ワイルドハントの絵画11点。北欧神話のオーディンを起源とする天翔ける軍勢 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

ワイルドハントの絵画11点。北欧神話のオーディンを起源とする天翔ける軍勢

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 ワイルドハントは、狩猟犬を連れ馬にまたがった狩猟者の集団が大挙して大空を駆けてくるという、西洋に伝わる伝承です。
 ワイルドハントは秋から春にかけて嵐を引き連れて出現し、疫病や戦争を前兆しているとされていました。その姿を間近に見た者は死に、更に進行を妨害した者は冥府へと連れていかれたそうです。助かるには地面に身を伏せてひたすらやり過ごすか、勇気ある者はワイルドハントに敬意を払い、度胸試しをすることで逆に富を与えられるそうです。

 伝承はとりわけ北方と西方に広まっています。ワイルドハントを率いる首領は地域や時代によっても様々で、オーディンであることもあれば、亡霊であったり、各国の王だったり、アーサー王であったり、悪魔だったりしました。ワイルドハントは嵐や災害の具現化とされていますが、北欧神話の主神オーディンが嵐を司る神であり、オーディン信仰が起源であると思われます。ワイルドハントの伝承を持つオーディンがキリスト教が普及するにつれて悪魔的な様相を示すようになり、ワイルドハント自体が様々な伝承と結びつき合い、禍々しい印象と数多くの姿形を持つようになったのだと思います。
 では、ワイルドハントについての絵画や挿絵、11点をご覧ください。

「作者不詳  アンティークの書籍の挿絵  19-20世紀頃」
八本足の愛馬スレイプニルにまたがり、槍グングニルを掲げて
鬨の声を上げるオーディン神。彼はラグナロク(最終戦争)に
備える為に戦死した兵士をヴァルハラへ連れていくとされて
いました。その為に各地で戦争を起こしたのです。

「ルドルフ・フリードリッヒ・オーガスト・ヘンネベルク作  1856年」
不動の姿勢で颯爽と現れるオーディン神。冬至の夜中に子供達が
スレイプニルの為に干草や砂糖を置いておくと、オーディンが
見返りとしてキャンディをくれるそうです。それがサンタクロースの
起源になったと言われています。オーディン優しい。

「ルドルフ・フリードリッヒ・オーガスト・ヘンネベルク作  1856年」
数多くの狩猟団を連れて空を闊歩するワイルドハント。
その姿を見た者は恐怖により命を落とすそうで、足元は既に
犠牲者がいるようですね。

「Hermann Plüddemann 作  1852年」
こちらは地上にまでやってきちゃったワイルドハント。
キリスト教が普及するにつれ、ワイルドハント=魔物という印象が
強くなり、聖と闇という図式が出来上がっています。十字架×3つで
撃退できるともされていました。

「ヨハン・ウィルヘルム・コーデス作  1856-7年」
天候荒れる中、びゅんびゅん飛び廻るワイルドハント。
神々や英雄、悪魔やドラゴンだけではなく、フランスでは死んだ子供の
集団を引き連れた魔女のホレおばさんが現れるという伝承も。
ある意味一番怖いかもっ!

「ウィリアム・T・モード作  1890年」
ワイルドハントはオーディンの配下である戦乙女ヴァルキリーの
集団である場合もあります。オーディン直々に戦場に現れるのは
まれで、ヴァルハラ行きの英雄(エインヘリアル)を迎えるのは
彼女達の役目なのです。

「ペーテル・ニコライ・アルボ作  1868年」
満月の夜にすっきりとした格好で現れたワイルドハントの軍団。

「ペーテル・ニコライ・アルボ作  1872年」
オーディンやトール、ヴァルキリーらが大挙して押し寄せています。
作者はノルウェー出身であり、キリスト教によって魔物と貶められた
彼等に神としての尊厳を感じ、回帰が見受けられますね。

「フランツ・フォン・シュトゥック作  1889年」
その反面、ドイツの象徴主義のシュトゥックは「ザ・魔物!」という
感じのワイルドハントを描いていますね。赤い衣を身にまとった
首領は黒い犬や亡霊たちを率い、こちらに突進しようとしています。
これに出くわしたらショック死するのも頷けます。

「フランツ・フォン・シュトゥック作  1899年」
シュトゥック二枚目。10年後の作品は禍々しさがアップしていますね。
赤い衣の老人(オーディン?)は奇怪な怪物達を率いています。
足元にはメデューサらしき怪物が。グローバルなワイルドハントだ!

