギリシャ神話は愛と死、戦いの物語が多いですから、絶命と悲哀の構図ができやすいですよね。
こうまでたくさん絵画があると、段々と様式化してしまっているのかもしれません。
確かに。この作品にはやられる&悲しむ&倒すの三拍子が揃っています。
人体の表現で色々分類してみるもの面白いですね^^
アドニスの方で「どっちが神様かわからない」とツッコミを入れた者ですが、こちらは明らかに神様(アポロン)の方が大柄ですね。
男同士だからでしょうか?
顔は中性的なんだけど……。
「倒れている人」と「心を痛めている人」というのは、定番なのですね。
ここに「倒した人」が加わると、ダヴィッドの『マルスとミネルヴァの戦い』になるのかな。