かなり有名な伝説の生物であるユニコーン。一角獣とも呼ばれ、額の中央に長い角が生えた白馬の姿で描かれることが多いです。
ユニコーンが初めて書籍に現れたのは古代ギリシャの歴史家クシテアスが書いた「インド誌」とされ、その後アリストテレスやプリニウスが一角獣についての言及をしています。その頃は姿が一定しておらず、馬ではなくロバや山羊、象、鹿などが混ざったキメラだとされていました。
ユニコーンは美しい姿とは裏腹に、非常に獰猛で俊足。長い角はどんなものでも貫けるほど強靭とされています。しかし、その角は水を浄化し毒を中和する力があるとされ、あらゆる病気を治す特効薬と考えられていました。それ故、危険を承知で人々は角を求めたそうです。幸いにもユニコーンは美しい処女に弱いとされ、処女が現れると従来の凶暴さは成りを潜め、膝の上に頭を乗せて眠り込んでしまうとされています。(少年を美しく着飾って処女に見せる事も行われたそうです) その隙を見計らい、狩人たちはユニコーンを捕まえるのでした。一角獣の角は破格の値段で取引がされましたが、現代の調査ではそれらはイカックやサイの角ばかりであったそうです。
貞潔や高貴の象徴ともされるユニコーンの絵画13点をご覧ください。
「ウリッセ・アルドロヴァンディ「怪物史」より 1658年」
現代では白馬の姿が当たり前になっているユニコーンですが、
かつては様々な動物が混ざり合ったキメラ的存在として考えられて
いたようです。顔や尾は犬っぽくて、後ろ足が水かきのように
なっていますね。
「ポーランドのシナゴーグ(ユダヤ教会堂)の天井画 16世紀」
百獣の王と戯れている(戦ってる?)ユニコーン。神秘的な姿とは
裏腹にかなり獰猛な性格で、巨大なゾウでさえ角で突き刺して
倒してしまったと言われています。このライオンさんも次の瞬間には
串刺しになっていそうですね・・・。
「貴婦人と一角獣のタペストリーより「視覚」 15世紀」
このタペストリーはパリで下絵を描かれてフランドルで織られたと
されており、非常に美しい6枚の連作から成り立っています。
連作は「感覚」をテーマにしており、いずれもユニコーンが描かれて
います。旗を持っているライオンさんが可愛いですね^^
「貴婦人と一角獣のタペストリーより「味覚」 15世紀」
こちらは味覚ですが、どこの辺りなのでしょうか?果物がいっぱいで
美味しそうな感じなのかな?ユニコーンはカメラ目線で前足を
上げており、格好いい姿ですね。
「彩色写本の挿絵より 1470年」
ユニコーンは処女を見ると途端に大人しくなり、膝の上で眠って
しまうとされています。ユニコーン、水をめちゃ飲んでいますね。
いや、それよりも女性の顔が怖すぎるし、背後の生物が気になって
しょうがありません。ビーバー?カワウソ?カピバラ?
「パリスとヘレナの作品を手掛けた親方作 1450年」
こちらもツインテ―ルが個性的な処女さんですね・・・。ユニコーンは
安心しているのか、不安がっているのか。もし女性が処女でなかった
場合、ユニコーンは暴れて女性を殺してしまうそうです。ドキドキ・・・。
「ドメニキーノ作 1620年」
「ふふ、罠にかかったっわね・・・」と言った感じでほくそ笑む処女。
この後ユニコーンは狩人によって捕らえられてしまうのでしょうか。
上記の作品もそうですが、ユニコーンがかなり小さく描かれている
のが分かりますね。構図的にバランスを取るためなのかな?
