アルカディアの絵画12点。ギリシャの牧歌的な土地を夢見た楽園。しかし理想郷は… | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

アルカディアの絵画12点。ギリシャの牧歌的な土地を夢見た楽園。しかし理想郷は…

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Nicolas Poussin, Shepherds of Arcadia 1637 -

 アルカディアはギリシャのペロポネソス半島の中央に位置する地域名であり、後に楽園やユートピアであるという伝承が広まり、理想郷を指す言葉として使われるようになりました。名称はリュカオンの娘カリストとゼウスの息子であるアルカスに由来します。(小熊座となった息子さん。アルカディアの王となったという伝承もあります)
 実在のアルカディアは前4世紀頃にメガロポリスが建設され、牧畜を生業として生活していましたが、農耕に適さない貧しい山岳地帯であったそうです。牧歌的な美しい風景の中で牧畜をする生活が、後世の人々には理想郷だと映ったのだと思います。現代においてもアルカディアは存在し、ギリシャの古代アルカディア地方とエーゲ海沿岸の土地を含め、アルカディア県としているそうです。

 画家は理想郷アルカディアを想像し、緑あふれる美しい景色を描きました。しかし、中には「理想郷であっても人間の摂理は変えられない」という皮肉めいた作品を残す者も・・・。
 では、アルカディアの絵画12点をご覧ください。




「Frans Francken (子)作  1581–1642年」
人々は楽しそうに話して笑って、踊っています。古代を再生しようと
するルネサンスが花開き、バロックへと時代が移り変わっていく最中、
このような素朴で牧歌的な「古き良き時代」の風潮が好まれたのですかね。
Frans Francken, Arcadia - The Golden Age

「コンスタンチン・マコフスキー作 1839-1915年」
プシュケーのような女性達が踊り、男性は楽器を奏でています。
クピドは豹に乗っており、獰猛な獣を愛の神が操るという、
弱肉強食もない平和な世界だという事が分かります。
Happy Arcadia by Konstantin Makovsky 1839-1915

ハリー・シドンズ・モーブレー作  1890年」
こちらは賑やかなアルカディア像ではなく、夕暮れ時のような
穏やかな理想郷ですね。作者の意図や経緯などは分かりませんが、
作者の「私ならこんな理想郷へ行きたい」という好みが感じられますね。
Henry Siddons Mowbray - Arcadia 1890

Károly Markó (親)作  1830年」
美しい緑の森林が立ち並ぶ風景画の中に、二人の男女が座って
います。遠景の二人は同人物でしょうか。本当の理想郷は自然と
共に生きる事、というメッセージが込められているような気がします。
Károly Markó 1830

「トマス・コール作  1838年」
森も山も泉も家もあり、とても過ごしやすそうな理想郷。
何だかRPGの風景にありそうな感じですよね。ファンタジーは
こういったアルカディア的雰囲気に源泉がありそうですね。
Thomas Cole Dream of Arcadia  1838

「上記の作品の左上のアップ」
素敵な作品だと思って紹介しようとしたら、上記の作品のアップでしたw
木漏れ日の中、人々は幸せそうに楽しんでいますね。
この部分だけでも、充分一枚の絵画になりそうです。
thomas Cole Dream of Arcadia, 1838

トマス・コール作   1843年」
アルカディアの夕暮れを描いた作品。昼間の楽し気な雰囲気とは
異なり、静かで神秘的な風景ですね。私だったら、こんな理想郷に
住んでみたいかも。のんびり過ごせそう・・・。
Thomas Cole  An evening in Arcadia  1843

トマス・エイキンズ作   1883年」
一糸まとわぬ姿で森林浴を楽しんでいる人々。西洋は日照りが
少ない為に、現代においても暖かい晴れの日はこうやって森林浴を
しているそう。作者にとっては生まれたままで日向ぼっこが一番幸せ、
という事なのですかね。
Thomas Eakins' Arcadia  1883

「ルネ・ダンジューの写本の挿絵より  1457年」
アルカディアは争いのない平和な理想郷。しかし・・・。
そんな所にも死は訪れてしまうのです。墳墓を前にした男性は、
静かにうつむき、自らにも起こる摂理を噛みしめているようです。
「メメント・モリ(死を想え)」的なテーマですね。
 Illustration for manuscript by René d’Anjou (1457)

「二コラ・プッサン作 1637年」
プッサンの代表作「アルカディアの牧人たち」。牧人は墓石を指さし、
女性に意味ありげな目線を送っています。墓石にはEt In Arcadia Ego
(我はアルカディアにもある)と書かれており、こちらも死は何処に
おいても訪れることを示しています。
Nicolas Poussin, Shepherds of Arcadia 1637

「二コラ・プッサン作 1627年」
上記の絵画より十年前に描かれた同テーマの作品。牧人と女性は
共に墓石を除き込んでいます。足元の老人も牧人だと思われますが、
彼は自らに起こる運命を享受しているようですね。
墓石には頭蓋骨が置かれており、上記より不気味さを感じる作品です。
Nicolas Poussin, Shepherds of Arcadia 1627

「グエルチーノ作  1591-1666年」
プッサンに感化され、グエルチーノはこのようなアルカディアでの死を
描きました。旅をしてやっとの事で理想郷に到着し、喜んでいた矢先に
知った事実・・・。生々しい髑髏と呆然とした牧人の表情に、「死」の
現実が突き付けられます。
Et in Arcadia Ego, Guercino

アンゲリカ・カウフマン作 1741–1807年」
アルカディアの牧人と題された作品ですが、中央の老人と女性は
ちょっと様子が違います。確かではないものの、二人はオイディプス王と
娘アンティゴネーのような気がします。左側の二人の牧人は墓石を
指さしており「我はアルカディアにもある」のテーマとなっているようですね。
Angelika Kauffmann (1741–1807) Et in Arcadia ego

 二コラ・プッサンの「アルカディアの牧人たち」はメメント・モリ的なテーマを扱っているだけではなく、多くの謎を秘めている作品として知られています。墓石に刻まれている碑文「Et in Arcadia ego (我はアルカディアにもある)」の文字を並べ替えると、「I Tego Arcanadei (立ち去れ、私は神の秘密を隠した)」と別の意味の文章が成立するそうです。また、絵画に描かれた背景はフランスのレンヌ・ル・シャトー村の近隣に類似しているそうで、そこをモチーフとしたのではないかと言われています。

 荒俣宏著の「レックス・ムンディ」という小説がこの絵画の謎について取り上げ、作者自身の説を上げています。数年前に読みましたが、「面白い」というよりは「勉強になる」といった感じの内容でしたね。西洋史、伝承、宗教、オカルトなどに興味のある方には蘊蓄が詰め込まれていて、お勧めできる本だとは思います^^

オイディプス王についての絵画を見たい方はこちら


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