北欧神話に登場するロキは、いたずら好きで悪賢い神として有名です。
ロキは光の神バルデルを策略で殺し、神々の面前でそれを暴露したことによって裏切者とみなされました。彼は鮭の姿になって逃亡を図りましたが、雷神トールによって捕まえられてしまいます。ロキは洞窟へ引っ立てられ、神々は彼の息子二人を連れてきて、目の前で一人を狼に変え、もう一人を食い殺させてしまいます。死んだ息子から腸を取り出し、神々はそれをロープがわりに使い、ロキを岩に括りつけました。腸は頑丈な鎖に変わり、身動きができなくなったロキ。そして、スカジという女神が毒蛇を置き、顔に毒がしたたるようにしました。痛みにもがくロキを神々が置きざりにした中、唯一妻のシギュンが側に寄り添い、蛇の毒を盃で受け止めていたのでした。
画家によって描かれたロキの姿をご覧ください。
「Marten Eskil Winge 作 1863年」
夫に毒がかからないよう、両手で懸命に盃を上げています。
献身で節操なシギュンさんは、ダメ夫には勿体ないような・・・。
「Charles E. Brock作 19世紀後半-20世紀前半」
毒液を片手で格好良く受け止める妻。蛇の顔が可愛いです。
原人のような姿のロキはぐったりとしています。
「Christoffer Eckersberg 作 1810年」
ロキに身を寄せ、疲れようとも盃を下げようとしないシギュン。
こんなに尽くしてくれる奥さんは滅多にいませんよ。
「カール・ゲープハルト作 1880年」
白目をむいてグロッキー状態のロキ。もうちょっと大きいお椀は
なかったのかな?受け止める難易度が高そうです。
「ジェームス・ドイル・ペンローズ作 1890年」
妻が登場していない絵画もあります。
毒液どころか顔面嚙みつかれそうで、泣きそうな表情のロキ。
「Louis Huard 作 19世紀」
こちらも同じシチュエーション。数分後には映画アナコンダ状態
でしょうか。蛇の腹にロキの顔面が・・・(違
「作者不詳 1880年」
背後でハンマーで鎖を叩いているのは、小人(ドワーフ)でしょうか。
そのような記述はありませんが、戒められているという事を強調する
為に登場させたのでしょうか。
「コンスタンティン ・ ハンセン作 19世紀」
三枚の角の尖った石板が用意され、ロープを通す為の穴が開けられた
という記述がある為、こちらの作品が史実に一番基づいています。
北欧の寒い真っただ中で裸という絵画ミステリーはありますが。
「アーサー・ラッカム作 1867-1939年」
シギュンさんの献身ぶりをクローズアップさせた作品。手前の一輪の花が、
夫を心配げに見つめる妻を象徴しているように思えます。
「パッテン ウィルソン作 19世紀後半-20世紀前半」
この縛り方は色々とやばいです。いや、これは、うーん、
神々の陰謀でしょうか。それとも画家の陰謀でしょうか。
「コリングウッド作 1910年頃」
こちらは悪夢にうなされそうな蛇パラダイス。
シギュンさんまで脱いでるし、盃が全然届いてませんて!
蛇の毒液を受けていた盃は時間が経てば一杯になってしまうわけで、シギュンはそれを定期的に捨てに行きました。その際に猛毒はロキの顔にかかり、彼はあまりの痛さに大声を出して身もだえしました。世界はそれによって激しく揺れ、人々はそれを地震とみなしたそうです。
その罰は神々の終末、ラグナロクが到来するまで続けられました。終末が訪れるとロキは戒めから解かれ、神々に復讐をすると言われています。
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