「ギュスターヴ・ドレ作  1868年」
「The Vision of Death 死の幻視」という作品。厳密にはワイルドハント
でないのですが、構図が酷似していますね。死をもたらす死神も
ワイルドハントと同様に上空から大挙して押し寄せてくるという
イメージを持っていたことが伺えます。

 文頭に「勇気ある者はワイルドハントに敬意を払い、度胸試しをすることで富を与えられる」と書きましたが、それは一部の地域のことで、ドイツの伝承ではこうなるそうです。「彼らの手助けをすれば、黄金
、かなり高い確率で、死者や死んだ動物の脚が与えられる。この人間や動物たちは、呪われて逃れられなかった者たちである」
 日本の妖怪たちが道を闊歩する「百鬼夜行」も、見たら死ぬと言われていますし、関わらない方が身の為ですね^^;

 また、ドイツの伝承には「ブラックサンタクロース」なる者が存在し、クリスマスに悪い子供を袋に入れてさらっていってしまったり、部屋中にモツをぶちまけたりするそうです。オーディンがサンタクロースの起源となるなら、善人のサンタと悪人のブラックサンタが分裂してしまうのも納得できるような気がします。ワイルドハントも、その伝承に関連する一派だと思うと面白いですよね。

  もしかしたら、サンタクロースがワイルドハントの軍勢を引き連れていく光景を見るのも、不思議ではないのかもしれません・・・。←ぇ

→ オーディンについての絵画を見たい方はこちら
→ ラグナロクについての絵画を見たい方はこちら
→ アーサー王についての絵画を見たい方はこちら

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> オバタケイコ様へ
    こんばんは^^
    カルビいいですね♪
    ついでにソーセージやお野菜、海鮮などを投げてくれたらバーベキューの完成です(笑)

  2. オバタケイコ より:

    アハハ(≧▽≦)それ、いい案です。
    ついでにカルビもぶちまけてくれたら
    もっといい!

  3. 管理人:扉園 より:

    >> オバタケイコ様へ
    こんばんは^^
    私も赤い衣の老人よりもメドゥーサが気になって仕方ありませんでした。
    デス声でシャウトしてそうですね(笑)
    モツをぶちまけられたら気持ち悪いですが、美味しそうなところを拾ってじゅーっと焼いたら食べられそうです。
    冬は食糧が貴重でしょうし、ある意味いい贈り物なのかもしれませんw←ぇ
    ただ、掃除は大変そうですね…^^;

  4. オバタケイコ より:

    「フランツ・フォン・シュトゥック作、迫力ありますね。メドゥーサ何気に一番目立ってますね。ステージでシャウトするロッカーみたいです。(;^ω^)ブラックサンタの話、何処かで知りましたが、モツをぶちまけるという奇行気に入りました。やられた方はたまったもんじゃないですね。

  5. 管理人:扉園 より:

    >> kb様へ
    こんばんは^^
    ワイルドハント格好いいですよね!
    北欧神話好きにはたまりません。
    なんというか好物をごった煮にした感じです(笑)
    仲間入りは私もお断りします^^;
    たとえ好きでも一般人のままでありたい。
    遠目からそっと眺めてロマンを感じていたいのです…w

  6. kb より:

    こんにちは
    ワイルドハントの絵画どれも大変カッコよくて素敵ですね^_^
    決して良い存在ではないのでしょうが、北欧の神から始まり西洋の英雄や怪物、狩人の集団なんてロマンの塊で大好物です!
    ただワイルドハント仲間入りは絶対にごめんです永遠に集団の中に囚われるらしいので笑

  7. 管理人:扉園 より:

     >> 眠くなってきましたね。← 様へ
    こんばんは^^
    私も冬眠したくなってます。
    ただでさえ体温が低いので、このままでは変温動物になりそう。←ぇ
    外国は発音の変更や短縮を多用しますよね。
    going toをゴナ、want toをワナ…。
    リスニングすると本当にちんぷんかんぷんです。
    母音と子音の関係で発音が変わるようなので、ありえるかもしれません。
    国や民族によっても変化しますし、正解はなさそうですね^^;

  8. 眠くなってきましたね。← より:

    外国語には詳しくないのでよくわからないんですが、Saint 単体だと聞こえない t が、エグジュペリの名前をつなげると聞こえるようになるんでしょうね。
    サン=ジェルマンは、サントジェルマンとは言わないのに……もしかして、母音の前だと聞こえるとか?

  9. 管理人:扉園 より:

     >> 寒くなってきましたね。様へ
    こんばんは^^
    寒太郎君がもっと大きくなったら、ワイルドハントの一員になれるかもしれません(笑)
    そうですね。聖ニコラウスさんが由来だと思います。
    確かにSaint-Exupéryでサン・テグジュペリと読むのはなんだか違和感があります。
    やはりフランス語で音声を聞いてみたらエグジュペリではなく、テグジュペリと発音していました。
    最近だとその人の出身の発音のカタカナで書いてある場合が多いですよね。
    サンタさんはフィンランドから来たと思われている感じなので、もしかしたらサンタクロースをフィンランド語のJoulupukkiヨールプッキと呼ばれる日が来るのかもしれない…。←ぇ!?

  10. 管理人:扉園 より:

     >> 寒くなってきましたね。様へ
    こんばんは^^
    寒太郎君がもっと大きくなったら、ワイルドハントの一員になれるかもしれません(笑)
    そうですね。聖ニコラウスさんが由来だと思います。
    確かにSaint-Exupéryでサン・テグジュペリと読むのはなんだか違和感があります。
    やはりフランス語で音声を聞いてみたらエグジュペリではなく、テグジュペリと発音していました。
    最近だとその人の出身の発音のカタカナで書いてある場合が多いですよね。
    サンタさんはフィンランドから来たと思われている感じなので、もしかしたらサンタクロースをフィンランド語のJoulupukkiヨールプッキと呼ばれる日が来るのかもしれない…。←ぇ!?

  11. 寒くなってきましたね。 より:

    日本でいう、『北風小僧の寒太郎』みたいなもんですかね。……なんて、呑気なことを(笑)
    サンタ・クロース、
    セント・ニコラウス……名前はこっちからなんですね。
    関係なんですが、サン=テグジュペリってカタカナ表記がなんだか納得いかない私です。実際の発音がそうなんでしょうけども……
    書くとしたら、サント・エグジュペリじゃないのかな。
    ……サン・エグジュペリのほうがいいかしら?

  12. 管理人:扉園 より:

     >> 美術を愛する人様へ
    こんばんは^^
    サンタはオーディンの起源に聖ニコラウスの伝承が混ざった事で生まれた存在のようです。
    トナカイに曳かせたソリに乗って空を飛んでくるあたりワイルドハントと類似していますから、サンタを見ない方が身の為かもしれません(笑)
    オーディンが嵐を司る神なので、暴風や竜巻など災害レベルの自然現象を表現したのだと私も思います。
    おそらくその災害が神話で脚色され、宗教により悪魔化したのでしょう。
    西洋も日本も過去は道や治安も悪く、旅先で盗賊にあったり自然災害にあったりして行方不明や突然死する方が多くて「この者は魔物(妖怪)に出くわしたんだ!」と考えたのかもしれませんね。
    本当に遭遇していたという可能性も…ありえるかも!?

  13. 美術を愛する人 より:

    こんばんは。
    こんな伝承があるのですね。
    オーディン=サンタさんの起源なら、サンタクロースを見ようとする試みは実は危険なのかも。
    嵐を伴う・体を低くすればやり過ごせるという所を読むと、強い突風や、有毒ガスが流れ込んで死者が出るような、何らかの自然現象が元ネタだったりするのでしょうか。
    それにしても西洋東洋ともに「遭遇したら死ぬ」集団の伝承があることは不思議に思います。
    昔の人にはもしかしたら本当に何かが見えていたのかもしれません。

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