「Luca Longhi 作 1580年以前」
この女性はローマ教皇アレクサンデル6世の愛妾の1人である、
ジュリア・ファルネーゼさんとされています。ユニコーンはしばしば
貞潔の象徴とされ、清らかな女性のお供として描かれる事がありました。
(反対に不節制の象徴ともされています・・・)
「フランスの時祷書 16世紀」
創世記によると、神は世界を創った5日目に動物と鳥を創りました。
狐やライオン、カモ、フクロウ、猿などあらゆる動物が神の力に
よって生じていますね。左下にはユニコーンの姿が。
当時、ユニコーンも実在の動物として信じられていたのです。
「南ネーデルラントのタペストリー 1495-1505年」
よってたかってユニコーンを狩ろうとする人々。処女の力を借りる
他に、彼等は樹の後ろに隠れ、ユニコーンの角が樹に突き刺さって
動けなくなったところを見計らって捕らえたという文献もあります。
ここまでぶすぶすされていると可哀想に思えてきます・・・。
「ラファエロ・サンツィオ作 1483-1520年」
「一角獣を抱く貴婦人」という、一風変わった作品。しかし、本来
彼女が抱いていたものは犬であったそうで、どうしてユニコーンに
変えられてしまったのかは謎に包まれています・・・。
「ギュスターヴ・モロー作 1885年」
象徴主義のモローは美女とユニコーンの姿を描いておりますが、
従来の「処女がユニコーンを大人しくさせる」構図とは違い、
双方とも気高く気品ある姿に描かれていますね。高貴の象徴と
して表したのでしょうか。
「アルマン・ポワン作 1898年」
こちらもハープを持つ美女に、小鹿のようにミニマムなユニコーン。
こちらも女性の美しさ、気高さを強調する為にユニコーンが
添えられているといった印象があります。現代の私達が考える
ようなファンタジーの世界ですね^^
ユニコーンの伝説の中でもう一つ面白い話があったのでご紹介します。
狩人に捕まりそうになって危機一髪のユニコーンは、断崖から身を投げて角を地面に突き刺し、落下の衝撃を和らげて逃げる事もあったそうです。ここで一つの疑問が生じました。頭から落下して地面に角が刺さったら、地面から抜く事ができるのか?先ほど樹の幹に深く刺さって抜けられなくなったユニコーンを捕まえるという手法を知ったばかりなので、はなはだ疑問なのですが・・・^^;地面に深く刺さってしまったら、抜けられずにじたばたしたまま狩人に捕まってしまいそうです。
wikiによると、この角の突き刺しを使った落下の軽減はオリックスやアイベックス、ジャコウ・ウシに見られると書いてありましたが、私は始めて知りました。テレビでも見たことがないなぁ。角が湾曲している種もいるので、ぶつかったら折れてしまいそうに思えますし。これって本当なのですかね?ユニコーン伝説のように、落下による角突き刺し手法の伝説も謎に包まれているのでした・・・。
【 コメント 】
>> 美術を愛する人様へw
こんにちは。
返信が遅れてしまい失礼いたしました;
紀元前からの伝説と考えると、キリスト教よりも古いのですよね。
様々な逸話や伝説が生まれたのも頷けます。
ポーランドのノアの箱舟の伝説、面白いですね^^
鳩の重みで沈んでしまうなんて、よほど疲れ切っていたんでしょう…w
ノアが蹴り落したという方も、どちらも「傲慢」を象徴していて、気高さや美しさという気位が高い美徳は、高飛車や傲慢という負のイメージとも結び付けられていますね。
こんばんは
ユニコーンの絵、色々あるんですね
ロシアでは獰猛なユニコーンに唯一素早い虎だけが対抗できたと考えられていました
またポーランドでは、かつてユニコーンは実在していた
しかしノアの大洪水の際、傲慢なユニコーンは大洪水を泳ぎきってみせると豪語してノアの誘いを断り、大海を泳いでいたが箱船から投げ出された鳩が角に止まった時に重みで溺れてしまった
或いは箱船の中で、他の動物を突いていたが激怒したノアが大海に蹴り落とした
等大洪水を境にこの世から消えてしまった動物と考えられていたそうです
>> 最近ネットで『ユディト記』を見つけて読み始めた人様へ
こんばんは^^
美女の膝枕で安心させ、頭を丸刈りにする…のではなく角をへし折っちゃいますw
もしかしたら白貂を抱く貴婦人を鑑賞して衝撃を受け、「犬じゃあ陳腐すぎるな。そうだ、一角獣に変えちゃる!」って対抗意識を燃やしたのかも…。(とんだデタラメですw)
ラテン的な文字に詳しい読者様、どうか私に知恵を授けてくださいw
個人的には…カワウソに一票!
これは……、
サムソンとデリラ、ですね(違
犬でも白貂でもなくて、一角獣なのですね……^^;
カワウソのような生物は、文字が書かれているようなので、きっと詳しい読者さんが翻訳してくださるでしょう( ̄▽ ̄)