サテュロスと農夫の絵画13点。イソップ寓話より派生した、牧神とスープの家族絵画 | メメント・モリ -西洋美術の謎と闇-

サテュロスと農夫の絵画13点。イソップ寓話より派生した、牧神とスープの家族絵画

スポンサーリンク

 サテュロスと農夫は、イソップ寓話「サテュロスと旅人」から派生して、サテュロスと一緒に家族が描かれている構成の絵画の事を指します。フランドルを中心に作品が残されています。
 極寒の日の夜、旅人は天候の悪さに先に進めなくなってしまいました。同情したサテュロスは旅人を自分の家(洞窟)へと招待します。旅人は礼を言い、凍えて感覚がなくなった両手を温めようと息を吹きかけました。彼が温まって来た頃、サテュロスは充分に温められた料理でもてなします。スープがとても熱かった為、旅人は息をふーふーして冷まそうとしました。それを見ていたサテュロスはぶるぶる震え出し、こう叫んだのです。「二種類の息を出せるような奴は家に入れたくない!」と。こうして旅人はサテュロスの家を追い出されてしまったのです。
 この普段やってしまいがちな行為は、サテュロスにとっては気持ち悪く映ったのでしょう。この寓話はどういう教訓を含んでいるかは断言できませんが、「節操を持ちましょう」「郷に入っては郷に従え」的な感じなのでしょうかね。(調べてみたら、性格が分からない奴とは付き合えないという意味のようです。それってどうよ^^;)
 では、イソップ寓話の進化版というべきサテュロスと農夫についての絵画13点をご覧ください。

 

「ヴェンツェスラウス・ホラー作  1660年」
こちらは「サテュロスと旅人」の挿絵。洞窟でスープを食べている
男性に「キモいぞお前!」とサテュロスが批判しています。
背後でなんかミカエル様が反逆天使(悪魔)達をやっつけているように
見えるのは私だけ・・・?

「Jan Cossiers 作  1600-71年」
こちらが「サテュロスと農夫」。農民の家にお邪魔していますね。
妻や子供、祖母、犬たちがいる中、サテュロスはふーふーしている
お父さんに批判的な目を向けています。家族写真化していますが、
まだイソップ寓話に忠実な面も見られますね。


「ヨハン・リス作  1618-19年」
こちらも椅子を乗り出して怒っているサテュロスさん。この様子に
奥さんは微笑んでいるようです。「性格がよく分かんなくても
しょうがないわよ。結婚しちゃったんだもの」という皮肉が
込められているとか、いないとか・・・。←ぇ

「Benjamin Gerritsz Cuyp 作  1612-52年」
素朴な家庭の食卓の中、さり気なく怒っているサテュロスさん。
このテーマが扱われているのはほぼフランドルで、民衆画が流行した
土地ならではって感じですね。民衆に需要があったのかな?

「ヤーコブ・ヨルダーンス作  1620年」
ヨルダーンスはこのテーマがとても気に入っていたようで、6枚もの
作品が残されています。(ヨルダーンス工房作も合わせるともっとある
と思います) 親子三世代の中、賢者風のサテュロスが「変な息を
吹いちゃいかん」と諭しているようですね。

「ヤーコブ・ヨルダーンス作  1620年」
同年に描いた作品なのに、サテュロスの姿が全然違いますね。
イケイケな感じで楽しんでいるようにも見えます。
依頼者の好みがあったのかもしれませんね。人だけではなく、
牛や猫、鶏、犬などの動物も描かれていて賑やかです。

「ヤーコブ・ヨルダーンスの工房作  17世紀」
このサテュロスは「お前の口は一体どうなってんだ?」と疑心暗鬼に
陥っているようです。お父さんの口が膨みまくって面白いです。
後ろのおじさんとか、子供がさり気に掴んでるものとか、随所に
ユーモアが感じられますね。フランドルジョークなのか?

「ヤン・ステーン作  1626-79年」
こちらは一般家庭というよりもお店ですね。お店に現れたさすらいの
サテュロスが、「お前の口は災いの元じゃ」と戒めているようです。
女性が持つお盆の食べ物はなんだろう・・・。おまんじゅう?←ぇ

「ヤン・ステーン作  1660年」
こちらもさすらいの賢者風の姿をしております。サテュロスは欲望や
野生を象徴しており、がさつな感じに描かれておりますが、作品に
よっては賢者の姿なんですね。ケンタウロスみたいなイメージなのかな。
→ ケンタウロスについての絵画を見たい方はこちら

「Jan van Noordt 作  1623-81年」
もう子供を主役としており、スープそっちのけでサテュロスが完全に
脇役ですね。子供を溺愛する依頼者さんだったのかな^^
もしくは画家の子供さん?

「Constantijn à Renesse 作  1653年」
サテュロスも楽しそうに食卓を囲んでおり、すっかり家族の一員と
なっております。ふーふーしていても気にしません。たとえ性格が
不透明でも、時間を掛ければ分かり合えるという教訓か!?←ぇ

「Barent Fabritius 作  1650-60年」
サテュロスは旦那を注意するどころか、子供さんを指さして
「ちゃんと食べないといけないぞ~」と言っているみたいですね。
もしかしたらそのまま住み込んでしまったのかもしれません。
お母様、かなり嫌そうな顔をしてらっしゃいます。

「ヤーコブ・ヨルダーンス作  17世紀」
食卓を囲んで、はいポーズ!
サテュロスを含んだ家族絵画は、きっといい思い出になりますね。

 イソップ寓話であったはずなのに、物語を飛び越えて進化してしまったサテュロスと農夫。旦那さんがスープを食べているところだけが変わらないというのも面白いです。こんな家族写真があったらいいですよね^^
 日本で言うなら、妖怪のでいだらぼっちや一つ目小僧とツーショットという感じでしょうか?(笑) そんな写真が撮れるアプリとかがあったら面白いと思うのですが、皆さんいかがでしょうか?なんだか記念になりそうな気がします。

→ イソップ寓話についての絵画を見たい方はこちら

 

スポンサーリンク

【 コメント 】

  1. 管理人:扉園 より:

     >> キリギリス様へ
    こんばんは^^
    なるほど、さり気ないおじさんのポーズから「叫び」は生まれたのですね!(違
    ヨルダーンスは神話や宗教に関する絵画を沢山描いていて、このブログでも結構出現しているような気がします。(プロメテウスは迫力ありました…)
    ニンフってさらわれちゃうイメージが強かったのですが、彼女たちも美少年をさらっていたのですね(笑)
    ではでは、ニンフにさらわれた二人の美少年、ヒュラス&ヘルマプロディトスを二本立てで特集します。
    しばらくお待ちください^^

  2. キリギリス より:

    なるほど、ヨルダーンスの工房作品を見て、かの表現主義の巨匠は『叫び』を描いたのか(違
    ヨルダーンスのサテュロス、いつだったか美術展で観た気がします。寓話ではなくサテュロス単体ですが。
    (調べたら、ランス美術館展にあったヨルダーンス作と思われる……という作品でした笑)
    ところで、サテュロスといったらニンフですね( ̄▽ ̄)
    美少年をさらう恐ろしい妖精たちの特集をお待ちしております。←ぇ

スポンサーリンク
タイトルとURLをコピーしました