リュカオンはギリシャ神話に登場するアルカディアの王です。ペラスゴスとニュムペーのキュレネーの子供で、多くの女性との間にカリストを含む50名もの子供をもうけたとされています。(諸説あり)
リュカオンはアルカディアに最初の都市リュコスーラを建設したとされ、神を祀る祭りや競技を行いました。しかし、彼は人間の子供を生贄にしてゼウスに捧げた為、ゼウスは怒ってリュカオンを狼に変えてしまいました。
また異なる物語によると、ゼウスは人間になり切ってリュカオンの家へ訪問しました。リュカオンと息子達は邪悪な心を持っていた為、ゼウスに与える料理に人肉を混ぜる事を思い付き、アルカディアの子供を殺して臓物スープを作りました。(兄弟の一人ニュクティーモスだという説も) 山羊や羊の肉だけではなく人間も入っている事を見抜いたゼウスは怒り狂い、料理が置かれた机をちゃぶ台返し風(?)に倒し、息子達を雷で打ち殺し、リュカイオンを狼に変えました。唯一、末っ子のニュクティーモスのみが助けられたとされています。(料理されている場合は蘇生する)
これらの事件でゼウスは人間世界に嫌気が差し、洪水を起こして滅ぼしてしまおうと考えます。デウカリオンの大洪水の原因となったのは、リュカイオンと息子達の神を冒瀆する行為だったのでした。
リュカイオンに関する絵画11点をご覧ください。
「フリードリヒ・アウグスト・フォン・カウルバッハ作 1880年」
アルカディアは美しく牧歌的な理想郷だという伝説が、後年の西洋
では信じられていました。人々は笑い、踊り、幸せを謳歌しています。
しかし、それはアルカディア王リュカオンの代で崩れてしまうのです。
「ハーマン・ポストゥマス作 1542年」
一説によると、アルカディアの王リュカオンとその息子達はうぬぼれの
強い性格で、ゼウスが人間のふりをしてやってきた時には、神を
試してやろうと人間の肉を調理してもてなしました。
「作者不詳 16世紀頃?」
それに気付いたゼウスは怒り、息子達を雷で打ち殺してリュカオンを
狼に変えてしまったのです。この作品ではゼウスの怒りに家々まで
もが燃えているようですね。助かったのはニュクティーモスとカリスト
のみでした。カリストは後にゼウスの魔の手にかかってしまいます・・・。
「作者不詳 16世紀?」
人間の肉はアルカディアの子供とも、息子の末っ子である
ニュクティーモスとも言われています。また、肉ではなく腸を使った
臓物スープともされています。自分の息子をスープにするなんて、
猟奇的すぎるやろ・・・。
「ブルックス・ネーサン作 1849年」
ゼウス様のお怒りがはなはだしい作品。しかし、2016年にギリシャの
ペロポネソス半島のリュカイオン山で、ゼウスに捧げたとされる
人身御供の遺骨が見つかったという記事がありました。
「ヘンドリク・ゴルチウス作 16世紀」
その遺骨は3000年前のもので、10代の男性とみられています。
リュカイオン山はゼウスの生誕の地でもあるようで、様々な供物が
発掘されているそうです。実際に人身御供やってるやん・・・!
「作者不詳 陶器の彫刻作品?」
ちなみに、北欧神話のオーディンも戦争の勝利を願うノルマン人たち
から、人身御供が捧げられました。木から首を吊らせて槍で刺したり、
沼に沈めたりしたそうです。こう言った過激な信仰は時代が経るに
つれて無くなり、遂にキリスト教に呑み込まれてしまったのです。
「ピーテル・パウル・ルーベンス作 1577-1640年」
こちらのルーベンスの描くゼウスは、好色な爺さんというより、
悪を倒し善を守るキリスト的な雰囲気に描かれていますね。
このリュカオンの神話はキリスト教の文化が入り込み、本来の
ゼウスの性質が弱まっていった時代に作られたのかもしれませんね。
「Jan Cossiers 作 1600-71年」
ルーベンスの作品を元にしてヤンさんが描いた作品。
後光が描かれており、ゼウスのキリスト的特性が強調されていますね。
それにしても、狼に変えられたというより、どの作品も顔だけ狼
なんですね・・・。
「ラファエロの追随者 Agostino Veneziano 作 1524年」
リュカオンとゼウスを表した絵画ですが・・・。一体これはどんな
状態なんだ?ゼウスがベッドに寄りかかり、犬面のリュカオンが
斧を持って歩いている・・・。シュールすぎます。
「Giulio Carpioni 作 1613–79年」
この事がきっかけとなり、ゼウスは人間に嫌気が差し、人類を滅亡
させようと大洪水を起こしました。生き残ったのはデウカリオンとその
妻ピュラー、一部の者達だけ。殆どの人類は水に飲まれてしまい
ました。この事件はデウカリオンの洪水と呼ばれています。
ゼウスを試して侮蔑して、狼に変えられたリュカオン。
以下のイヌ科の肉食動物「リカオン」の名は、リュカオンより由来しております。事典や動物番組で一度は見たことがあるのではないでしょうか。
(英語版のリカオンのwikiより拝借しました)
アフリカのサハラ砂漠より南の、草原地帯やサバンナに生息しています。リカオンは可愛い顔とは裏腹に、群れで活動して、かなり狡猾なハンティングを行うそうです。挟み撃ちをしたり、先回りをしたり、フェイントを掛けたり。その狩りはほぼ100%であるとか。そのずる賢さと獰猛さから、リカオンと名付けられてしまったのでしょうかね。
もしかしたら、狼になったリュカオンの末裔なのかもしれませんよ・・・。←ぇ
→ 理想郷アルカディアについての絵画を見たい方はこちら
→ デウカリオンの洪水についての絵画を見たい方はこちら
→ ゼウスの人身御供についての記事を見たい方はこちら(ハザードラボ様)
【 コメント 】
>> これは変身の途中なのか?様へ
こんばんは^^
きっと何千年を隔てた進化の結果ですね。
リュカオンも月桂樹もその土地に順応していったのでしょう。
そうして新たな種が生まれたのです…。←ぇ
リカオンの厭世的呟きニヒルで格好いいです^^
「世界は矛盾に満ちており、綺麗事だけでは片づけられない。正義もへったくれもない。俺達はただ生き延びるだけなのだ。どんな手段を使ったとしても」
乗じちゃいましたw
まずは頭から、そして胴体、腕、下半身と……しまいには四つん這いになって……サバナを彷徨う……←ぇ
思えばダフネも、返信の途中が描かれますものね。アポロンが見つめるのがただの月桂樹だったら、それはそれでw
肉食動物リカオン、なんだか憂いに満ちた表情をしていますね。
「この世は不条理だ。俺たちはそれを知っているのだ。善も幸福もありゃしない。それを知っている俺たちは、身軽なのさ」
的な……ある意味達観した? 厭世観を語っていそうです^^;