【絵画17点】終焉と再生。ラグナロクは北欧神話における神々と巨人の最終戦争 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

【絵画17点】終焉と再生。ラグナロクは北欧神話における神々と巨人の最終戦争

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 北欧神話はノルド人がキリスト教徒になる以前に信仰していた、宗教における神話です。一般に北欧神話と呼ばれているものはノルウェーやアイスランドに伝えられた「エッダ」や「サガ」と呼ばれる物語と、デンマークの「デーン人の事跡」の説話をもとにしています。
 神話の中で有名なものとして「ラグナロク」という神々の終焉の話があります。ラグナレク(神々の黄昏)とも呼ばれ、長い冬の後、巨人たちは炎の民と共に神々の元へ攻め込み、双方が熾烈な戦いを繰り広げます。主神オーディンやトールなどの神々はこの戦争で命を落とし、神々の世界は一度滅びます。ですが、終末からやがて命の萌芽が起き、世界は再生されるのです。
 画像17点と共に、神々の運命「ラグナロク」を見ていきましょう。

 

「Emil Doepler作 ギャラルホルンを吹くヘイムダル」
戦の到来を告げるのは、ヘイムダルの角笛ギャラルホルン。
猛々しい笛の音を聞き、神々は最終戦争の準備をします。

「Emil Doepler作 オーディンとフェンリル」
巨人らは魔物たちを引き連れ、神々に戦いを仕掛けます。
主神オーディンの前に現われたるは魔狼フェンリル。

「作者不詳 オーディンとフェンリル」
双方は一歩も引かず、激しい戦いを繰り広げます。

「作者不詳 オーディンとフェンリル」
オーディンは槍グングニルで応戦するものの、
フェンリルに呑み込まれて命を落としてしまいます。

「作者不詳 ヴィーザルとフェンリル」
すかさず現れたのはオーディンの息子ヴィーザル。
彼は狼の下顎を踏み、心臓を剣で突き刺して父親の仇を討ちます。

「作者不詳  ヴィーザルとフェンリル」
こちらも父の仇を討っている場面ですが、フェンリルちっちゃ!
オーディンどうやって呑み込まれたのでしょう・・・。イリュージョン?

「作者不詳 トールとヨルムンガンド」
横で戦っていたのは、神々の守護者トールと世界蛇ヨルムンガンド。
彼等も激しい戦いを続けています。

「Emil Doepler作 トールとヨルムンガンド」
世界蛇はトールに毒を吐きかけました!彼は一瞬たじろぎましたが、
間髪入れずに武器ミョルニルを相手の頭に叩きつけます。

「作者不詳  世界蛇の毒で息絶えるトール」
ヨルムンガンドを倒しましたが、トールは九歩後ずさり、ばったりと倒れて
しまいます。蛇の毒が体内に回り、彼も息絶えてしまったのです。

「作者不詳  ロキとヘイムダル」
裏切者となったロキと戦っているのは白き神ヘイムダル。
激しい斬り合いの末、彼等は互いを剣で突き刺し合います。

「チューダー・ハンフリーズ作 ロキとヘイムダル」
相打ちとなった二人。こっちの顔まで渋くなりそうな、戦闘の激しさが
伝わって来る絵画ですが・・・。二人とも近すぎやしませんかね?

「作者不詳 ラグナロク」
軍神ティールもガルムと相打ちとなり、ヴァルキリーやエインヘリヤルも
巨人や悪霊と戦い、次々に命を落としていきます。

「作者不詳 ラグナロク」
血は大地に染み渡り、死体は連なっていきます。
その戦いの熾烈さは世界を震わすほどでした。

「John Charles Dollman作 (1851-1934)  スルト」
現われたるは炎の民スルト。彼は輝く剣を振り上げ、世界を炎で
埋め尽くしてゆきます。神々は成す術なく倒されるばかり。

「チューダー・ハンフリーズ作 スルトとフレイ」
スルトに立ち向かったのは妖精の王フレイ。しかし、フレイは自らの剣を
失っており、一刀の元に切り伏せられてしまいました。

「Emil Doepler作 炎上するアースガルズ」
神々の国アースガルズは炎に包まれ、世界樹ユグドラシルは悲鳴を
上げて燃え、全てが無に帰していきます。
大地は海に呑み込まれ、星は天から落ちて行きます。
終末の時は訪れたのです。

「Emil Doepler作 再生」
・・・しかし。全てが崩壊した訳ではありませんでした。
僅かな芽吹きが大地に起こり、死を免れた動物たち、人間の男女も
いるべき場所へ帰ってきました。そして、オーディンの息子が復活し、
新しい世界を統括するのです。

 管理人が神話の中で一番好きなのが北欧神話なんです。初めてラグナロクを知った時の衝撃は凄まじく、こんな格好いい物語があるんだ!と思ったのを覚えています。それから本を貪り読み、エッダの世界にのめり込み、今では立派な北欧神話ファンになりました(笑
 今日で2016年が終わり、新しい年となります。年の節目という事で、あえて終末の話ラグナロクを紹介しました。もし世界に終焉が訪れたとしても、新しい神々が降臨して世界は再生する。このサイクルを信じ、2017年は輝かしい再生の年になって欲しいです。
 それでは皆様、来年もよいお年を!

 

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

    >> 美術を愛する人様へ
    めっちゃ分かります!
    私も最初に読んだ時、ラグナロクの描写の迫力に圧倒されて衝撃を受けました。
    自らの運命を悟りつつも、果敢に戦い散っていく神々。
    死と再生のシーンが美しく、余韻に浸っていた記憶があります。
    北欧神話は口頭伝承を書き留めた文献の寄せ集めなのですが、なんというか構成がまとまっているんですよね。登場する神々もみんな魅力的。
    トールの花嫁衣裳の話(スリュムの歌)や、ロキの口論(ロカセナ)も面白いですよね。
    今では北欧神話が一番好きな神話です^^

  2. 美術を愛する人 より:

    予備知識がないまま、北欧神話を読みました。最後を読む前は、神様だけど、人間ぽさもあったり、ストーリーもおもしろい物語もあったり、ちょっと退屈に感じる部分もあったり、そんな感じでしたが……最後の神々の黄昏のところを読んで、衝撃を受けました。それまでの神々の話が、前振りになっている感じで、すごいひきこまれました。オージン、ロキ、トールなどの最後も強烈で……

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